ドゥカティ転換期…V4とムルティストラーダ 本社ディレクター[インタビュー]

V4エンジンを積んだストリートファイター
  • V4エンジンを積んだストリートファイター
  • ドゥカティ・モーターホールディング コミュニケーションディレクターフランチェスコ・ラピザルダ氏
  • ムルティストラーダは通算10万台生産を達成
  • スーパーバイク選手権では開幕から12連勝したドゥカティチーム
  • ドゥカティ・モーターホールディング コミュニケーションディレクターフランチェスコ・ラピザルダ氏
  • フランチェスコ・ラピザルダ氏(左)五条秀巳さん(ドゥカティ・ジャパン広報、中央)佐川健太郎氏(右)
  • スーパーバイク選手権では開幕から12連勝したドゥカティチーム
  • MotoGPにも継続的に参戦しているドゥカティチーム

今年はドゥカティが攻めている。スーパーバイク世界選手権デビューと同時に圧倒的な走りで勝利を重ねた『V4パニガーレ』と、その血を受け継ぐ新型『V4 ストリートファイター』登場への期待が高まる中、『ムルティストラーダ』が累計生産台数10万台を達成するなど勢いに乗る。本社コミュニケーションディレクターのフランチェスコ・ラピザルダ氏を招き、ドゥカティの今と未来について聞いた。

ドゥカティ・モーターホールディング コミュニケーションディレクター
フランチェスコ・ラピザルダ氏

ドゥカティ・モーターホールディング コミュニケーションディレクターフランチェスコ・ラピザルダ氏

ジャーナリストを経て、アプリリアでコミュニケーションディレクターとして活躍。その後、FIFAで日韓ワールドカップのディレクターなどを歴任。2003年よりドゥカティ入社。現在はレース部門も含めてドゥカティブランド全般のコミュニケーション戦略を担当している。

厳しい日本のマーケットで地位を確立することが大事

フランチェスコ・ラピザルダ氏(左)五条秀巳さん(中央)佐川健太郎氏(右)

イタリアの名門ドゥカティはスポーツ系の大排気量モデルに特化した、ある意味でエキセントリックなブランドである。そこでまず聞きたいのは、ドゥカティから見た日本のマーケットの位置づけや期待値などだ。

「日本のマーケットは強力な国産4メーカーの本拠であり、加えて海外メーカーも含めて鎬を削る大変競争の激しいところです。我々のシェアは小さいですが、だからこそ厳しい日本の中でポジションを確立していくことが重要と考えています。単なるインポーターではなく現地法人化している理由もそこにあります」とラピサーダ氏。かつて別の仕事で日本に長く滞在していた時期もあり、日本には特別の想いがあるようだ。

10月23日ワールドプレミアで「V4ストファイ」の全容公開!?

さて本題だが、いよいよ11月初旬に迫ったEICMA2019でドゥカティはどのような出展を予定しているのだろうか。また、そこでアンベールされるであろう新型V4ストリートファイターの発売時期、その他ニューモデルの展開についても知りたいところだ。

「すでに公表していますが、EICMAの12日前、10月23日にリミニで開催される『ドゥカティワールドプレミア』ですべての2020ニューモデルをアンベールします。ひとつはV4のストリートファイターですが、それだけではありません。ドゥカティのプロダクトはスタイルと洗練、そしてパフォーマンスという三つの柱に沿ったものであり、その中にはスポーツ系以外のいくつかのモデルも含まれます。ここで話せるのはそこまでですが、楽しみにしていてください」

ドゥカティワールドプレミアは10月23日に開催され、インターネットでライブストリーミングにより見ることができる
ちなみに10月23日のワールドプレミアはWEBやSNSを通じてライブストリーミングとして公開されるそうだ。日本では当日の夕方6時30分からスタートされ、タイミング的にも見やすいはずなので是非現地の興奮をそのまま体験してみてほしい。なお、V4ストリートファイターの発売時期について現状ではイタリア本国を含めて未発表とのこと。リミニでほぼ全容が明らかになると思うが、最終的なストリートモデル発表までは少し時間がかかりそうだ。

累計10万台達成のムルティストラーダが転換点になった

ムルティストラーダは通算10万台生産を達成

今年9月にムルティストラーダの累計生産台数が10万台に達したと発表されたが、そこまで売れた理由について、また、最近のアドベンチャーブームについてどう考えているのだろうか。

