交通事故統計をどう見るか、救急病院の「実力」とは【岩貞るみこの人道車医】

警察庁が2021年の交通事故統計を発表。死傷者数は減少したが…(写真はイメージ)
  • 警察庁が2021年の交通事故統計を発表。死傷者数は減少したが…(写真はイメージ)

警察庁から、2021年の交通事故統計(速報値)が発表になった。これによると、死者数は2636人(昨年比202人減)。負傷者数は36万1768人(同7708人減)、発生件数は30万5425件(同3753件減)である。

順調に減っているものの、新型コロナの影響で高速道路を含め、一台あたりの走行距離が著しく減っていることを考えれば、納得の数字だといえる。

同時に発表された国家公安委員会委員長のコメントは、「政府をはじめ、関係機関・団体や国民一人一人が交通事故の防止に向け、積極的に取り組んできた結果だと考えております。」とある。

数々の安全技術の開発、実用化、制度化が、「政府をはじめ、関係機関・団体」にまるっとまとめられているのには少し(かなり)不満もあるけれど、毎年だいたいこんな感じなので、あきらめるしかない。ただ、新型コロナで経済停滞&走行距離減少+事故形態の変化は、コメントに入れてほしかった。

救急病院の「実力」

日本では死者数の統計をとるときに、24時間データ(24時間以内に亡くなった人の数)を使っているが、一部の人から「24時間1秒で亡くなった人の数はカウントされない。24時間データで数値がよくなるのは、単に医療向上のおかげ。車両技術や運転者の行動について正しく反映されていないのではないか。」という質問をもらうことがよくある。

24時間に対して30日の死者数は約1.1倍。この倍率はほぼ変わらず推移しており、医療関係者のあいだから特段の意見は出ていない。他国との比較や専門的な解析をしたい場合は、30日データも参考にするべきであるが、これまで日本は24時間データをとってきたので、死者数推移はこのまま24時間でよいのではないかと私は思っている。グラフの線がわかりやすいし。

もしも医療(医師接触前の消防隊の動きを含む)に影響されないデータを求めるのであれば、医療の実力、得意分野、また、消防の地域差を排除したものであるべきである。

救急病院はどれも同じ実力があるわけではない。同じ三次救急の病院(重篤な状態の患者が運ばれる病院)であっても、外傷に強い病院、熱傷、脳、心臓に強い病院と、少しずつ特性がある。特に、交通事故の場合は多発外傷なので、脳外科医、胸部外科医、腹部外科医、整形外科医……などのほか、患者の状態をコントロールする麻酔科医、CTやレントゲン撮影をする技師、医師の動きをアシストする看護師など、それぞれのスキルと全体のチームワークが求められる。これだけの大人数になると残念だが、病院間の優劣が出てくることは否めない。

私がいつもおびえているのは、医学会の開催時期だ。医師は専門により、さまざまな学会があり、年に一度、学術集会が開催されている。全国から医師や看護師が集い、経験した症例を発表し、お互いの知識を増やし、人間関係を構築する貴重な機会なのだが、それだけに多くの医師や看護師が集結する。その間、病院はどうなっているのか? 私は病院取材をするなかで、毎年、救急医学会、小児救急医学会、臨床救急医学会など交通事故に関係する学会開催期間を確認し、特に安全運転に努めるクセがついてしまった。

交通事故統計をどう見るか

また、消防も全国一律の体制が整えられているわけではない。21世紀の現在でも、救急車や救急隊が存在しない自治体は30を超える。こうした村や島では、自治体職員がワンボックスやワゴン車などで駆けつけるのである。当然、搭載されている医療資器材も、対応できる応急手当も、救急隊員や救命救急士とは大きく異なる。

さらに、地域の特性もある。以前、ネット上で「一番近い病院まで2時間」という看板をかかげる交通安全の呼びかけが話題になったが、救急患者は特に、時間の経過とともに死亡率は高まるばかり。つまり、いつ(昼か夜か何曜日か)、どこで(都心なのか、山の中なのか)ケガをしたかによって、死亡率は変わるのである(ついでにドクターヘリが飛べる地域&時間帯かどうかも大きくかかわっていると思う)。

そんなものを、いっさいがっさい含めて発表される警察庁の交通事故死亡統計。24時間か30日間かはそれぞれの使用用途によって1.1倍にしてもらうとして、この数字はひとつの目安として見るためのもの。人・道・車・医療が、とにかくいかに数字を下げるか努力するしかないのである。

近年、いくつかの自動車メーカーがついに「死者ゼロ」という言葉を口にするようになってきた。死者ゼロの未来が見えはじめたのである。2021年、交通事故で死亡した2636人は、単なる数字ではなく、一人ひとりに名前も人生も家族も友人もいたことを改めて思い、2022年も安全運転に努めたいと思う。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。

《岩貞るみこ》

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