12月2日、中国・香港で開幕する「フォーミュラE 2017-2018シーズン」。開幕前夜、ワークスとして初参戦するアウディのモータースポーツ責任者 ディーター・ガス氏、チーム代表のアラン・マクニッシュ氏、そしてアウディジャパン社長の斎藤徹氏に話を聞いた。◆モータースポーツ責任者 ディーター・ガス氏----:開幕を明日に控えて、今の思いは?ディーター・ガス氏(以下敬称略):我々にとって非常にエキサイティングな時だ。昨シーズンから既にサポートとして関与、明日はまさに全責任を持っての闘いが始まる。レースを完全にオペレートするということで、非常に強い好奇心をもっており楽しみにしている。----:今シーズンの戦いに向けどのような開発を行ってきたか。ガス:シングルギアになり、ギアボックスが大きく変更された。基本的にはパワートレイン、トランスミッション、サスペンションなどすべての分野でマシンを改善しているが、ソフトウェア、システムの開発に特に大きな焦点を当てている。----:ライバルとして注目しているチームは?ガス:バレンシアでのテストで実際にクルマを見たとき、我々も宿題をやったが、他のチームもマシンを改善してきていると感じた。昨年はルノーが非常に強かった。マヒンドラ、テチーターも強いチームなので、始まってみないとどうなるか全くわからない。----:今回の香港のコースはどのように捉えているか?ガス:ミスをしやすいコースだと思う。クルマが跳ねやすいバンピーな道なので、注意しなければならない。小さなミスが重大な結果につながるだろう。集中力を持って挑まないといけない。----:従来の内燃機関で行うレースに比べて、フォーミュラEの面白さはどこにあるか?ガス:EVレースは全く異なるものなので、従来のレースとあまり比較しないようにしている。参加する側もファン(観客)も違う。世界中の都市における中心で行われる点も新しい。電気のモビリティだが、感動的な魅力もあるということを示すもの。新しい文化を作っている最中で、ファミリースポーツの一種と捉えている。----:アウディスポーツにおけるフォーミュラE参戦の意義は?ガス:EVを一般の人たちにもたらすという意味で重要。EVでも早く走ることができて信頼性がおけるということを伝えていかなければならない。(EVは)退屈なクルマだと思われがちだが、そうではないことをここで証明していく必要がある。----:音がない(静かな)レースに魅力はあるのかという意見もあるが?ガス:その点がこれまでと大きく違う点。私自身も音はモータースポーツの重要な要素だった世代だが、10年後、今の若い人が大人になる頃には音のあるなしは関係なくなっているかもしれない。これからの世代の人たちには、それがスタンダードではなくなっていくだろう。◆チーム代表 アラン・マクニッシュ氏----:明日のレースに向けての意気込みは?アラン・マクニッシュ氏(以下敬称略):少しナーバスな気持ちになっているのが正直なところ。色々なシミュレーションや練習を重ねてきたが、やはりレースが始まってみないとわからない部分は多くある。チェッカーを受けて初めて、今までやってきたことが正しいことがわかるだろう。----:ドライバー2名体制での参戦だが、戦略は違うか?マクニッシュ:現在は全く同じ戦略を持って闘う予定。テクニカル面もサポートも同等だ。最終的にはとにかく結果を残さなければいけない。どちらかの順位が上になるが、我々は勝利のためにレースしなければならないし、彼らもプロのドライバーなので覚悟しているだろう。----:実際のレースではどのようにバッテリーのマネジメントを行うか?マクニッシュ:バッテリー管理は気温、サーキットによっても変わってくる。今回の場合、気温はそんなに問題ではないと思うが、まさにストリートサーキットなので、路面状況に注意しなければならない。前回にくらべてもカーブの確度や、表面塗装が微妙に異なる。実際に歩いてみたが、今日はまだサーキットが完成しきっていなかった(笑)。明日早朝また歩いてみて、テクニカルな面をそこから最終調整する。----:マシンにおけるこれまでの課題は解決されているか?マクニッシュ:ドライブトレーンを変更して、一つのシステムとして作り上げテストしてきた。今までのところ信頼性は高い。今回はモーターの制御をリモートプログラムできるようにしている。アウディスポーツの開発者は2000年から『R8』のためにその開発をやってきたので、経験は豊富に培われている。----:フォーミュラEで勝利することにはどういう意義があるのか?マクニッシュ:まずは、我々の技術的能力を証明することになる。ルマンで取り組んできたこと同じで、TDI、ハイブリッド技術など常にその能力を証明してきた。また、EV技術を開発し市販車に反映する。アウディとして初のシングルシーターモデルでの挑戦という意味も強い。そして、市街地で開催されることも重要な点。我々は電動化や持続可能性において直接その都市の人々に訴えかけることができる。実際に車を買う人はここ(都市)にいるからだ。第5シーズン(2018-2019)には日産やメルセデスなど新たなライバルが参戦してくる予定で、強力なライバルになるだろう。その中で競い、勝利を勝ち取っていかなければならない。◆アウディジャパン社長 斎藤徹氏----:今回のワークス参戦の重要性は?WRCやルマンなど、アウディは昔からレース技術を市販車へフィードバックしてきた。これからEVを市販車として出していく中で、レースで電動技術を培って反映する。アウディのモータースポーツに対する取り組みは一貫されている。----:フォーミュラEに対してどのような印象を持っているか。私自身もレースを現地で観るのは初めて。音もないし、スピードも異なるが、市街地でやるのはとても興味深い。サーキットと比べてアプローチしやすいし、観客との距離も近くエンタメ性が高い。これまでは、モータスポーツのコアなファンが時間をかけてサーキットへ行くというイメージが強かったが、一般の人にも目を向けてもらいやすいのが魅力的だ。モータースポーツは車の持っているエモーショナルな部分を伝える重要な役割を果たす。これまでは敷居の高い部分もあったが、新しいファン層が広がり、それが上手くいけば市販車にたいする関心も高まるだろう。このレースの盛り上がりによって、どのくらい新たな車好きが増えるか楽しみにしている。----:市販車の販売にもつながると考えるか?日本では、50代が購買層の中心だがこれから顧客層広げていくためには若い人の認知度を高めていかなければならない。フォーミュラEはその取り組みに一役買うだろう。音がなくても、市街地の走行だと通常のサーキットとは異なるアクションやドラマがあるだろうし、この新しいフォーマットが若年層や女性にとっての魅力になることを期待している。----:アウディジャパンとして日本での開催に対しての思うところはあるか。ぜひ日本でも開催してほしい。(第5シーズンから)日本メーカーも参戦することを決めたようだし、今後さらに盛り上がっていくだろう。これまでWECで毎年富士スピードウェイに来てくれていたけど、今はアウディのワークスが出るレースがなくなってしまった。まだ知名度の低いレースだと思うので、プロモーションの取り組みも注力していきたい。----:アウディがフォーミュラEで活躍することでEVへの期待も高まると思うが、日本への導入におけるビジョンは?2019年に第一弾のEVを日本国内で販売し、その後も2020年から25年にかけてラインナップを拡充する。モータースポーツ活動と足並みを揃えて、アウディ「eトロン」のブランドネームを広めていきたい。アウディのチームは経験も豊富で強いので、きちっと本腰入れてやれば勝てると信じている。ディレクターもDr. ウルリッヒから新しい世代のガス氏にタッチして新生チームで挑戦するが、ドライバーも良い選手を抱えているし、モータースポーツの精神は根付いているので結果を出してくれるだろう。<協力:アウディジャパン>
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