オープンイノベーションによる日本版MaaSの構築、小田急グループの戦略とは…名古屋オートモーティブワールド2020

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小田急電鉄 次世代モビリティチームの西村潤也統括リーダー
  • 小田急電鉄 次世代モビリティチームの西村潤也統括リーダー
  • MaaS Japanを活用・連携したアプリ展開
  • MaaS Japanデータ連携図
  • EMotアプリの「デジタル箱根フリーパス」
  • EMotアプリの「混雑予報」
  • 小田急電鉄が参画した江の島プロジェクト2019の自動運転バス

小田急電鉄が複合経路検索や電子チケット発行機能などを備えたMaaSアプリ『EMot(エモット)』の実証実験を開始してからまもなく1年が経過する。小田急のMaaS開発に従事する次世代モビリティチームの西村潤也統括リーダーは「デジタル接点をしっかり獲得しておかないと、これから生き延びていけないという危機感の中からやっている事業」だと明かす。

10月21日から開幕する「第3回 名古屋オートモーティブワールド」では、MaaSフォーラム『オープンイノベーションによる日本版MaaSの構築』の中で西村氏が「小田急グループの次世代モビリティ戦略」について語る。講演に先駆け、独占インタビューを敢行。小田急が主導し実現しようとしているMaaS、そして次世代のモビリティのあり方とは。

「3つの危機感」とチャンス

西村氏が話す「危機感」については「事業環境でいうと大きく3つある」という。「ひとつめは生産年齢人口の減少です。人口減少時代といわれていますが、とくに運輸業にとって中心的な顧客である方々が減少していることは、コロナ以前からマイナストレンドとして非常に大きく効いているのです」と指摘。

さらに「2つめは外出率。どうしても高齢になると自宅にこもってしまったり、もしくは移動がなかなか困難になってきます。そして最近では若者の約半数が休日に外出しないと答えているという統計もあって、我々としても非常に危機感を覚えています」という。

3つめが「デジタル技術の進化」。「例えばEコマース市場の拡大とか、もしくはオンラインでの仕事、こうしたことも事業環境としてじわじわと影響してきます」と西村氏は語る。

これら3つはコロナ前から想定していたというが、コロナ自粛期間中に一気に加速。コロナが終息しても元には戻らず、交通事業者として極めて厳しい状況が続くのは間違いないという。

一方で西村氏は「生産年齢人口は減るが、自家用車ネガティブ層と我々が称している、クルマを持っていない、もしくはできれば運転したくないと思っている方は、コロナに関わらず増える傾向にある」と指摘。

「自家用車ネガティブ層が増えるというのは我々にとってチャンス。高齢者の方には自家用車以外の移動の選択肢を、そして若者にはサブスクやアプリ内で検索、決済ができるなど新しい移動体験というものを提供することで、このチャンスをデジタルの風で獲得をしながら事業を伸ばしていきたい」と話す。

小田急だけではないオープンなデータ基盤を軸に

EMotアプリの「デジタル箱根フリーパス」EMotアプリの「デジタル箱根フリーパス」
こうした危機感やチャンスを背景に、小田急はMaaSアプリ・EMotの実証実験に乗り出している。EMotの開発にあたり小田急では「MaaS Japan」と名付けたデータ基盤を構築。しかもこのMaaS JapanはEMotだけでなく、他の交通事業者や自治体が展開するMaaSアプリ開発への活用も前提としたオープンなデータ基盤となっているのが特徴だ。

「EMotをスタートさせる前後あたりから、同じような機能を他の事業者や他の地域で使いたいという要望を頂き、それにお応えする形で、データ基盤をオープンにしMaaS Japanと称して開発を進めました」と西村氏は経緯を明かす。

さらに「我々としては小田急沿線というローカルの中の課題を解決し、そのソリューションが他のエリアでもご活用頂けるのであれば、このMaaS Japanというシステムを使って頂きたいと思っています」とも。

