マツダの電動化戦略、打ち出す「Well-to-Wheel」その真意とは…第6回[関西]二次電池展-バッテリー大阪- 9月25日開幕

マツダ 執行役員 R&D管理・商品戦略・技術研究所担当 工藤秀俊氏
  • マツダ 執行役員 R&D管理・商品戦略・技術研究所担当 工藤秀俊氏
  • サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030
  • Well-to-Wheel(サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030)
  • マツダ 執行役員 R&D管理・商品戦略・技術研究所担当 工藤秀俊氏
  • REレンジエクステンダーを搭載したデミオBEV(2013年)
  • 「i-stop」を搭載したMZR 2.0DISI エンジン
  • マツダ3 に搭載される「SKYACTIV-X」エンジン
  • マツダ次世代車両構造技術 スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー

2019年9月25日(水)から3日間、インテックス大阪で『第6回[関西]二次電池展-バッテリー大阪-』が開催される。電気自動車(EV)のキーテクノロジーである二次電池の部材から、製造・検査装置や完成品まで、まさに次世代電池の開発に向けた技術商談展だ。

同展の目玉のひとつである専門セミナーの中で、マツダ執行役員 R&D管理・商品戦略・技術研究所担当の工藤秀俊氏が、電動化戦略のロードマップを語る。

日本の自動車メーカーの中で、マツダは電動化から縁遠い存在だと思っている人が多いかもしれない。たしかに現在の日本国内向けのラインナップにはEVのみならずハイブリッド車(HV)もない。こうした中でマツダはどのように電動化を進め、二次電池を活用していくのか。

「Well-to-Wheel」は電動化の否定ではない

「当社は2007年に『サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言』、10年後の2017年に『サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030』を発表しています。ちなみにZoom-Zoomとは、2002年から展開を始めたブランドメッセージで、「ブーブー」というクルマの走行音を表す英語の子ども言葉です。幼い頃に多くの人が感じる、動くものへの憧れを大事にしたいと考え使い始めました。マツダは走る喜びと優れた環境は二者択一ではなく、両立できると考えており、それを明文化したのが2つの宣言となります」

ここでは興味深い言葉を見ることができる。まず2007年の宣言では「ビルディングブロック戦略」を打ち出した。特定の地域にしか適合できない技術ではなく、グローバルで展開できる技術こそ地球環境に貢献するとの考えから、まず内燃機関のCO2排出量を下げることで全体での削減割合を大きくし、そこに電動化技術を徐々に導入していくという戦略である。

Well-to-Wheel(サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030)
続いて2017年には「Well-to-Wheel」という言葉を前面に出した。Wellには「井戸・鉱泉」という意味がある。つまり燃料採掘から車両走行までという意味だ。本質的なCO2総排出量削減には「Tank-to-Wheel(燃料タンクから車両走行まで)」だけではなく、エネルギーの採掘・製造・輸送段階も考慮することが大事とマツダは考えた。これがWell-to-Wheelという視点だ。

原料の採掘から排出までをトータルで考えるというこのWell-to-Wheel、電動化を否定するメッセージと捉える人がいるかもしれないが、工藤氏はそうではないと説明している。

「例えば北欧のノルウェーなど、再生可能エネルギーによる発電が多い地域にはEVが向いていますが、火力発電のような化石燃料に頼る発電が多くを占める地域では、EVに切り替えてもCO2排出量は大差ありません。ただしそんな国であっても大都市では、大気汚染防止のためにEVを導入するのは正しいことです。適材適所で考えることが大切です」

2019年6月に経産省が発表した乗用車の新たな燃費基準値等では、エネルギー消費効率(燃費値)の算定方法として、新たに対象となるEV・HVの燃費値とガソリン自動車等の燃費値を比較可能とするため、「Well-to-Wheel」で評価することが提示されている。欧州委員会のレポートでも、Well-to-Wheelで比べると必ずしもEVの環境性能は高いわけではないという報告もあるそうだ。

2030年に50%のCO2を削減する

マツダ 執行役員 R&D管理・商品戦略・技術研究所担当 工藤秀俊氏
ところでサステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030では、2010年比でCO2を2030年に50%、2050年には90%削減する目標を掲げてもいる。思い切った数字だが、どのように達成を目指すのか。工藤氏は次のように解説した。