「ムルティストラーダは今でこそアイコニックなモデルになりましたが、元々ドゥカティになかったファミリーです。転換点は2010年に登場した新型の水冷Lツインシリーズでしょう。4バイクスin1をコンセプトに全く新しい発想で作ったモデルで、ライディングモードや電子制御サスペンション、TFTパネルで一元管理されたダッシュボード、ブルートゥースキーなどドゥカティの新たな挑戦は新型ムルティストラーダから始まりました。

カテゴリーとしてはデュアルパーパスですが、我々にとってはスポーツバイクであり、サーキット走行も本気で楽しめるもの。一方ではエンデューロ志向に対応した19インチモデルを用意し、エンジンも950ccから1260DVTまで作り分けています」

コスパにシビアな欧州で認められた信頼性

パイクスピークで峠道を駆け上がるムルティストラーダ

「世界中でムルティストラーダが愛されている理由については、アドベンチャーブームの盛り上がりもたしかにあるでしょう。特にEU体制になった欧州では、国境を越えてあらゆる道を走破していく長距離ツーリングの需要が高まっています。

また、手前味噌ではありますが「世界で一番美しいバイク」の賞をいただくなど、多くは武骨な形が多いアドベンチャーの中で、より美しくセクシーな新しいコンセプトのモデルを作ったことが評価につながったのでは。もちろん、走りのパフォーマンスとともに信頼性を高めたことも大きい。新型ムルティストラーダではエンジンのマイレージも大幅に伸ばしました」

ムルティストラーダはたしかに高価なモデルではあるが、その分のコストパフォーマンスの高さも評価されたようだ。特に欧州のライダーは走る距離も速度も非常にハイレベルで、信頼性についても相当シビアだそうだ。ドゥカティの年間販売台数が5万5000台程度と考えたとき、ほぼ9年で累計10万台という数字は凄いことだ。実は今世界中で最も売れているドゥカティは、看板スターのスーパーパイクではなく、昨年25周年で30万台達成したモンスターでもなくはムルティストラーダなのだ。

V4ムルティストラーダはどうなるのか!?

そして、最近気になるのが2021発売予定のV4ムルティストラーダである。果たしてどんなバイクになるのか興味は尽きない。やはりV4パニガーレ系のエンジンを搭載するのだろうか。

ドゥカティ・モーターホールディング コミュニケーションディレクターフランチェスコ・ラピザルダ氏
「初代の空冷から水冷Vツインに続き、さらに第三世代としてV4搭載のムルティストラーダも計画しています。詳しいことは話せませんが、2010年に新型ムルティストラーダがデビューしたときを思い出してみてください。そのときもスーパーバイク系の水冷Lツインがベースになっていました。ただし、求められる性能は異なるため、エンジンレイアウトは同じV4でもそのキャラクターは大きく変わるはずです」

V4ムルティストラーダはいずれにしても2021年モデルとなるはず。先の話にはなるが楽しみにしたい。

V4投入で快進撃、完璧すぎた今シーズン

スーパーバイク選手権では開幕から12連勝したドゥカティチーム

ドゥカティは昔からレースに積極的なことで知られるが、それは何故なのか。

「ドゥカティはレースで得られた知見やノウハウを市販モデルへダイレクトにフィードバックするのがポリシーです。いわばレースと市販車は直結している。一例で言うと、他メーカーではエアバルブなどの機構はレーサーだけに使われているスペシャルだが、ドゥカティの場合はすべて同じデスモ。市販車とレーサーが近く、レースでの先行開発した技術を還元できるメリットが大きいと我々は考えています。

もちろんイタリア人なのでレースが好きだし出るからには勝ちたい。特に本社があるボローニャ県はモーターバレーと呼ばれ、フェラーリ、ランボルギーニ、マセラッティなど世界で一流と言われているモーターブランドはすべてボローニャの出身です。地域性もあると思いますが、ボローニャの人々はチャレンジ好きです(笑)。

