ポルシェ 911に「オールラウンドモデル」を追加 2021年内登場か

着想の原点は1970年代の911のラリーでの活躍か

過去に911ベースのオフローダーコンセプトを製作

タイカン クロスツーリスモのノウハウを応用か

「グラベルモード」を標準装備

ポルシェ 911 ビジョンサファリ(2012年)
  • ポルシェ 911 ビジョンサファリ(2012年)
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フォルクスワーゲングループは3月16日、デジタル開催した年次プレスカンファレンスにおいて、傘下のポルシェの2021年の新型車計画を発表した。『911』シリーズに、スポーティな「オールラウンドモデル」が追加されることが決定している。

1970年代に911がラリーで活躍

「オールラウンド」とは、舗装路だけでなく、オフロード走行も可能にするモデルを指す。同じくフォルクスワーゲングループ傘下のアウディの「オールロード」と同様の意味だ。911シリーズに追加されるオールラウンドモデルの着想の原点には、1970年代のポルシェ911のラリーでの活躍があると見られる。ポルシェのワークスチームは1974年、アフリカのケニアで開催された世界で最も過酷なラリーといわれる「サファリラリー」(WRC第2戦)に『911カレラRS』で参戦し、2位入賞を果たした。

1974年のサファリラリーを制したのが、ジョギンダ・シン選手の駆る三菱『ランサー1600GSR』。当時、三菱自動車は、サファリラリーにワークス体制で参戦する計画だった。しかし、第一次石油ショックが発生し、この計画は白紙に。ジョギンダ・シン選手は、自身が購入した三菱ランサー1600GSRでサファリラリー参戦を決め、この話を伝え聞いた三菱自動車が急遽、部品と技術者を日本からケニアに送り込み、同選手が購入した市販モデルのランサー1600GSRを、11日間でラリーカーに仕立て上げ、ラリーのスタートに間に合わせたというエピソードがある。このランサー1600GSRが、ポルシェ911との死闘を制し、三菱車によるWRC初勝利を達成した。

1978年、東アフリカで開かれたサファリラリーには、ヴィック・プレストンとビヨルン・ワルデガルドがドライバーを務める2台のポルシェ『911SC』が参戦した。全長5000kmにおよぶこのラリーでは、人と車の両方にとって過酷な状況が絶え間なく続いた。このような状況を走り切り、プレストンとワルデガルドはそれぞれ2位、4位でゴールした。

過去に911ベースのオフローダーコンセプトを製作

モータースポーツの分野以外では、ポルシェは過去に、911ベースのオフローダーコンセプトを製作していた。2012年に開発されたポルシェ『911ビジョンサファリ』がそのモデルだ。

911ビジョンサファリの基本的な考え方は、スポーツカーとオフローダーを確実に組み合わせること。ポルシェは、これができるブランドは他にないと、自負していた。ポルシェによると、911ビジョンサファリは、1970年代のサファリラリーで活躍した伝説的な911を連想させるコンセプトカーという。

ポルシェ911ビジョンサファリは、「991」世代の911をベースに開発された。オフロード走行を視野に入れて車高を引き上げ、ホイールアーチを拡幅。バンパーは大型化された。コックピットには、モータースポーツにインスパイアされた装備を採用していた。。

タイカンクロスツーリスモのノウハウを応用か

ポルシェのスポーツカーをベースに、オフロード走行にも対応させた最新モデルが、EVの『タイカン』の派生車種、『タイカンクロスツーリスモ』だ。

タイカンクロスツーリスモのエクステリアは、2018年春にスイスで開催されたジュネーブモーターショーで発表されたコンセプトカーの『ミッションEクロスツーリスモ』に従ってデザインされた。そのシルエットは、ポルシェのデザイナーが「フライライン」と呼ぶ、後方に向かって傾斜するルーフラインが特長だ。

タイカンよりもオフロードテイストを強調したデザインを採用する。ホイールアーチトリムが追加されており、専用デザインの前後バンパーとサイドシルが装備された。「オフロードデザインパッケージ」の一部として、フロントバンパーとリアバンパーのコーナーとシルエンドに専用フラップが装着できる。これは、エクステリアを際立たせるだけでなく、飛び石からも車体を保護するという。

4ドアEVスポーツカーのタイカン同様に、800Vアーキテクチャーによるエレクトリックドライブを採用している。さらに、4WDとアダプティブエアサスペンションを備えた新しいシャシーが、オフロードでのダイナミクスを追求する。タイカン クロスツーリスモは、後席乗員のために47mm拡大したヘッドルームと、大型テールゲートから積み込み可能な1200リットル以上の荷室容量を備えている。

「グラベルモード」を標準装備

全車に4WDとアダプティブエアサスペンションを備えたシャシーを標準装備した。オプションのオフロードデザインパッケージは、最低地上高を最大30mm引き上げることが可能。タイカン クロスツーリスモはオフロード地形の走行にも対応しており、標準装備の「グラベルモード」がラフロード走行への適合性を向上させているという。

シリーズの頂点に位置するのが、「タイカンターボクロスツーリスモ」。モーターの最大出力は625psで、ローンチコントロール時のオーバーブースト時には、最大出力が680psに引き上げられる。

この効果もあって、タイカンターボクロスツーリスモは、0~100km/h加速3.3秒、最高速250km/hの性能を発揮する。1回の充電での航続は、最大452km(WLTP計測)とした。

2021年、911シリーズに追加されるオールラウンドモデルには、このタイカンクロスツーリスモのノウハウが応用される可能性がある。ラリーカーやコンセプトカーを除けば、911シリーズに初めて設定されるオールラウンドモデルは、新たな顧客にアピールすることになりそうだ。

《森脇稔》

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