EV新会社、保有株比率見直し…日産・ルノーのアライアンスはどうなる?

日産自動車、2022年度上期決算を発表
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11月9日、日産自動車がオンラインで開催した2022年上期決算説明会。その場で、業績と並んで関心の的となったテーマが、仏ルノーとのアライアンスだった。

一つはルノーが設立する電気自動車(EV)新会社への出資について、もう一つは1999年のルノーによる救済的資本提携以来維持されてきた保有株比率の見直しについてである。

EV新会社についてはこの前日、ルノーが米グーグルとの提携で車載用基盤ソフトなどを共同開発すること、米半導体大手クアルコムがEV新会社に出資し車載システムを共同開発することなどを発表したばかり。日産が新会社に参画するのか、参画する場合の出資比率がどのくらいになるかが焦点だが、日産のEV関連特許件数はルノーのおよそ6倍。日産の知的財産の扱いも議論の対象となるが、知財関連について、内田誠社長は「ビジネスのコモンセンス(常識)として普通に論議するもの」とし、同時に「各国でEVが開発されている現状を考えると、海外メーカーとのアライアンスは自然な流れ」と前向きな考え方を示した。

◆日産は強気の交渉か

もう一つの保有株比率については、日産サイドには議決権がないいびつな形であり、事業規模、業績面で日産の優位性が高まるにつれて、日産サイドの不満が高まっていた。

商品の魅力の向上に注力しており、6月に発売した軽EV『サクラ』は、2023年度の生産台数が前年度比2倍以上に達する見通しで、企業連合のパートナーである三菱自動車の『eKクロスEV』とともに、「2022‐2023日本自動車殿堂カーオブザイヤー」を受賞した。また、9日の決算発表では通期業績見通しを上方修正するなど足元の業績が好調だけに、日産サイドは強気の交渉になるとみられる。

ルノーが保有する日産株比率の引き下げ協議は、ルノーが保有する日産株43%を15%へ下げ、両社の比率を同一水準にそろえることが落としどころになるとみられる。この条件を満たす一方で、ルノーが日産の新会社への出資を求める構図になりそうだ。

◆電動車モデルミックス50%以上へ

内田社長は、アライアンスについて「競争力の強化につながるか、企業としてメリットがあるかどうかで判断する」と強調。EV技術の進化と開発競争が増してくる中、ルノーとの連携強化は、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」に掲げるグローバル電動車モデルミックス50%以上という目標に向け、有効な選択肢と位置付けているようだ。

EV新会社への出資と日産に対するルノーの出資比率の引き下げ交渉はセットで進められるとみるのが妥当で、合意に至るのはしかるべき時間が必要と考えられる。ルノーの筆頭株主フランス政府の意向も無視できないだけになおさらで、両社間の協議は意外と長引く事態も考えられる。

アライアンスの一員、三菱自動車については、EV新会社への出資はそう簡単ではない。4日の決算発表では今3月期業績を上方修正し、19年3月期以来4年ぶりの過去最高益となる見通し。しかし、20年を最後に無配が続いており、今期の配当についても未定のまま。多額の出資となると株主の理解が得られにくく、出資比率は限定的になるとみられる。

《山口邦夫》

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