MotoGPにも継続的に参戦しているドゥカティチーム
また、レースはマーケティングやコミュニティツールとしても重要。コミュニティを形成する上でライダーやチームだけでなく、ファンの皆さんとパッションを共有できるレース活動は欠かせないものですし、いかにエモーショナルなものなのかをレースを通じて伝えることもできる。もちろん、レースを通じて性能や信頼性などもアピールできます」

ドゥカティにとってレースは単に勝つことだけでなく、マーケティングツールとしても有効ということだ。レースと言えば、特に今年は新規投入されたV4パニガーレのスーパーバイク選手権での活躍が目立った。前半戦は開幕から12連勝という破竹の快進撃だったが、その理由についても聞いてみた。

スーパーバイク選手権では開幕から12連勝したドゥカティチーム
「完全に新しいバイクでの挑戦だったので去年までとは単純比較できないが、ここまでうまくいくとは思っていませんでした。バイクも速かったし、完璧すぎた。パウチスタのライディング能力も注目されているが、デイビスも含めライダーもよくやってくれたと思う。後半戦は苦しい戦いもあったが、そこでまた一勝できたのが大きい。今年はチャンピオンシップには追い付けないかもしれない(※注)が、日々進化していることは間違いない。勝利へのストラテジーですか? ポールを獲ってあとは優勝するのみですよ(笑)」

※2019年間タイトル2位を獲得。

Lツインも継続するが、小排気量やEVは未知数

ドゥカティブランドの中長期で展開、方向性についても聞いてみた。スーパーバイクは今後V4に集約されていくのか、今後どのカテゴリーに注力するのか、小排気量モデルやEVなどの可能性について。

ドゥカティ・モーターホールディング コミュニケーションディレクターフランチェスコ・ラピザルダ氏
「小さい会社ながら成長戦略は必要と考えます。9年間連続で業績は伸ばし続けてきましたが、台数だけではなく利益を上げていくことが必要。中国など新たなマーケットの開発もやりつつ、その中で本物のパッションを持った人がビジネスに関わっていくことが大切と思っています。Lツインも続けていきます。Lツインならではの楽しさもあるし、我々にとってLツインは今後も大事なエンジンであることに変わりはありません。異なるスタイリングとキャラクターによって棲み分けしながら両方とも育てていきたい。

またカテゴリーについては現在9つのファミリーを持つに至りましたが、それも常にアップグレードしていく必要があります。EICMAには毎年5~6モデルを出し続けていますが、この会社の規模としては大変なパッションがないと続けられない。V4が成功したといっても留まっていてはいけないのです」

モーターサイクルジャーナリスト 佐川健太郎氏
最近は海外メーカーも新興国向けに小排気量モデルを開発する例が増えてきたが。また、EVの可能性についてはどう考えているだろう。

「今のところ、小排気量モデルについては考えていません。我々はあくまでもプレミアムなスポーツブランドにこだわりたいですし、ドゥカティが築いてきたアイデンティティや伝統を生かしていきたいのです。

また、EVに関してはたしかに業界して注目していくべきと思っているし、実際に大学との共同研究も始めています。ただ、現状ではモーターよりバッテリー性能が問題で、ここ5~6年はラインナップとしては難しいと思っています。

MotoGPにも継続的に参戦しているドゥカティチーム
これが劇的に変わって軽量小型で高性能なバッテリーが出てきたら話は別かも。現状でいくらパワーがあって最高速が出てもバッテリー重くアジリティが出せなければ我々の求めるリアルなバイクではありません。ドゥカティではガソリンエンジンでも常に“いかに軽く作るか”を研究してきました。ただ、速ければ良いというものではないのです」

エンターテイメントカンパニーでありたい

最後にラピサーダ氏が考えるドゥカティの魅力について聞いてみた。

「我々は情熱をもってバイクを作っています。エキサイティングで美しく、信頼性の高いバイクを作っていきたい。そして、ドゥカティはバイクを作るだけの会社ではなく、エンターテイメントカンパニーでありたいと思っています。

製品が一流であることはもちろん、お客様とのコミュニケーションを大事にして良い関係を築くことが大事です。クロージングなどのファッションも含め、メイド・イン・イタリーの強みを生かしていきたい。それは美しいものを作るということとイコールの意味。そこが大事ですね。」

ドゥカティ・モーターホールディング コミュニケーションディレクターフランチェスコ・ラピザルダ氏

《佐川健太郎》

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