【MaaS】日本版MaaSはどうあるべきか…国交省 公共交通政策部 小川主査[インタビュー]

国土交通省 総合政策局 公共交通政策部 交通計画課 の小川洋輔主査
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様々な交通手段を利用者のニーズに応じて柔軟に提供するーーーMaaSの根幹をなすコンセプトにおいて、事業横断的なグランドデザインは不可欠である。その役割を一義的に担う官公庁はどのように考え、活動しているのか。国土交通省において公共交通政策を扱う、国土交通省 総合政策局 公共交通政策部 交通計画課 の小川洋輔主査に聞いた。


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高齢化によるモータリゼーションの弊害


---:日本の公共交通においては、解決が難しい構造的な問題が存在しますね。

小川氏:鉄道・バスも含めた公共交通全般について、様々な課題が表面化しています。そのなかには、鉄道だけ、バスだけを見ても解決できない課題も浮上しています。

このような背景には、日本全体の話として少子高齢化という状況があります。これまで日本においては、モータリゼーションの発現とともに、自家用車を前提とした都市の在り方、社会設計がなされてきました。

しかし高齢化とともに高齢ドライバーの数が増加し、70歳80歳になっても自分で運転しなければいけないという状況が発生するにおいて、どのような公共交通のあり方があるのかということを考えなければなりません。

---:なるほど、高齢者など自律移動が困難な方への移動手段を確保しなければならないということですね。

小川氏:はい。一方で交通を提供する側の課題として、バス運転手の人手不足という問題もあります。また利用者の高齢化とともに、運転手の高齢化も進んでいます。若年層の運転手のなり手が減っているのと同時に、以前からの運転手が高齢化し、人手不足が深刻化するという構図です。

またバス会社は経営面でも厳しい状況です。全体の6-7割のバス会社が赤字であり、事業として疲弊しています。バス事業だけでやっていけているのは都内などの一部だけ、あるいはバス以外の事業でなんとかやりくりしているようなところだけです。

---:そこまで厳しい状況なんですね。

小川氏:バスの乗客が減ることによる収入の低下や、人件費や車両代など一定のコストがかかること、車両の入れ替えで一時的に大きな費用が嵩むことなどが原因です。

諸外国を見ると、公的な主体がバスや鉄道を運営していることも多いです。例えばニューヨークでは、地下鉄もバスも公的機関が一体的に運営しています。いっぽうで日本の場合は、民間の事業者が運営していることが非常に多いです。

この場合、民間のビジネスという側面がある一方で、公共交通として、地域の足として維持されるべき、という側面もあるため、国として、公共交通の維持・確保が必要だという考えのもと、赤字のバス会社に対する支援を行っているという現状もあります。

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インバウントの活用事例


---:高齢化によって利用者が減る一方で、インバウンドによる利用増という現象もあるようですね。

小川氏:はい。訪日外国人数は、2011年の622万人から、2017年には2869万人と4倍近くと、爆発的に増えています。海外からの観光客の方が地方に足を運び、地元のバスや公共交通を利用するという形で新たな需要が生まれています。それをどうしたら公共交通の維持・運営につなげていけるか、ということがいまの論点です。

---:施策の具体的な事例はあるでしょうか。

小川氏:はい。中部地方で訪日外国人向けの交通ICカードを作って、セントレアに来た外国人に対してICカードを訴求し、割引などの観光特典を付与するといった事例があります(セントラルジャパントラベルカード)。

公共交通機関の利便性向上はもちろん、慣れない外国人が(券売機などで)列を作って時間がかかる、といった現状の課題も解消される取り組みです。

Whimとは違う日本型MaaS


---:公共交通政策部としての取り組み事例はありますか?

小川氏:はい。「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」を起ち上げています。大学や研究者などの有識者と、公共交通政策部だけでなく、省内の都市局や道路局などインフラを担当している部門も交えて議論しています。さらに、体系的かつ長期的に交通のあり方を考える場合には、交通系の部門だけでは限界があるので、自動車局や鉄道局も参加しています。

懇親会では民間事業者へのヒアリングも行っています。交通事業者様はもちろん、新たなモビリティサービスに関わる事業者様にも積極的にヒアリングを行っていきます。

---:懇談会の掲げるテーマについては、フィンランドの「Whim」がモデルケースなのですか?

小川氏:素晴らしいモデルケースではありますが、そのまま日本に持ってこれるわけではありません。例えばヘルシンキでは、鉄道・バス・タクシーの事業主体の数がそもそも少ないのですが、日本だとそれぞれ多数存在しています。そのような前提の違いをふまえたうえで、日本型MaaSとしてどういったことが必要なのか、どういった形で連携していくのかということを議論することが大事だと思っています。

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《佐藤耕一》

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