小田急MaaSアプリ…社長「あえて小田急色を出さないことで他社も使いやすくした」

MaaSアプリ「EMot」をアピールする小田急電鉄関係者。右から2人目が星野晃司社長
  • MaaSアプリ「EMot」をアピールする小田急電鉄関係者。右から2人目が星野晃司社長
  • 小田急電鉄の星野晃司社長
  • 小田急電鉄経営企画本部経営戦略部の久富雅史部長
  • EMotの経路検索画面
  • 箱根フリーパス
  • バス無料乗車チケット
  • 飲食サブスクリプション
  • MaaSアプリ「EMot(エモット)」

小田急電鉄は10月7日、都内のホテルでMaaS事業についての記者会見を行い、10月末からMaaSのスマートフォンアプリ「EMot(エモット)」のサービスを開始するとともに実証実験も行うと発表した。

小田急は2018年3月の東北沢~和泉多摩川間複々線化を機に、さまざまな取り組みを行っている。EMotもその一環で、電車やバス、タクシー、シェア自転車を含めた最適経路の検索が可能で、電子チケットの発行もできる。その際、保有する定期券や購入した電子チケットを考慮した検索結果が表示される。また、新宿駅では飲食店の定額サービスも受けられるという。

「EMotは日々の行動の利便性をより高め、新しい生活スタイルや観光の楽しみ方を見つけられるアプリ。いつもの道が行き方を変えるだけで新しくなる、移動することで心や経験が豊かになって生き方が変わる、という2つの“いきかた”をテーマとしている」と星野晃司社長は説明する。

その開発では、小田急がヴァル研究所の支援で開発しているMaaSの実現に必要なデータ基盤「MaaS Japan」をもとに、日本航空やジャパンタクシー、タイムズ24などと連携して進めた。

「EMotにしても、MaaS Japanにしても、当社の名前を入れなかった。あえて小田急色を出さないことで他社も使いやすくした」と星野社長は強調。その裏には、社会的課題の解決のためには、小田急1社では不可能で、多くの企業を巻き込みたいという狙いが込められている。

また、経営企画本部経営戦略部の久富雅史部長は「マースジャパンを活用すれば、各事業者や自治体が独自性を出したアプリを提供することが可能になっている。手っ取り早くマースのサービスを提供したいのであれば、エモットと連携することもできる」と説明する。

一方、実証実験は観光型MaaS、郊外型MaaS、MaaSと生活サービスの3テーマで来年3月まで行う計画だ。観光型MaaSの実験を実施する箱根エリアでは、電車やロープウェイ、遊覧船などが乗り放題となる「デジタル箱根フリーパス」をEMotのチケットストアで発売。駅や旅行代理店に行ってわざわざ購入する必要がなくなるわけだ。

小田急はこの実験を通して、スマホのみで周遊できるユーザーの体験価値の検証や、オペレーション上の課題の洗い出しなどを進めるそうだ。

郊外型MaaSは、住宅エリアの新百合ヶ丘周辺で実施。小田急グループの商業施設「新百合ヶ丘エルミロード」で2500円以上の買い物をすると、新百合ヶ丘を発着する小田急バスの無料往復チケットをEMot内で発行するというものだ。

また、MaaSと生活サービスでは、飲食サブスクリプションを提供。新宿駅付近(3店)と新百合ヶ丘駅付近(4店)の計7店舗で利用可能な飲食チケットをEMot内で販売する。販売額は10日券が3500円、30日券が7800円。対象は500円ほどの商品で1日1回利用できる。

「これからさらにコンテンツを充実させていく」とは星野社長の弁だが、鉄道会社はどこも沿線の少子高齢化や利用客の減少という悩みを抱えており、MaaS事業に活路を見出そうという鉄道会社は少なくない。今後、鉄道会社によるMaaSのサービス合戦が加速していきそうだ。

《山田清志》

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