マセラティのハイブリッドに“本質”はあるか?『レヴァンテGTハイブリッド』で味わう「また運転したい」という衝動

マセラティの歴史の中でも革新的な『レヴァンテGT』

「eブースター」を搭載したマイルドハイブリッド

サウンドを聴きたいがためにアクセルを踏んでしまいそうになる

「また運転したくなる」マセラティの変わらぬ本質

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マセラティ レヴァンテGT
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マセラティの歴史の中でも革新的な『レヴァンテGTハイブリッド』

マセラティに興味を持ったのは、この業界に入って間もなくしての頃だった。大学を卒業した後に自動車雑誌の編集部に潜り込み、その編集長の愛車がマセラティ『222SR』だった。新車で購入したばかりだったこれが壊れるたびに、ショップまで搬送した。はじめのうちは、「編集長の大事なクルマだ!」という緊張感と「結局パシリか」という失望感が入り交じっていたけれど、やがてクルマそのものに魅了されていった。

特にエクステリアとインテリアのデザインには思わず惹き付けられる独特のオーラがあって、運転した後もその感覚が脳裏に焼き付いたまま離れず、「また運転したいな」と強く思うようになった。

マセラティ レヴァンテGTマセラティ レヴァンテGT

それから約20年が経った40代半ばの頃、とうとうマセラティのキーを自分のものにした。1996年製の『ギブリGT』。ゲトラグの6速MT仕様でボディカラーは赤、内装は黒だった。ガンディーニが手掛けたエクステリアやゴールドのアナログ時計がセンターに鎮座するインテリアは、若かりし頃に強烈なインパクトを受けた記憶を呼び起こし、見ても乗っても楽しくて仕方なかった。そして毎回ガーレジにしまうたびに、やっぱり「早くまた運転したいな」と思った。

日本でマセラティの名が広く知られるようになったのは、まさに222SRやギブリが東京・目黒通り辺りを頻繁に走っていた1990年代頃。それからこの30年余りの間に、マセラティはいくつもの変革を経てきた。それは設計技術/生産技術の飛躍的向上にとどまらず、ギブリは2ドアクーペから4ドアにセダンに生まれ変わり、マセラティ史上初となるSUVの『レヴァンテ』が誕生し、“GTハイブリッド”と名乗る仕様にはマイルドハイブリッドが搭載されるようになった。

マセラティ・レヴァンテGTハイブリッドはマイルドハイブリッド仕様のSUVであり、222SRをニヤニヤしながら運転していた当時の自分なんかには、よもやこんなモデルがマセラティから出てくるなんて思いも寄らなかった。それくらい、マセラティの歴史の中においても革新的なモデルである。

「eブースター」を搭載したマイルドハイブリッド

マセラティ レヴァンテGTマセラティ レヴァンテGT

マセラティの魅力といえば、とかく格好や見た目、あるいは刺激的なサウンドなど、技術力よりも官能的雰囲気のほうが取り沙汰される傾向にある。もちろんそれだってマセラティ独自の世界観を形成する上でなくてはならないものなのだけれど、現行のマセラティは、先進技術の数々がその乗り味をより一層魅力的なものにしている。

マセラティのマイルドハイブリッドは、2リットルの直列4気筒ターボとBSGで構成されている。BSGとは「ベルトドリブン・スターター・ジェネレータ」の略。本来は、エンジン始動時にクランクシャフトを回すためにあるスターターを一時的に駆動力としても使い、減速時には回生ブレーキとして48Vバッテリーを充電する役目も担う。BSG自体はいまや珍しくない機構だが、このマイルドハイブリッドの最大の特徴は、「eブースター」を組み合わせている点にある。

皆さんもよくご存知の通り、ターボにはタービンとコンプレッサーのふたつの回転翼があり、排気ガスがタービンを回すと同軸上にあるコンプレッサーも回り、吸気系から採り入れた空気を圧縮してエンジンへ送り込むシステムである。排気ガスをただ捨てるのではなく再利用しているわけで、いまとなっては循環型のエコな機構とも言える。ただ、エンジン回転数が上がって排気ガスがエキゾーストマニフォールドを通ってターボに辿り着きタービンを回すとようやくコンプレッサーも回り出して空気を圧縮し始めるという、時間のかかる行程を経なくてはならない。アクセルペダルを踏み込んでから実際に加速するまでのこの“間”が“ターボラグ”である。これを解消する飛び道具がeブースターだ。

