トヨタ自動車の豊田章男社長は12月14日、電気自動車(BEV)戦略についての説明会で、2030年のBEVの世界販売目標を350万台にすると宣言した。これまでは同年にBEVとFCEV(燃料電池車)を合わせて200万台としていたが、それを大幅に増やすことにした。
この裏にはトヨタはBEVに対して“後ろ向き”とのイメージが定着しつつあり、それを払拭しようという狙いがあったのは言うまでもない。トヨタはカーボンニュートラルの実現に向け、BEVをはじめFCEV、HEV(ハイブリッド車)、そしてe-fuel(合成燃料)や水素燃料を活用したエンジン車のすべてを投入する“全方位戦略”で原則としてきた。そして、どのクルマを選ぶかはユーザーが決めることと言ってきた。
また、充電インフラの整備が十分でない地域で急速にBEV化を進めると、車両の利便性が損なわれ、石炭などの火力発電が多い地域では逆にCO2が増えると訴えてきた。そこで、現実的な解として、HEVがいいのではないかと主張してきた。
しかし、その方針がトヨタはBEVに後ろ向きと捉えられ、事実、ある環境団体から世界大手自動車メーカーの気候対策ランキングで最下位と発表されてしまった。これにはトヨタも不本意で、悔しい思いだったであろう。
さらに、カーボンニュートラルの気運が世界で一層高まり、走行時にCO2を排出するガソリン車やHEVに対する海外での風当たりも強くなってきた。そこで、トヨタはBEVに積極的に取り組んでいる姿勢を示す必要があった。
「350万台は独ダイムラーやスズキの年間販売台数と同じ規模で、とてつもない数だ」と豊田社長は強調し、「350万台、30車種を投入しても前向きじゃないと言われるなら、どうすれば前向きな会社と評価いただけるのか逆に教えてほしい。販売台数全体のBEVのパーセンテージより絶対台数で評価していただきたい」と語気を強めた。
その350万台の内訳について、トヨタブランドが250万台、レクサスブランドが100万台と具体的な目標台数を示し、さらにレクサスについてはすべてのカテゴリーでBEVを投入し、欧州、北米、中国ではBEVの販売を100%とする方針だ。
そのBEV投資に4兆円を投じ、うちBEVのカギとなるバッテリーへの投資額を2兆円と、9月に発表した1兆5000億円から5000億円引き上げた。今後はさらに先進的で、良品廉価な電池の実現を目指していくという。
「カーボンニュートラルのカギを握るのはエネルギーだ。現時点では、地域によってエネルギー事情は大きく異なる。だからこそトヨタは各国、各地域、いかなる状況、いかなるニーズにも対応し、カーボンニュートラルの多様な選択肢を提供したいと思っている」と豊田社長は改めて強調していた。