マルケスが盤石の強さを見せる今季を、ドゥカティはどうとらえているのか。第16戦日本GPが行われたツインリンクもてぎで、ドゥカティ・コルセのスポーティングディレクターを務めるパオロ・チャバッティ氏に話を聞いた。

「2017年、2018年と2年にわたり、(ライダーズチャンピオンのランキングは)2番手でした。そして今季も、(ドゥカティ・チームのライダーであるアンドレア・)ドヴィツィオーゾはポイントランキングで2番手につけています。もちろん、マルケスのようなライダーに続いて2番手というのはすばらしいと言えますが、満足できる結果ではありません」
さらに、チャバッティ氏はこう続けた。「バルセロナ(第7戦カタルーニャGP)とシルバーストン(第12戦イギリスGP)の二つのレースについては残念でした。この2戦で40ポイントを失ってしまったんです。この40ポイントを失っていなければ、今もまだチャンピオンシップで(マルケスと)争うチャンスがあったかもしれません」

チャバッティ氏が言う2戦は、現在ポイントランキングで2番手につけるドゥカティのファクトリーチームライダー、アンドレア・ドヴィツィオーゾが転倒リタイアを喫したレースのことだ。カタルーニャGPでは、ホルヘ・ロレンソ(Repsol Honda Team)のクラッシュに巻き込まれた。イギリスGPでは、前を走っていたファビオ・クアルタラロ(Petronas Yamaha SRT)がハイサイド転倒。その直後を走行していたドヴィツィオーゾはクアルタラロのマシンに乗り上げて激しくクラッシュした。ドヴィツィオーゾは頭を打ち、一時的な記憶喪失となったものの、幸いにも大きな怪我はなかった。

もしドヴィツィオーゾがこの2戦でリタイアしていなかったら…。チャバッティさんの“if”はもっともだが、それよりも「“40”ポイントを失っていなかったら」と語っているあたりに、ドゥカティの現状が現れているのではないか。
というのも、レースで優勝したライダーが得られるポイント数は、25ポイント。一方、2位でフィニッシュした場合は20ポイント。つまり、もしもドヴィツィオーゾが転倒せずにレースを続けていたとしてもマルケスに勝つことは難しかった、と言外に述べているのではないか、ということだ。ライバル陣営が2位に甘んじてしまうほど、今季のマルケスは速くて強い。
「マルケスは今季、(単独転倒でリタイアした)オースティン(第3戦アメリカズGP)を除き、すべてのレースで1位か2位でフィニッシュしています。これは信じがたいパフォーマンスです。私はこのようなシーズンを送るライダーを、これまでに知りません。もし私たちが彼に挑戦したいと考えるなら、同じレベルにいなければならないのですが、私たちはそうではありませんでした」

「我々のエンジンは最もパワフルなエンジンの一つです。ホンダはトップスピードで我々とのギャップを詰めてきていますが、(エンジンには)満足しています。それに、ブレーキングもとてもいいですね」
一方で、当然ながらネガティブな面もある。これも以前からドゥカティマシンの課題として挙げられる、コーナリングスピードだ。チャバッティ氏はさらに「路面のグリップが低い状況で苦しんでいます」とも付け加えた。

「すべてのサーキットのすべての状況で、チャンピオンシップを争う戦いをするための改善が必要なのだと思っています」と語るチャバッティ氏。今後、ドゥカティはどのようにして王者マルケスとホンダに挑んでいくことになるのだろうか。