【懐かしのカーカタログ】初の“5ナンバーベンツ”はセンセーショナルだった…メルセデスベンツ 190E

メルセデスベンツ 190E(1985~1993年)
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W201型メルセデス・ベンツ『190E』は、この連載でもぜひ取り上げたかった1台である。というのも、やはりこのクルマの登場はセンセーショナルなものだったから。日本市場に導入されたのは1985年のことで、“初の5ナンバーのメルセデス・ベンツ”として注目を集めたのはご承知のとおり。

全長×全幅×全高=4420×1680×1385mm、ホイールベース2665mm、最小回転半径=5mの、当時の国産セダンでいえば『コロナ』『ブルーバード』クラスのまさしくコンパクト(で1180kgと軽量)なボディは、それまでのヤナセのショールームに並ぶ威風堂々としたメルセデス・ベンツとは大きくイメージが異なるもの。

ちなみに『190E』の登場で、それまでのW123はミドルレンジの位置付けとなり、これも未だに根強いファンをもつ“W124”は、1986年に日本市場に導入されたモデルから“ミディアムクラス”と呼ばれるようになった。

クリーンでシンプルなデザイン

メルセデスベンツ 190E(1985~1993年)メルセデスベンツ 190E(1985~1993年)
写真のカタログは表紙に“190E”と大きくあるほうが導入時のもので、もう一方はその翌年のもの。“シグナルレッド”と呼ばれるソリッドの赤は訴求色で、これは当時、同じヤナセのショールームに並ぶ“赤いアウディ80”も意識したものだったはずだ。デザインは当時のチーフデザイナー、ブルーノ・サッコによるもので、フロントグリルとオーナメント類以外、外観にメッキの装飾がない、実にクリーンでシンプルなものだった。

標準のホイールキャップは空力を追求したデザインでファイバーグラスを混ぜたポリアミド製、左右で形状の違うドアミラー、汚れても光量を確保する凹凸のテールランプなども、機能に裏付けられたもの。ワイパーはシングルで当初は払拭面積が75%だったが、直後に独特な動きをみせるパノラマワイパーに変更を受け、払拭面積を86%に拡大。同じタイミングで、タイヤも標準サイズが当初は175/70R14から185/65R15に変更されている。

メルセデスベンツ 190E(1985~1993年)メルセデスベンツ 190E(1985~1993年)
41cm径のステアリングやVDOのメーター、スタッガード式ゲートのシフトレバーが備わるインパネ、“呼吸するシート”が備わる室内は今の目では極めて簡素に映るが、ここも上級メルセデス・ベンツのクオリティをそのままスケールダウンしたもの。光軸調整ダイヤルを備えるライトスイッチは、文法どおりにドア側・ステアリングコラム横に置かれた。写真に載せた色見本は『190E』専用のものだったかどうか定かではないが、このように多くの色が選べたことも上級モデルに遜色のないことだった。

人肌の味わいは今でも忘れられない

メルセデスベンツ 190E(1985~1993年)メルセデスベンツ 190E(1985~1993年)
そしてリヤにマルチリンク式を採用したサスペンション、穏やかな感触の操舵力可変式パワーステアリングなどが生み出す、独特のドライバビリティは、軽量・コンパクトなボディでありながら、まさにメルセデス・ベンツそのものだった。

当時、ヤナセが開催したプレス向け試乗会で箱根で乗ったのが最初の体験だったが、岩のようなフロアの上に乗ったなめらかな乗り味、安定感におおいに感銘を受け、以降の仕事での僕の“メートル原器”になったほど。さらにその後、当時所有していた自分のクルマ(いすゞ・ピアッツァネロXEターボ)を点検でヤナセに預けた際、太っ腹な当時のセールス氏が代車で『190E』のキーを託してくれ、かなり長期間、まるで自分のクルマのように乗り回す機会に恵まれた。その際、前述したような走りっぷりや機能的な設計に触れながら、この小さなクルマの奥深さを実感したのだった。

『190E』は1世代限りで、後継モデルからは『Cクラス』に呼び名が変わった。さらに最新の『Cクラス』と『190E』を較べたら、装備や先進安全機能を含めた機能など隔世の感があるのは確かだ。が、ノーズ先端のマスコットを眺めながらコンパクトなのに気持ちを逆撫でしない乗り味、走りっぷりを堪能させてくれた『190E』の人肌の味わいは今でも忘れられない。

メルセデスベンツ 190E(1985~1993年)メルセデスベンツ 190E(1985~1993年)

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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