「コアは内燃機関の効率を上げることです、そこに電動化技術を組み合わせていきます。エンジンの効率が高ければモーターやバッテリーのサイズを小さくできます。これをビルディングブロック戦略の順番で手掛けていくつもりです」

工藤氏によれば、『マツダ3』に搭載したSKYACTIV-Xエンジンは最終進化形ではなく、ガソリンエンジンの第2ステップだという。現状でも燃焼によって生じた熱の逃げに対する対策は不十分で、次のステップでそれを低減していきたいとのこと。ディーゼルは2020年に第2ステップに相当する新エンジンを出すとのことだ。

もっともディーゼルについてはC02削減について車両で賄うのは半分であり、残りはバイオ燃料で充当すべく、産官学連携組織のひろしま自動車産学官連携推進会議の一員として研究開発を進めている。天ぷら油やミドリムシを燃料とするもので、2020年をめどに広島でバイオディーゼルを使って乗用車を走らせる計画があるという。

マツダならではの電動車両とは

「i-stop」を搭載したMZR 2.0DISI エンジン
電動化戦略では2009年に導入したアイドリングストップ「i-stop」がルーツと言える。

「環境対策として価値があると考え、ビルディングブロック戦略の第一弾として採用しました。SKYACTIVテクノロジーと融合させた2011年の『デミオ』では、当時の10・15モード燃費で30km/リットルを実現しています。当時、日本車の電動化はハイブリッド(HV)が主力で、アイドリングストップは目立ちませんでしたが、他とは違う道を行くところがマツダらしさであり、その個性が発揮されたと言えます」

さらに2012年には「デミオEV」、翌年には「アクセラハイブリッド」も出している。デミオはフリート向けの100台限定生産だったが、EVの制御技術の勉強に役立ったとのこと。アクセラハイブリッドもエンジンとモーターの協調制御、ブレーキの感触などでマツダらしいフィーリングを追求しており、今後の電動化で生きるだろうと話していた。

「マツダはトヨタやデンソーとともにEV C.A.Spiritという研究開発会社も結成しましたが、ここではマツダ独自のものづくりプロセスであるコモンアーキテクチャーを取り入れています。軽自動車からトラックまでのEV基盤技術を一括で企画開発し、共通の基本構造から複数の車種を出していく体制は、現状のEVマーケットの状況にフィットすると考えています」

REレンジエクステンダーを搭載したデミオBEV(2013年)
では電動化技術で重要となる二次電池についてはどうだろうか。

「電池そのものの生産は考えてはいませんが、始動用12Vについてはリチウムイオンタイプの電池を共同開発しています。車載ということで振動に強く燃えにくいことなどに配慮しており、マイルドHVも視野に入れています。駆動用二次電池については、充電時間、高密度化、リスク低減などの面で進化を続けてほしいと願っています」

マツダとしては、EVをはじめとした電動化車両の本格普及に向けては、「まずは二次電池の基本性能向上を望みたい」というスタンスだ。一方でEVやHVの制御技術では相応の経験を持っている。電動化車両が主役の一角を占めるようになった暁には、電池の最適化を追求したマツダならではの「走りの楽しさ」を持った電動化車両が登場する、そんな期待を抱かせた。

マツダ 執行役員 R&D管理・商品戦略・技術研究所担当 工藤秀俊氏

工藤氏は、9月25日からインテックス大阪で開催される「第6回[関西]二次電池展-バッテリー大阪-」の特別講演「最新電池が加速させるEVシフト最前線」の中で、「サステイナブルZoom Zoom宣言2030に基づくマツダの電動化戦略」と題して登壇する。

講演では長期技術ビジョンに基づく環境技術および電動化戦略について、より詳しい内容や新たな取り組みが語られる。

>>> マツダが登壇する「特別講演」の詳細はこちら!(無料)

■第6回[関西]二次電池展 -バッテリー大阪-
会期:2019年9月25日(水)~9月27日(金)10:00~17:00
会場:インテックス大阪
主催:リード エグジビション ジャパン株式会社
公式サイト:https://www.batteryjapan.jp/

《森口将之》

特集