ホンダ 三部社長「日本の電動化のカギは軽EV」

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ホンダの三部敏宏社長は7月16日、都内で報道関係者とのラウンドテーブル取材会を開いた。

このなかで日本市場でのカーボンニュートラルに向けた電動化を進めるうえでは、ホンダも2024年の投入を計画している軽自動車のEV(電気自動車)展開が「キーになる」との見解を示した。取材会での一問一答は次のとおり。

EV開発で最上位に置くのは「魅力ある商品」

----:2040年に世界販売の全てをEV(電気自動車)とFCEV(燃料電池車)とする電動化方針を打ち出しましたが、EVについては今後どのような投資を行いますか。またアップルやテスラといったEVの新興勢力をどう見ていますか。

三部氏:電動化を進めるに当たっては当然、モーター、インバーター、バッテリーの3部品とそれらの制御が重要になる。とくにバッテリーへの投資は大きく、(EVの)生産台数によって必要量は逆算できるので、今は言えないが投資規模も分かる。徐々に増えていくので財政的な準備も含めて、淡々とやっているところだ。

EVではいかに魅力ある商品を出していけるかが、ひとつの勝負になると考えている。その方向性として出したのが『ホンダe』であり、開発はもう5年以上前になるが、次世代のEVのカタチを問うということで、チャレンジングに(新装備で)入れられるものは、全て入れるというクルマになっている。台数は少ないがデザインを含め非常に好評を得ている。このクルマがひとつの方向性であり、EVで一番上位にあるのは魅力ある商品づくりだ。(新興勢力は)脅威ではあるが、われわれは新しいホンダが創る夢の価値というもので、彼らと、まあ勝負していきたいと考えている。

----:電動化ではEU(欧州連合)が2035年にエンジン車の新車販売を禁止する規制案を検討しています。どう対応しますか。

三部氏:2050年のカーボンニュートラルに向け、(EVとFCEVの販売比率は)先進諸国では30年に40%、35年に80%、そして40年に100%としている。(温室効果ガスの排出を)50年にゼロにするにはこれらを達成しないとできない。今回、EUでは35年に内燃機関をゼロにするということだが、政治的な話であり、日を追うごとに前倒しになっている。カナダも35年で内燃機関は禁止ですと言う。基本的には計画の妥当性みたいなところを検証しながら、対応していく。国際的な動向に合わせないと商売にならないので、当然合わせていくことになる。

最適仕様にできれば軽のEV化が進む

----:日本では2024年に軽自動車のEVを計画していますが、電動化はリージョン別に戦略を展開するということでしょうか。

三部氏:本当はグローバルにひとつの戦略で闘いたいのだが、現実的には充電インフラなど全く環境が違う。また、バッテリーは現地で調達する必要性もあり、少し地域ごとに電動化戦略を分けざるを得ないと考えている。大きく見れば、北米戦略、中国戦略、そして日本・その他ということで考えていく。

日本においては、現時点でのEV販売は全体の0.6%程度となっている。ハイブリッド技術が先行したのでグローバルで見ても特殊な市場となった。その日本でEVなどを広めていくうえでキーとなるのは軽自動車だろうなと見ている。われわれも24年に向けて、いま開発を進めている。どういうEVだと、お客様が受け入れてくださるのかと、開発しながらいろいろ考えているところだ。

たとえば、航続距離はどれぐらい走れればいけるのか、などである。バッテリーは積めば積むほどコストもかかるし、クルマも重くなる。重くなるので足回りも変えるとなると、どんどん高くなるので、最適な仕様を検討しながら進めている。その辺が市場とマッチすれば、軽自動車市場でもEVという電動化が進む。過疎地においてはガソリンスタンドの廃止なども進んでいるが、電気はどこでもある。日本における電動化のカギは軽自動車になるのかなと思っている。

いち早く取り組み、リードしたい交通事故死ゼロ社会

----:4月の就任会見では、カーボンニュートラルと並ぶもうひとつの柱として、2050年に二輪を含むホンダ車が関与する交通事故での死亡者ゼロという安全目標を掲げました。こうした目標を打ち出した想いは? また二輪もゼロというチャレンジングな取り組みの実現では、どのような点が重要でしょうか。

三部氏:カーボンニュートラルだけでなく、安全のお話しもしたのですが、誰も聞いてくださらなかった(笑)。環境とともに安全は大きな社会課題の柱だと捉えている。現時点においても交通事故は起きているし、交通事故で人が亡くなるというのは本来、あってはならないと考えている。

技術ではなかなか防ぎきることができなかったが、近年は自動運転やADAS(先進運転支援システム)が大分進化してきたという背景がある。もう少し頑張れば交通事故死ゼロ社会ができるだろうということで、われわれはその目標に対して、いち早く取り組み、そこをリードしていきたい。それがホンダの役割だろうということで、今回ふたつの大きな柱のうちのひとつに挙げた。

ADASもどんどん進化し、一部(完全)自動運転も入ってくるので、確実に四輪車における交通事故は減少していく。一方のバイクは当社はアジアでの販売が多く、事故も多いが、これは技術だけでは救えない。四輪と二輪ということでは、四輪が二輪を認識して事故を回避するというシステムは、いま一生懸命に開発を進めている。

それだけでなく、アジアではヘルメットを被らないといったことなどもあり、教育は大きな力になる。現在でも交通安全教育活動を行っているが、今後は更に強化し、交通ルールをスマホなどでより多くの方が学習できるようなシステムも含めて環境を整え、二輪の事故を減らしていきたい。ハードの技術と、教育などソフトの両面で進めながら、交通事故死亡者ゼロに向けて積極的に展開していきたい。

----:今年が最終シーズンとなるF1は目下5連勝中です。

三部氏:最終年になったが、当然、去年の段階から今年勝つための技術の取り組みを進めてきたし、着々とその成果が出ている。もちろん、われわれの技術だけでなく、レッドブルさんの車体の技術も含めてうまくマッチしているという状況で、この週末も勝てるといいなと期待している。エンジンはシーズン途中では大きな改良はできないが、今年はいい技術を投入しているので、何としてもチャンピオンを取りたいという気持ちでいる。

《池原照雄》

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