水素エンジンの高出力化に成功、豊田自動織機や産総研が実証試験開始

水素エンジンを搭載したコンプレッサー
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  • 水素エンジン実験設備
  • 改良した水素エンジンの模式図

産業技術総合研究所(産総研)とAIST Solutions(AISol)のグループは10月21日、豊田自動織機およびAIRMANと共同で水素エンジンの出力向上に成功し、実証試験を開始したと発表した。

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水素を燃料とする内燃機関の水素エンジンは燃焼時にCO2をほとんど排出しないため、フォークリフトやコンプレッサーなど高出力が必要な産業機械のカーボンニュートラル化に寄与すると期待されている。一方で、環境負荷が高い窒素酸化物(NOX)の排出や異常燃焼の課題があった。

今回の共同研究では、燃焼に必要な空気量を調整して燃焼温度を制御しNOXの排出を抑制したほか、イグニッションコイルとスパークプラグを最適化し異常燃焼を回避する技術を開発。これにより、LPガス用の量産型火花点火式エンジンをベースに最小限のハード改造で水素エンジンを製作し、ベースエンジンと同等の最高出力を達成した。

さらに、この水素エンジンを搭載したコンプレッサーの実証試験をAIRMANが新潟工場で開始。10月30日から11月9日に東京ビッグサイトで開催されるJapan Mobility Show 2025において豊田自動織機が水素エンジンを展示する予定だ。

水素エンジンは構造が簡単で既存エンジンの生産ラインや整備ノウハウを活かせ、低コストかつ短期間の導入が可能。課題だったNOXの排出抑制には希薄燃焼技術を用い、約20ppmまで低減した。異常燃焼の主原因であるスパークプラグの残存電圧問題も最適化で解決。さらにクランクケース内換気システムの増設によりクランクケース内の水素濃度を安全なレベルに管理している。

産総研は長年の研究成果を活かし、2021年11月から豊田自動織機と共同で水素エンジンのフォークリフト搭載を目指した開発を進め、2022年12月からAIRMANも加わってコンプレッサー向けの共同研究を行っている。

今後もさらなる高出力化や耐久性向上を図り、物流や工場、工事現場などのCO2排出ゼロをめざした産業機械動力のカーボンニュートラル化に貢献する計画だ。

《森脇稔》

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