MaaS Japanデータ連携図MaaS Japanデータ連携図
また「アプリの中に埋め込むサービスは、これまでの私鉄モデルでは自社グループで全部完結していました。しかし鉄道、バス、小田急百貨店、OXストアでつなげようとしても、グループ内で完結できる世界ではなくなった。例えば移動サービスでいうとバイクシェア、カーシェアなど我々がやっていない事業者と連携しないといけない部分もあるのです」と西村氏は語る。

EMotそのものに関しては「実証実験レベルでスタートしているので、アジャイル開発を進めながらユーザビリティを高めるといったステージが今の段階。今後はもうひとつステージを上げて機能性の向上だけではなくて、しっかりとしたコンテンツの醸成、お客様に選ばれる内容の増加というものを進めていきたいと考えています」という。

海外にも広がる「MaaS Japan」

実際にMaaS Japanは様々な企業や自治体との連携を進めている。NTTドコモとはAI運行バスやdカーシェアのシステムとMaaS Japanを接続し、シームレスなサービス提供を目指している。北海道とは十勝地区でMaaSの実証実験を行う。

このほかにも「すでにJR東日本とは連携した取り組みを進めていて、実績としては2019年度に『立川おでかけアプリ』を展開しました。2020年度もJR東日本とはいろんな連携を進めていきたいと思っています。またEMotでは静岡・浜松市の遠州鉄道と天竜浜名湖鉄道の共通1日フリーきっぷやサンリオピューロランドで利用できる電子チケットを販売していますが、さらに他の事業者のチケットも増えてくると思います」と西村氏は解説する。

MaaS Japanを活用・連携したアプリ展開MaaS Japanを活用・連携したアプリ展開
さらにMaaS Japanの連携先は国内にとどまらず海外へも広がっている。訪日外国人に向けたサービスの充実だ。

具体的には、自国で使い慣れたアプリをそのまま、MaaS Japanを介して日本での観光などの移動時に使えるようにする。これにより経路検索や乗り換え情報、電子チケットの購入がスムーズにできるようになる。すでにフィンランドのMaaS Global社の『Whim』、シンガポールmobilityX社の『Zipster』の2つのMaaSアプリとの連携を決定しているという。

西村氏は「新型コロナウイルスの影響で、訪日外国人が戻ってくるのはいつになるのかわかりませんが、日本は訪れてみたい国の上位だと聞いています。必ず戻ってくる需要を見据えて、海外の連携先をさらに拡大していこうと思っています」とさらに先の展望についても話す。

名古屋オートモーティブワールドで講演

その西村氏は10月21日からポートメッセなごやで開催される「第3回 名古屋オートモーティブワールド」のセミナー、MaaSフォーラム2020の3日目『オープンイノベーションによる日本版MaaSの構築』に登壇し、「小田急グループの次世代モビリティ戦略」をテーマに講演する。

「当日はMaaSアプリに加えて、2か所で違うタイプの実証実験を予定しているオンデマンド交通についても紹介したい」と西村氏は講演に向けた思いを述べている。

■本講演の詳細は
https://reed-speaker.jp/Conference/202010/nagoya/top/?id=AUTON

■第3回 [名古屋]オートモーティブワールド
自動運転、EV/HEV、カーエレクトロニクス、コネクティッド・カー、軽量化など、自動車業界における先端テーマの最新技術が一堂に出展。今年は新たにMaaS 特別展示エリアを特設し、MaaS実用化に向けた注目テーマでの講演もおこなわれる。

■展示会のご入場には招待券が必要です。招待券請求(無料)受付中!
※招待券の事前登録により、入場料(5,000円)が無料になります。
https://regist.reedexpo.co.jp/expo/NWJN/?lg=jp&tp=inv&ec=AUTO

会期:2020年10月21日(水)~23日(金)10:00~18:00 (最終日のみ17:00まで)
会場:ポートメッセ なごや
主催:リード エグジビション ジャパン株式会社
■第3回 [名古屋]オートモーティブワールド 詳細はコチラ!
https://www.automotiveworld-nagoya.jp/ja-jp.html

《小松哲也》

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