普段使いでこのクルマを試乗してみると、つくづく感じるのが“日常の中の非日常”ということ。たとえばタクト(指揮棒)のような細身のセレクターレバーひとつとっても“使うことを楽しませてくれるデザイン”だったり。気持ちの遊びを忘れない。
愉しい。借り出して数分後にはそう思えた。エンジン音の立ち上がりが早く「おや?」とカタログを当たると何と「サウンドジェネレーター」が仕込んである。が、かつてのツインスパークを思わすまろやかな粒立ちの音質は、よりアルファロメオらしさの演出に成功している。
最高出力560ps、最大トルク700Nm! 世のスペックマニアの心を鷲掴みにしそうな4リットルのV8バイターボ搭載の『RS7スポーツバック』は、ルックスは意外なほど大人しいが、その走りは“圧巻”のひとことだ。
街中でも見かけるようになった最新型。新しい意匠のグリルは、顔つきに“強さ”を与えて見える。ほかにドアミラーにウインカーが内蔵されたのも外観上の特徴だ。
オプション・消費税込みで1177万円。“S”や“RS”でなくとも立派な高級車だ。何の創意工夫もない表現だが、まさにセレブのためのクルマ…実車を目の前にしていると、そんな空気がプンプンと伝わってくる。
試乗車は最新の改良型がベースの特別仕様車「S-Limited」。外観の特別装備は18インチアルミホイール、標準車より大胆なデザインのフロントバンパーなどが目を惹く。ルーフのシャークフィンアンテナも最新型の証だ。
カッコいいクルマだと思う。それはスタイル、走りの楽しさ、雰囲気、上質感などほぼ全方位のレベルが高いから。もちろん、“軽”であることを忘れさせる魅力をこのクルマはもっている。
ガソリン車との外観上の差はごく僅か。左右前ドアと後部のバッジ、それとフロントフォグランプ(試乗車は非装着=ディーラーオプション)が薄型になる程度だ。ランプにブルーのレンズを入れる等のよくある“ハイブリッド感を出しました”的な、無意味な装飾がないのがいい。
片側3車線以上くらいの、本場のフリーウェイが連想できるような風景の中を走っていると、造作が力強いインパネの意味がわかる。『チェロキー』は今も昔も、人や家族に寄り添う“信頼感を寄せられる道具”なのだと思う瞬間だ。
ともかく未来が現実となった。水素と酸素の化学反応で電気を作り、駆動用モーターを回す。ごく簡単に言うとそうして走る英知の結晶『MIRAI』の姿に、一般公道でもお目にかかれることになった。