【トーヨー ウィンタートランパスTX 試乗】まさに最新は最良、冬のミニバン・SUVの安心を買うなら…桂伸一

試乗記 国産車
桂伸一氏がトーヨーのスタッドレスを乗り比べ。右が新製品の「トーヨー ウィンタートランパスTX」
  • 桂伸一氏がトーヨーのスタッドレスを乗り比べ。右が新製品の「トーヨー ウィンタートランパスTX」
  • トーヨー ウィンタートランパスTX
  • トーヨー ウィンタートランパスTX
  • トーヨー ウィンタートランパスTX
  • トーヨー ウィンタートランパスTX
  • トーヨー ウィンタートランパスTX
  • トーヨー ウィンタートランパスTX
  • トーヨー ウィンタートランパスTX

気温が7度を下回ると、ドイツではウインタータイヤを装着しなければならない。この時期にサマータイヤのままで事故を起こすと、保険金が支払われない可能性もある。つまり自己責任の重要性である。

自分の身は自分で守るものだが、同時に自分が安全に走行できなければ、それは他人に危害を与える事になる。裏返せば、タイヤの不備からスリップしたクルマにより自分が被害者になると言う恐れもある。

日本の主流はスタッドレスタイヤ。「最新は最良のスタッドレス!!」と言っていいだろう、トーヨータイヤの新作に試乗した。

◆ミニバン専用のスタッドレス

スタッドレスを装着していても、例えば加速でタイヤが空転した場合は、アクセルの踏み込みを抑えるなど慎重に操作すれば済む。しかし減速、つまりブレーキを踏んだ途端タイヤがロックし、ABSが介入して制動距離が延びて、コーナーが迫る、あるいは前車に追突する勢いの急接近!!

この恐怖を一度でも経験すると、冬の道路で、タイヤに関心を持たない訳にはいかなくなる。ましてやそれが家族を乗せての走行中、となると自分ひとりの時以上にハラハラ、ドキドキするものだ。

いまやファミリーカーの主流はハイト系車輌。いわゆるミニバンを含むSUV、CUVになるが、背の高い車輌でも安定走行が得られるように、トーヨータイヤでは乗用セダンとは別に、専用タイヤコンセプトを打ち出している。

ミニバン専用、として『トランパス』の名称に聞き覚えはあるだろう。その冬期用モデルの新商品が『ウィンタートランパスTX』である。スタッドレスタイヤとして従来の『ウィンタートランパスMK4α』の進化版だが、もちろん姿カタチ構造全てが全く異なる新たなタイヤである。

新商品トランパスTXの狙いは3つ。

「しっかり止まる(アイス制動性向上)」
「ふらつき低減(アイス路面からドライ路面でのレーンチェンジでの安定性向上)」
「しっかり長持ち(耐摩耗性能、均一摩耗)」

と、誰もが願う当然の項目。

長持ち=耐摩耗性は試乗では確認しようがないが、元々優れていたMK4αと、耐偏摩耗性、摩耗ライフ性能は同等だとメーカーは公表している。

◆「MK4α」との走りの違いは

個人的にスタッドレスタイヤの試乗ではあえて、タイヤに無理難題を突き付ける。テストコースの路面状況は、安定して比較するために同一条件に整えている。つまり実際の道路環境に対して、路面状況が良過ぎるのだ。

なので、轍、氷上の表面が溶けて磨かれたミラーバーンになっていれば、そこで滑り具合を確かめ、ドライ路面があれば高速急転舵を与えて、姿勢変化や安定性などを探る事にしている。

好都合なのは従来のMK4αとTXで比較試乗ができた事。そう、タイヤの試乗テストとは、比較しなければ判らないものだ。いくら記憶のなかに現状のタイヤの印象が深く刻まれていたとしても、その時の路面状況、気温、同一車種で比較=乗り比べてどうか!?そこで両者の違いが明確になる。

冬期でもっとも重要な性能は「アイスブレーキ」だが、TXは体感的に路面を捉えている感触はあるが、明確に優れている、とまでは断言できない。しかし制動距離を計測するためのパイロン本数で数えると確実に短く停止している。

明確な違いは操縦性で、ステア操作した際の応答性の確かさと、ふらつきの低減である。パイロンスラロームを行なう速度を次第にアップする。と、TXが80km/hでクリアできる同じ状況をMK4αではすでに60km/hを越えるあたりから不安感を覚える。70km/hに達すると右~左はクリアしても、その次はオーバーラン!!曲がり切れない。どころか明らかにオーバースピードで、自分で操縦しながら恐怖心が湧く。というほど違う。

ステア操作通りタイヤは曲げられるが、瞬間に捻れ、撓み、ヨレ感からの応答遅れがある。グニャ感とも言えノーズがフラフラ、狙ったポイントにノーズが向かず、パイロンに近寄る事すらできない。しかも遅れてリアが横流れ!!

聞けば、タイヤ単体の剛性としてはMK4αのほうが遥かに高いという。では何故この違いがあるのか、TXは剛性としては低いが、舵角に対していかに滑らかに自然に撓(たわ)むか、全体的に撓ませるかが違う。

MK4αは、剛性が高い分、舵角を受けて、ある領域までは撓まないが、そこを越えた瞬間に屈曲的に撓む。で、そこがグニャ感、ヨレ感として感じ、実際に舵の効きが、感覚としてモ実際にも悪い。

TXはステア操作した際に全体的に自然に撓ませる事で、接地変化を抑え、特にリアを安定させる事で不安がなく、剛性“感”を高く感じさせる事につながる。

ヒトの感覚はいい加減なモノだ、と新旧の剛性と剛性感の違いから知る。

TXは操作した事に対して素直に応答する。リアを安定させ、フロントで曲げに行く。背の高いミニバンで安心走行が叶う事は間違いない。

最新は最良であった。

桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、 読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマー ティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。

《桂伸一》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集