サウンドを聴きたいがためにアクセルを踏んでしまいそうになる

マセラティ レヴァンテGTマセラティ レヴァンテGT

BSG仕様のマイルドハイブリッドでは、クルマが停止するとアイドリングストップする。再発進するためにアクセルペダルを踏み込むとまずはスターターがモーターの役割を果たしてクルマを動かし、その後にエンジンが再始動する。これだと、ターボエンジンはただでさえターボラグがあるのにそこにアイドリングストップの時間が加わるから、アクセルを踏んでからターボが本領を発揮するまでの時間がさらに長くなってしまう。そこでeブースターが活躍する。

eブースターはボルグワーナー社の商品名で、コンプレッサー側に小型のモーターが組み込まれており、コンプレッサーのみを回転させることができる。タービンが回らないと動かないコンプレッサーが好きなときに回せるので、エンジン回転数が低い領域(あるいはエンジン停止時)でも一定のブースト圧が確保できるというわけだ。発進時はモーターを頼り、エンジン始動直後からeブースターのおかげでターボによる加給ができ、エンジン回転数が上がるとeブースターは止まり本来のターボとして機能する。マセラティのマイルドハイブリッドの作動イメージは簡単にいえばこんな感じであり、実はとても複雑で緻密な制御が行われているのである。

そのパワートレインの最高出力は330ps、最大トルクは450Nmにものぼるから、レヴァンテGTハイブリッドは実際の重量(2280kg)よりもずっと軽快に走るし、何よりスロットルレスポンスが抜群にいい。ドライバーの意志が直ちにクルマに伝わるダイレクト感に、思わずほくそ笑んでしまう。実際そのパフォーマンスは、SUVながら最高速度は245km/h、0-100km/h加速は6.0秒と申し分のないスペックだ。その上、マイルドハイブリッドになっても、V6から直4になっても、マセラティの官能的旋律は健在だから、加速するためではなくそのサウンドを聴きたいがために思わずアクセルを踏んでしまいそうになる。たとえ必要以上に踏んでしまったとしても、燃費に大きな影響が出ないところも、マセラティのマイルドハイブリッドの特徴のひとつである。

「また運転したくなる」マセラティの変わらぬ本質

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時計の色はゴールドからブルーに変わったけれど、インテリアには相変わらずどことなく大人の色気のような艶っぽい雰囲気が漂う。しかしダッシュボードやステアリング上には、最新の地図や交通情報などをリアルタイムでアップデートするマセラティ・コネクト、使い勝手と視認性に配慮したインフォテイメントシステムのMIA(マセラティ・インテリジェント・アシスト)、そして高速道路ではレーダーとカメラを併用して車間や車速、レーンキープなどドライバーの運転をサポートするハイウェイ・アシスト・システムなど、先進技術の数々のスイッチが並ぶ。

実際よりもホイールベースが短くなったかのごとき回頭性を見せるハンドリングは、ボディサイズをまったく意識させないし、標準装備のエアサスペンションは常に快適な乗り心地を提供するだけでなく、コーナリング時の安定した挙動を見事に作り出す。マイルドハイブリッドから生成されたパワーは、電子制御式フルタイム4WDシステムにより、状況に応じて4輪へ適切なトラクションを与える。洗練されたドライビングプレジャーは、ずっと運転していたいという欲望を掻き立てる。

クルマから降りてドアをロックすると、自然と目がレヴァンテのプロポーションをなぞってしまう。縦置きエンジンが透けて見えるようなロングノーズ、コンパクトに凝縮されたキャビン、筋肉質な前後フェンダーなどがひとつの彫刻的な塊として成立し、スポーティとエレガントを絶妙なバランスで表現している。そしてやっぱりいまでも、運転を終えた直後にはもう「また運転したいな」と思ってしまうのだ。

この3月には、レヴァンテGTハイブリッドとセダンの『ギブリGTハイブリッド』、2つのハイブリッドモデルに日本特別限定車「ネロ インフィニート(Nero Infinito)」(それぞれ限定12台)が登場している。イタリア語で「漆黒」を意味するネロ インフィニートは、日本の伝統的な美にインスパイアされた、文字通り「黒」であることを追求したモデルで、ボディカラーだけでなくCピラーのエンブレムやサイドGTバッジ、リアゲートの“Maserati”と“Levante”の文字にも「黒」を採用した。重厚感を増したこのネロ インフィニートの佇まいにもまた、再びドライブへと誘うのに十分な魔性のエッセンスがある。

革新的な変革を遂げても、マセラティの本質に何ら変わりはないのである。

渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。

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《渡辺慎太郎》

渡辺慎太郎

渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター 1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。

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