国土交通省は11月4日、阿佐海岸鉄道が阿佐東線(阿波海南~甲浦)に導入する「デュアル・モード・ビークル」(Dual Mode Vehicle=DMV)に関する4回目の技術評価検討会(検討会)の結果を公表した。
阿波海岸鉄道では、DMVの営業運行を2021年の東京オリンピック・パラリンピックまでに開始したいとして、2021年2月下旬から3月下旬にかけてDMVの機能試験を、4月上旬から性能試験を実施していた。
ところが、6月16日に行なわれた現地調査では、前部の鉄輪を上げ下げする時に作用する「車輪アーム」と呼ばれる部分への応力(設計強度を表す指標)の測定を行なったところ、溶接部に「疲労限度に関する許容応力を超過していること」が判明し、脆弱性が問題となった。
そこで、6月25日に開催された3回目の検討会では、その補強対策と再測定を行なった上で再検討されることになり、営業運行開始が先送りされたが、今回の検討会では「疲労限度に関する許容応力の範囲内であることを確認した」と結論付けられた。
車輪アームの補強対策については、応力集中を避けるため板厚や溶接方法の変更などが行なわれ、9月22日から10月8日にかけて走行試験を実施。鉄道モードで8000km、自動車モードで4930kmの走り込みを行なっている。
ただし検討会では、走行試験以降の長期の耐久性については引続き検証する必要があるとしており、営業運行開始に際しては、状態・機能検査における車輪アームの探傷検査を追加実施すること、部品の分解検査や台車・車軸の探傷検査を4年ごとに実施するとしている重要部検査の周期を1年、または3万2000kmを超えない期間のいずれかに短縮すること、振動加速度計による車両の振動監視を実施することが必要としている。
とくにDMVの後輪タイヤについては鉄道モードでレールと接触することになることから、その摩耗状況などに特段の注意を払うこととされている。
検討会の結果を受けて阿佐海岸鉄道では「営業運行開始に向けて大きな一歩を踏み出せたものと考えております」とコメント。今後は乗務員の習熟運転や耐久性・保守態勢の検討、車両確認が行なわれる予定で、2021年中に運行を開始したいとしている。