【WTCC】ホンダ・道上 20年ぶりのマカオ、その熱き闘いの裏側…密着レポ[前編]

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WTCC マカオラウンド
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WTCC(世界ツーリングカー選手権)にホンダのワークスドライバーとして『シビック タイプR』(シビックWTCC)とともに世界転戦している道上龍選手を追ってマカオに飛んだ。

◆伝統レースに盛り上がる市内

初めてのマカオは日本から香港へ約5時間。さらにジェットフォイルで1時間ほどの道のりで、夕方東京を経てばその日のうちに到着できる。フェリーターミナルを出ると、深夜にも関わらずタクシー乗り場は列を成し、我先に乗り込もうとする乗客で溢れ返っていた。カジノの街として有名なマカオ。そんな眠らぬ街の中で1年に一度行われる世界的な市街地レースが「マカオグランプリ」だ。

翌日、ホテルからコースに移動してみると、昨晩とは全くの逆走。到着地はフェリーターミナルだった。マカオに入国し、タクシー待ちをしたその目の前がすでにメインストレートで、朝陽を受けた観客席が目に留まる。マカオグランプリの舞台は正に街のど真ん中。さっきまで使っていた生活道路が、この週末の昼間だけ、レーシングコースとして生まれ変わる。

行われるレースはFIA・WTCCの他、F1への登竜門と言われるFIA・F3世界一決定戦。『NSX』が初めてホンダの名を背負って参加する、FIA・GTワールドカップ。そして2輪のロードレースまで予定されており、観客を飽きさせないばかりかレースの厳しさを肌で感じさせる。以前は日本から多くの観客がマカオを楽しみにしていたと聞くが、今さらながらその魅力を知ることになった。

もっとも、すぐ近くにレーシングサウンドが響き、タイヤの軋み音が聞こえ、鉄が焼ける匂いが届いているのに、その姿をなかなかとらえることはできない。安全のために張り巡らされたガードレールと衝撃吸収ネットがロードサイドを覆いつくし、スポンサーの看板が皮肉にも視界を遮ってしまっている。フェリーターミナルから見えた満席の指定席券を手に入れるか、コースサイドに立つホテルの一室を借りなければ、なかなかレーシングマシンの姿をキャッチできない。このあたりは日本からの観客にとっては、高いハードルになっているのかもしれない。

幸いにしてプレスとして取材できたものの、我々も同様だった。一等地ともいえる観客席には入ることはできず、視界を遮る壁を頼りに街を分断するコースを潜ったり、渡ったりしてようやく生のレーシングマシンを捉えた。

オーバーパスから眺めたコースは、エスケープゾーン、ゼロ。コースサイドには黄色と黒に彩られたガードレースが3段で壁を作り、その上には高いネットが覆いかぶさり、両サイドにはカジノやホテルが視界を遮る。公園には子供が遊具を使って遊ぶ姿もあって、日常の生活感もある。目の前を200km/hオーバーのレーシングカーが走る環境で育った子供たちは、大きくなったらガードレールの内側を走る夢でも思い描いているのだろうか。日本では考えられないレーシングスピードとの距離感に、ちょっとばかりうらやましいと思う反面、我々はもしかしたらぬるま湯の中で育っているのかも? とも感じた。

◆プロとしての仕事こなす道上

そんな厳しい環境の中、道上龍選手は予選7番手と、もてぎからの好調ぶりを伺わせた。

20年ぶりにマカオを走った道上選手は当時走ったF3と比べて、「タイヤむき出しのマシンでは、車両間の接触の怖さがあるが、ツーリングカーはボディサイズや質量による距離感、壁との間合いを取るのが難しい」と話す。ガードレールに接触し、はじき返されるリスクの中でギリギリまで攻め、7位のポジションを手に入れ、20年のブランクは一切感じさせない。

この週末、マシンの仕上がりはよく、チームの戦力に従って「リアウイングを寝かせることで、海側でトップスピードを伸ばしタイムを稼ぎ、山側ではドライバーがタイムロスを最小限に抑えることに集中してドライブした」という。確かに土曜日に行われたレースでは最高速が出るマンダリンコーナー付近で前のマシンを捉え、山側に入っていくリスボアコーナーで並びかけるシーンも見受けられた。

半面、山側の走りは残念ながらモニターでしか見ることが出来ず、コメントを聞く以外にポテンシャルを図ることはできなかったが、終始アンダーステア。つまり、曲がりにくい状況と戦っていたという。「20年前と変わらぬ滑りやすい路面と、山側でのハンドリングの苦しさがあったものの、短い時間でマシンを仕上げることはできたと思う」(道上選手)。世界選手権と20年ぶりのマカオに対するプレッシャーをいささかも感じさせず、チームの戦略通り、山側での走りをまとめ上げ、プロフェッショナルとしての仕事を淡々とこなす。

◆慎重なレース運びで掴んだ“結果”

初日のレースは予選10番手までがリバースグリッドとしてスタートポジションが決まる。ポールポジションを得たチーム同様に戦略通りとなった道上龍選手は、一台がペナルティを受けた結果、3位のポジションからスタート。トップを狙える位置にあったが「アウト側は滑りやすいためマージンをとってスタートした」。結果、順当にポジションをキープ。2周目にはベストラップをたたき出し、2位に接近。「いやー、並ぶまでのリスクは犯さず、前のクルマのミスを誘い出すアクションです」と、レース展開を冷静に読む。

山側で曲がりにくくなっていく状況のなか果敢なアタックを続けるものの、後ろからはポイント争いを行っているボルボのトップが猛追。「ピットからビョークだけは抑え込め! の指示を受け、とにかく山側は何とかしのいで、リスボアの手前マンダリンまでに離していく走りに徹した」。

結果、ボルボを抑え込み途中赤旗終了により日本人初の3位表彰台を手に入れた。「赤旗でレースが終了し3位を手に入れることができホッとしているが、チームメイトのトラブルが原因だけに気持ちは複雑」という。それでもボルボを抑え込みポイントを得たことで、チームを支えた。

おめでとう、の言葉に道上龍選手はようやく笑顔を見せ「上海、もてぎとホンダチームは上向きだったにも関わらず結果は厳しい状況だった。その流れがこの過酷なコースで3位表彰台を得て、貢献できたことがうれしい」と素直に語る。スピード、テクニックが要求され、恐怖との闘いからも逃げることのできないマカオでの戦いに勝ったことで、1年間世界で戦ってきた苦労が報われた。

翌日、日曜のレースは7位からのスタート。上位陣にアタックをかける絶好のポジション。気持ちよくレースを迎えられることを願ったのだが…。(後編に続く)

<協力:ホンダ>
《瀬在仁志》

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