ジェイテクトの新製品体験レポート…高剛性ハブ、新型トルセンLSD「タイプD」

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高剛性ハブとノーマルハブの比較試乗はトヨタ オーリスで行った
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  • 高剛性ハブとノーマルハブの比較試乗
  • 新型トルセンLSD「タイプD」装着車とオープンデフとの比較試乗は旧型トヨタ オーリスで行った
  • 高剛性ハブとノーマルハブの比較試乗
  • 新型トルセンLSD「タイプD」装着車とノーマル(オープンデフ仕様)との比較試乗は旧型トヨタ オーリスで行った
  • 新型トルセンLSD「タイプD」装着車とノーマル(オープンデフ)との比較試乗
  • 高剛性ハブのカットモデル
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ジェイテクトは7月12日、同社の伊賀試験場(三重県伊賀市)でメディア向けに新製品の技術紹介と体験会を開催した。レポート後編のテーマは、新開発の高剛性ハブ、そして新型トルセンLSD「タイプD」。いずれも「走りの楽しさ」を追求した製品だ。

■高剛性ハブ…横剛性アップで、走りをより楽しく

ハブはタイヤ&ホイールだけでなく、車両全体を支える重要部品であり、軸受事業を大きな柱とするジェイテクトにとっては主力商品の一つだ。従来、ハブに求められたのは、長寿命化、ユニット化などによる軽量化、メンテナンスフリー化、近年は(ABS等の)センサー内蔵化、低トルク化(低フリクション化)など。一方で、今回の高剛性ハブは、サイズや重量はそのままに、横力に対する剛性をミクロン単位で高めることで、コーナリングやレーンチェンジする際の応答性や追従性を高め、「走りの楽しさ」を向上させるというもの。なかなかマニアックな製品だ。

効果を体感するため用意されたのは、2台のトヨタ『オーリス』(今年3月に販売終了しており、すでに現行モデルではない)。1台はノーマル車で、もう1台は高剛性ハブ仕様だ。まずはノーマル車から試乗。オーリス自体は操縦性で定評があるモデルなので、ノーマルでも気持ちよくコースを走ることができる。直線路でのレーンチェンジも難なくこなす。

高剛性ハブとノーマルハブの比較試乗
次に、高剛性ハブ仕様に乗り換えて、同じようにレーンチェンジを試す。劇的な違いはない……と最初は思ったが、それでもノーマルハブ仕様よりステアリングを躊躇なく切り込めるほか、揺り戻しも少なく、当て舵も心なしか小さくなった気がする。例えるなら横剛性の高いスポーツタイヤに履き替えた時のような感じ。開発者によれば0.2~0.3G程度の横Gでも差を体感できるという。オーリスのようなFF車でもいいが、できればFR車のトヨタ86/スバルBRZあたりで試してみると楽しそうだ。

タイヤやサスペンションはそのままで、バネ下重量も増えず、ハブだけで操縦性が高まるなら言うことなしだが、当然ながらコストはノーマルハブに比べて高めとのこと。あとは完成車メーカーがどう評価するかだろう。スポーツモデルで一気に広まる可能性もある。

新型トルセンLSD「タイプD」装着車とノーマル(オープンデフ仕様)との比較試乗は旧型トヨタ オーリスで行った
■トルセンLSD「タイプD」…FF車への採用を狙う

この日、最後に体験したのは、新型トルセンLSD「タイプD」。トルセンとはジェイテクトの商標で、歯車(ギア)を使ったトルク感応型LSDのこと。

また、ひとくちにトルセンLSDと言っても、プラネットギアとヘリカルギアを組み合わせたタイプBや、同じくプラネットギアを使って不等配分を行うタイプCなどがあり、タイプBはトヨタ『86』/スバル『BRZ』などの主にFRスポーツ車に、タイプCはトヨタ『ランドクルーザー』やポルシェ『カイエン』、アウディの「クワトロ」モデル(『A4』以上の縦置エンジン車)といったフルタイム4WD車のセンターデフに採用されている。

これらに対して新開発のタイプDは、主にFF車のフロントアクスルに搭載することを目的としたものだ。

従来のタイプBはFR車だけでなく、一部のFF車(プジョー『208GTI』や『308GTI』など)にも採用されているが、歯車の構造上、軸長が長めだった。それに対してタイプDは、新開発の複合プラネットギアや新噛み合い構成の採用によって念願の小型軽量化を実現(全長は23%減、重量は17%減)。これによってスペースに余裕のないFF車への搭載性が高まったほか、低トルクバイアス比(TBR)も可能になったことで操舵感がナチュラルになり、一般的なオープンデフとの置き換えが容易になった、というのが売りである。

新型トルセンLSD「タイプD」(手前)は、従来の「タイプB」(奥)より軸長が大幅に短い
ちなみにタイプDのTBRは、加速時が1.8、減速時が2.2。ロック率は加速時が29%、減速時が37%。減速時が高めなのは、低ミュー路旋回におけるスロットルオフ時の安定性向上のためだという(1.7から調整可能とのこと)。

用意された試験車両は、旧型オーリスのノーマル車(オープンデフ仕様)とタイプD装着車の2台。まずはノーマル車で定常円旋回を行う。旧型オーリスとは言え、散水されたスキッドパッドでも限界は高く、アンダーステアも小さめで、それなりに楽しく走れる。

次にタイプD装着車を走らせる。なるほど確かにLSDの効きはマイルドで、高TBRのLSDを装着したFF車にありがちなトルクステアや緊張感はまったくない。これならワインディングやサーキットでも安心して乗れそう。それでいてクルマをコントロールしている感は明確に上で、LSDならではの路面を掻く感じも伝わってくる。アンダーステアが顔を出し始める時の旋回速度も明らかにこちらの方が高く、何より運転が楽しい。

最近のFF車は一部の高性能車を除けば、ほとんどがオープンデフだ。また、電子制御が当たり前になり、「ブレーキでつまむ」ことで疑似LSD効果も簡単に得られるようにもなった。しかしここに来て、FF車用LSDに注目し、タイプDのように従来LSDのネガをつぶしたものなら需要があるはず、と考えたジェイテクトの読みが面白い。ただしその背景には今後、4WD車の電動化が進めば、プロペラシャフトと共にセンターデフ(トルセンLSD「タイプC」)の需要は減っていくだろうという危機感もあるのだが。

タイプDに関しては2021年から量産予定だという。例えばトヨタのTNGA車やスズキのスイフトスポーツなど、すでに走りで定評のある国産FF車にタイプDが採用されれば、確実にその走りは変わるだろう。完成車メーカーの英断に期待したい。
《丹羽圭@DAYS》

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