現存するモーターサイクルカンパニーでもっとも長い歴史を誇るのがロイヤルエンフィールド。1893年に英国で生まれた同社は数々の名車を誕生させ、その名を世界に轟かせていたのであるが、その歴史のなかでは紆余曲折があり、倒産も経験している。しかし現在はインドを本拠地として年間60万台を生産する巨大カンパニーとなっている。
ここ数年で数多くのニューモデルが発表され、その存在感も急速に拡大している。今回、「東京モーターサイクルショー」では350、411、650とロイヤルエンフィールドが生産する3種の空冷エンジンを搭載したそれぞれのバリエーションも含むフルラインナップを展示し注目を集めた。

◆クルーザースタイルの『スーパーメテオ650』
東京モーターサイクルショーで国内初披露されたのはクルーザースタイルの車体に648ccの空冷2気筒エンジンを搭載した『スーパーメテオ650』。『コンチネンタルGT650』や「INT650」に搭載され世界中で高い評価を得ている270度並列2気筒エンジン本体は共通で、ギアレシオのみ変更されているとのこと。
また、車体はロイヤルエンフィールド傘下でもある名門フレームビルダー。ハリスパフォーマンスが設計を担当。ダウンチューブを廃しつつも剛性を確保し、車高およびシート高を下げることにも成功している。なお、前後サスペンションはショーワ製を採用。先行発売されている欧州ではすでに5~6か月待ちというほどの人気を博しているという。
◆「ツーリングも街中もイージーライドできるマシン」

今回は来日していたアジア太平洋市場担当事業責任者アヌージ・ドゥア氏からも話を伺うことが出来た。
「クルーザースタイルのマシンは世界的に人気ですね。しかし我々はクルーザーといったカテゴリーに縛られることなく、自由でイージーライドの出来るマシンを作りました。もちろんツーリングは得意ですが、市街地を走ることもタンデムで走ることも、それからスポーティな走りだっておろそかにはしていません。これはロイヤルエンフィールドのモデル全てに共通するものともいえますね」
クルーザーモデルは大排気量車が多いが、650ccを選んだ理由については、「我々の650のエンジンキャラクター、性能は素晴らしいものだと思います。大き過ぎず十分パワフル。そして手頃な大きさは日本という国においても非常にマッチングが良いと思います。どんなライダーにとっても扱えないようなマシンではなく、どこで走らせても楽しい。もちろん求めやすい価格設定というのも大きなポイントです」

◆「販売台数に捉われず、本質を見失わないモノづくりを」
日本市場において期待される250ccクラスなどの小排気量モデルの展開については。
「もし作ったとしたら売れることはわかっています。しかし販売台数に拘ってものを作るということは我々の求めるところではありません。そういった、ビジネス面だけに捉われて本質を見失わないようにしています。いつかは販売する可能性はあるかもしれませんが、近い将来にその計画はありませんね」
また、逆により大型のエンジンを搭載したマシンや、もっとスポーティなマシンの計画について聞くと、
「より大型のモデルも現時点で計画はありません。大型のマシンは魅力的ですが、全てのライダーが操れるわけではありません。それからスポーツモデルについてですが、例えば我々にとってのスポーティなマシンといえばコンチネンタルGT650ということになるでしょう。スポーツモデルでありながら、様々な用途に使うことが出来るキャラクター。それはスーパーメテオと同じポリシーですね。我々が出来ること。我々しか作れないモデルをこれからも作っていくことが大切だと考えています」

ロイヤルエンフィールドとしては独自に多くのライダーやジャーナリストと一緒に走る場や意見交換出来る機会を数多く作ることで、幅広いライダーに好まれるマシンづくりをモットーにしているとのことである。世界中に多くのファンを持ち、その声に耳を傾けながらもポリシーを持ち、オリジナリティ溢れるマシンを作る。紆余曲折の長い歴史のなかで導き出された方程式が現在の成功につながっていると感じられたのであった。