「もしかすると “脅し”では…」という淡い期待を持ちながらも、昨夜から都心でも降り続いた春の雪のように、その願いもあっさり消えてしまったようだ。トランプ米政権が、予告どおりにメキシコとカナダ、中国に対する関税を発動したという。
きょうの各紙も「カナダ・メキシコに25%関税を発動」などと、大きく報じているが、日経は「車産業、コスト9兆円増、米競争力低下の恐れ」とのタイトルで「メキシコなどから完成車や部品を輸入する自動車産業への影響は大きく、関税発動に伴って米国内の自動車産業にかかるコストは合計で年間610億ドル(約9兆円)膨らむ可能性がある」と指摘。
「米国の競争力を取り戻すための関税政策が逆に米国の製造業の力を落とし、中国勢の力を高めることにもつながりかねない」とも取り上げている。
さらに、日本の完成車・部品メーカーへの影響にも言及。マツダは米国販売台数の約3割をメキシコから輸入しており、ジェフリー・エイチ・ガイトン最高財務責任者(CFO)は2月上旬の決算説明会で「メキシコ生産分を日本からの輸出に変えるなどの対応について『可能性はある』と語った」ことなども伝えている。
また、読売も「車コスト増大きく、日本にも影響懸念」との見出し。トヨタ自動車やホンダ、日産自動車、マツダの4社はカナダやメキシコで自動車を生産し、米国に輸出しているが。このうち、2024年にメキシコで66万台を生産し、5割弱を米国に輸出した日産は「この規模の関税政策は事業に悪影響を及ぼす。今後の対応を検討している」とのコメントを紹介。
続けて、「関税措置の発動を受け、今後は生産拠点の米国移転の検討に加え、関税分を価格に上乗せするかといった価格戦略も焦点になる」としながらも「関税が上がっても消費者の買いたい価格帯は変わらない。すぐに価格を変える発想はせず、原価をどうやって下げればよいかを考える」(トヨタ幹部)とも取り上げている。
一方で トランプ氏は関税を「ディール(取引)」の交渉材料に使っており、動向はなお流動的な側面もある。「関税の影響は大きいが、拙速には動かず状況を見定めたい。国内やアジアなど関税の影響が少ない地域でしっかりやっていくことも大事だ」(自動車大手幹部)との冷静な見方もあることも。
日経と読売のほかにも「車ほぼ無関税、いらだつ米」(朝日)や「トランプ関税激震、部品供給網危機『自動車業界に穴』」(毎日)、「日米自動車メーカー打撃、価格上昇、需要冷え込む可能性」(産経)。さらに「トランプ関税 自動車標的か、日本にも発動示唆、対米投資・工場呼び込み狙う」(東京)などと、まるでスポーツ紙や夕刊紙のように「トランプ関税」を煽り立てるようなおどろおどろしいタイトルには辟易しなくもない。
2025年3月5日付
●米、25%関税を発動、カナダ・メキシコに、対中は10%追加、中国「報復」 (読売・2面)
●予算案自公維賛成し可決、衆院通過、29年ぶり当初案修正 (朝日・1面)
●車ほぼ無関税いらだつ米、FTA相手メキシコ・カナダ (朝日・3面)
●破談の深層(中)、日本2強、ホンダ描いた理想、目的は日産でなく相乗効果(朝日・7面)
●車の排ガス削減EUが目標緩和、27年まで猶予(毎日・7面)
●米2月新車販売、トヨタは4.9%減、在庫不足で(産経・10面)
●大雪に備え、首都高「封鎖」(東京・1面)
●故鈴木修さん(スズキ相談役、昨年12月25日死去)のお別れの会、4月8日、ホテルニューオータニ「鶴の間」 (東京・20面)
●車の修理工賃で指針、損保協、定期見直しを要請 (日経・9面)
●自動運転トラック実証、新東名、国交省やいすゞなど (日経・17面)