ホンダ、「旅行時間表示サービス」をスタート…インターナビで蓄積したデータを活用する

ホンダが8月よりスタートさせた新たな「旅行時間表示サービス」
  • ホンダが8月よりスタートさせた新たな「旅行時間表示サービス」
  • 旅行時間表示サービスの概要
  • ホンダ車から収集したデータを元に、サーバーで所要時間の計算を行って配信。そのデータを用いて事業者が必要に応じた表示を実施する
  • 2019年と2020年尾紅葉シーンに、迂回路を設けて実証実験を行った
  • 実証実験の結果は、所要時間で50%もの削減ができた
  • 表示板は可搬性のあるものを使い、イベントごとに活用できるメリットがある

ホンダは8月19日、「Hondaドライブデータサービス」の新サービスとして、ホンダ車のリアルタイム走行データを活用し、渋滞路・迂回路通過の所要時間を計算して路上に表示する「旅行時間表示サービス」を8月より有償提供したと発表した。

約370万台のホンダ車からのデータを活用。今も年間数十万台が増える

このサービスは、企業や自治体向けのデータサービス事業として展開するもので、道路に渋滞路・迂回路通過の所要時間を表示することでドライバーに迂回を促し、交通量の分散による渋滞低減につなげることを目的とする。ホンダによれば、日本の自動車メーカーとしては初めての提供になるという。

「Hondaドライブデータサービス」とは、ホンダが2017年12月に活動を開始したデータ事業サービスで、約370万台にも及ぶホンダ車から収集した走行データや車両の挙動データをベースとする。そのデータ収集距離は1日5000万kmを突破し、年間数十万台ペースで増え続けているため、データ密度は年々高まっているという。特に見逃せないのがこのデータは車載センサーによって取得されているということだ。

このデータには位置情報がリンクされており、車両の挙動から横滑りや急加減速などからヒヤリハット地点を特定することができる。これが道路の改良につなげたという例はあまりに有名な話として伝えられているほどだ。さらにGPSや電波状況に依存しないことから、ビル陰やトンネル内のデータも正確に取得できる。こうした状況から、これまでも様々な企業や自治体から要望を受け、渋滞対策、都市計画、防災、交通事故防止など社会課題解決に役立ってきたという経緯がある。

企業や自治体向けに、渋滞に特化したパッケージ型サービスとして提供

そうした中で今回より提供を開始する旅行時間表示サービスは、全国各地で頻発する「渋滞」の解決に特化して開発されたもので、パッケージ型サービスとすることで、導入コストも含め、より多くの企業や自治体が導入しやすくなるようにしたのがポイントとなる。

旅行時間表示サービスでは、まずホンダ車からリアルタイムで集まる走行データを活用し、渋滞路・迂回路の通過にかかる時間を計算。そこで算出された渋滞路・迂回路それぞれの所要時間をルート分岐点の手前に設置した路側のディスプレイに表示させ、ここでドライバーに迂回路の選択につなげる。これによって、交通量が複数のルートに分散されることになり、結果として渋滞を低減する効果が期待できるというわけだ。

ホンダによれば、特に効果が期待できるのが、目的地までのルートが複数存在し、そのルートの一方が渋滞し、一方は空いているなど交通量に偏りがある場合。さらにこのサービスならではの特徴としてあるのが、紅葉など季節性の高い状況や、常設でないイベントが開かれたときの対応で、その時は臨時表示板を渋滞が予想されるポイントに設置できる。

これを可能としたのは、ホンダ車から収集したリアルタイム走データが元になっているからこそ。従来の交通管制システムなど路側のインフラに頼っていたら、こうした臨機応変な対応は不可能だったと言える。

実証実験の結果、サービス提供前と後では区間移動時間が半減!

ホンダではこの効果を検証するために、紅葉シーズンになると激しい渋滞が発生する栃木県日光市で実証実験を実施した。対象ルートは、国道119号線の今市市春日町交差点から日光山内入口までの区間。ここで旅行時間表示サービスがどの程度の効果を発揮するかに注目が集まった。

結果は予想を上回るものだったようだ。2019年秋にはこの区間でかかった所要時間が171分だったのに対し、2020年秋には同等の交通量にも関わらず85分と半減したのだ。効果はそれだけじゃなかった。渋滞ルートの所要時間表示が長くなっていくと迂回が促されたのか、渋滞の長さは2019年の約3.7kmに対して約2.3kmにまで短縮されたのだ。さらに渋滞が解消した時刻も、平均して2時間以上も早まったという。

「ルートを通るすべてのクルマに情報を与えなければ効果は出ない」福森氏

ここで気になるのが、ホンダが提供している「インターナビ・プレミアムクラブ」や「ホンダ・コネクト」などコンシューマサービスとの関連性だ。開発に携わった本田技研工業モビリティサービス事業本部コネクテッド事業統括部の福森 穣氏は、「基本的にインターナビ等で培ったデータを横展開したものだが、目的地として探せない臨時駐車場などへはそもそもインターナビで案内はできない。そんな状況下で補完関係にあるのがこのサービスだ」と述べた。

また、福森氏は「渋滞を減らそうとすれば、そのルートを通るすべてのクルマに情報を与えなければ効果は出ない」とも語り、このサービスが広く活用されることで渋滞そのものが減らせるメリットを強調した。

この旅行時間表示サービスについてホンダは、既にいくつかの企業・自治体から導入の要望が得ているとし、2021年秋の活用開始に向けて準備を進めているところだという。福森氏は今後の目標として、「利用者を増やすことでサービス価格が下げられるように育てていく所存。機会があれば海外展開も視野に入れていきたい」と語った。
サービスの事業化などを担当するモビリティサービス事業本部・コネクテッド事業統括部の船越允維氏は、19日のオンライン説明会で……

《会田肇》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集