賛否が分かれるアーシングチューン。古いクルマでは効果を体感できることもあるが、新しい車では差が出にくい場合もある。
◆アーシングチューンとは何か
チューニングの世界で賛否両論あるのがアーシングチューンだ。ボディやエンジンなど各部位からバッテリーのマイナス端子に配線を追加することで、エンジンレスポンスの向上や燃費改善、ヘッドライトの明るさアップ、カーオーディオの音質向上などが期待できるといわれている。では、どういった理由でその効果が起きるのか。果たして本当に体感できる効果はあるのか。
自動車の電気回路は、バッテリーのプラス端子から各電装品へ電気が流れ、車体そのものをマイナス側の通り道として使うボディアースによってバッテリーへ戻る構造になっている。アーシングとは、このボディアースに対して配線を増やしたり、専用の太いアーシングケーブルを追加したりすることで、電気の戻り道を効率化しようとするチューニングのことだ。
◆旧車や過走行車で効果が出やすい理由
クルマは長年の使用により、ボディの接合部やスポット溶接部の錆、塗装の劣化などで電気が流れにくくなることがある。また純正のアースケーブルも、配線や端子が劣化すると抵抗値が増えてくる。さらにエンジンブロックやシリンダーヘッドは、ガスケットやオイルの影響で電気的につながりにくい状態になることもある。
そこでボディ各所やエンジンヘッドなどに直接マイナス配線を引くことで抵抗を減らし、電気を戻りやすくする。特に製造から10年以上経過したクルマや走行距離が伸びた個体では、劣化した純正配線を補うことで失われていた電気の流れを取り戻せる可能性がある。
それによって期待できるのは、イグニッションコイルへの供給電圧が安定しやすくなることだ。火花の強さが均一に近づけば、アイドリング時の安定感や低回転域からのレスポンス向上につながる場合がある。
また電気の通り道がスムーズになれば、オルタネーターへの負荷がわずかに軽減される可能性もある。結果としてロスが減り、パワーやトルクが上がったように感じられるケースもある。
◆新しいクルマでは効果が出にくいこともある
アーシングは決してプラセボだけで語れるチューニングではない。条件が合えば、きちんと変化を感じられることもある。ただし、すべてのクルマで同じように効果が出るとは言い切れない。ここがアーシングチューンの難しいポイントだ。
効果が出やすいのは、主にクルマ側の経年劣化によって電気が流れにくくなっていたり、純正アースケーブルや端子が劣化していたりする場合だ。旧車や過走行車では、ライトの光量アップ、始動性の向上、アイドリングの安定などを体感できるケースがある。
一方で比較的新しいクルマは、メーカー側で電気回路が緻密に設計されている。純正アースケーブルの劣化も少ないため、アーシングケーブルを追加しても効果が小さい、あるいは体感しにくい可能性が高い。
比較するなら、見るべきポイントは次の通りだ。
・製造から10年以上経過しているか
・走行距離が伸びているか
・ヘッドライトが以前より暗く感じるか
・始動性やアイドリングに不安定さがあるか
・純正アースケーブルや端子に錆や劣化があるか
こうした症状があるなら、アーシング追加よりも先に純正アースケーブルの点検や交換を検討したい。
◆DIY施工のデメリットと注意点
そこでおすすめしたいのは、ある程度古めのクルマや走行距離が伸びたクルマなら、まず純正アースケーブルを新品に交換することだ。アーシングケーブルを追加する前に、純正状態をリフレッシュするだけでも効果を感じられる場合がある。
追加でアーシングケーブルを引く場合は、シリンダーヘッドやエンジンヘッド周辺などに配線すると効果が出る可能性はある。しかしエンジンルームは高温になりやすく、周囲にはファンベルトやプーリーなどの回転部品もある。配線が巻き込まれれば重大なトラブルにつながりかねない。
また、ケーブルの取り回しが悪いとエンジンの熱で被覆が溶けたり、端子の固定不足によって接触不良を起こしたりすることもある。良かれと思ってDIYでアーシングチューンを行い、車両火災や電装トラブルを招いてしまっては元も子もない。
対策としては、次の点を守りたい。
・高温部や回転部品の近くを避ける
・ケーブルを確実に固定する
・端子の接触面をきれいにする
・適切な太さと耐熱性を持つケーブルを選ぶ
・不安がある場合はプロショップに施工を依頼する
アーシングは手軽に見えるが、電気系統に関わるチューニングだ。リスクもあるだけに、配線追加はプロに相談するのが安心だ。
◆まずは純正アースとヒューズのリフレッシュから
古いクルマでは、純正アースケーブルのリフレッシュとヒューズ類の交換だけでも意外と効果が高いことがある。電気の流れを整えるという意味では、派手な追加チューンよりも基本整備のほうが確実な場合もある。
アーシングチューンは、クルマの状態によって評価が大きく変わる。旧車や過走行車には有効な選択肢になり得る一方で、新しいクルマでは効果を体感しにくいこともある。まずは純正配線や端子、ヒューズといった基本的な部分から見直してみてほしい。



