SUBARUにおける差別化の核となる「制御統合ECU」へのこだわりとは…SUBARU 執行役員 CDCO 柴田英司 氏[インタビュー]

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SDV戦略の核となる車載コンピューティング技術、すなわち半導体やECUの開発・調達において、自動車メーカー各社は、コストと機能、そして差別化という複雑なトレードオフに直面している。

そうしたなかSUBARUは、最新技術の活用と独自のクルマづくりへのこだわりを両立させるため、他とは一線を画す特徴ある戦略を打ち出している。

ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリストの中西孝樹氏がモデレートする連続セミナー「中西孝樹の自動車・モビリティ産業インサイト」シーズン4の第一回は、株式会社SUBARU 執行役員 CDCO(最高デジタルカー責任者)兼 技術本部 副本部長の柴田英司氏をゲストに迎え、12月9日に開催される。

セミナーに先立ち、SUBARUが目指す「SUBARUデジタルカー」の実現、その根幹をなす「制御統合ECU」の独自開発に込められた思想について聞いた。

SDV時代に立ち返る「クルマ会社としての役割」

SDV時代を考えるにあたって、SUBARUが立ち返ったのは「クルマ会社として何をするのか」という根源的な問いだったという。SUBARU車が顧客から支持される理由を改めて見つめ直し、「安心と愉しさ」を支えてきた技術群と、それらが築いてきた顧客との関係性を再認識した。

SUBARUはこのSDV化を、単なる最新技術の導入ではなく、SUBARU独自の顧客体験を創造するための手段と位置づけている。同社執行役員 CDCO(最高デジタルカー責任者)兼 技術本部 副本部長の柴田英司氏は、SUBARUの技術と顧客体験がどのように結びついてきたかを次のように語る。

「当社の提供価値である『安心と愉しさ』を支えてきたのは、水平対向エンジンやフルタイムAWD、アイサイトなどの技術群です。そして技術だけではなく、お客様との関係性をどう築いてきたのかということも重要です」

「SUBARUの技術群が作り出すクルマと、クルマを介したお客様とのコミュニケーション・関係性は、いつの時代にあっても大切であり、最新技術により、より密な関係性をどのように構築していくかがSDV時代のアプローチだと考えております」

SUBARUが最も得意とする領域として注力するのが、クルマ本来の機能である「走る、曲がる、止まる」に直結する部分だ。

「その上で、やはりSUBARUが最も得意とする領域である『走る、曲がる、止まる』をしっかり伸ばすことで、これからもお客様がクルマをご利用される様々なシーンにおいて、安心で愉しい体験をお届けしていきたい。そのための重要なツールとして、クルマの存在感を最新技術でいかに進化させていくか、というのが私たちに課せられた宿命だと考えております」

SUBARUは、このアプローチで従来のSUBARUの価値を更に進化させることを目指している。

「メカとデジタルの融合」を核とするアーキテクチャ

そのアプローチの中心となるのが、2020年代後半から投入を計画している「SUBARUデジタルカー・アーキテクチャ」の核となる「制御統合ECU」だ。

このECUは、SUBARUのメカニズムの良さを最大限に引き出し、さらにデジタル技術によってメカ単体では実現できない領域まで進化させることを目的としている。

具体的には、SUBARUの安全技術の象徴である「アイサイト」に、SUBARUがカスタム開発したAMD社のSOCと、SUBARU Labで開発したAIアルゴリズムを組み合わせる。そして、ADAS機能と車両の運動制御を融合させ、同じECU内で演算処理を行う。

柴田氏は、この制御統合ECUが実現する次世代の統合制御について、その狙いを語る。


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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