【東京モーターショー2017】コーナリングの楽しさを追求…ルノースポール[マネージャーインタビュー]

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ルノー・スポールカーズジェネラルマネージャーのパトリス・ラティ氏
  • ルノー・スポールカーズジェネラルマネージャーのパトリス・ラティ氏
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  • ルノー・メガーヌRS
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積極的に日本市場で台数を伸ばしているルノー・ジャポン。その大きな柱のひとつはルノー・スポールモデルだ。そこで、ルノー・スポールの責任者が来日したのを機に、同社のこだわりや日本市場の特徴などについて話を聞いた。

◇ロードカーとモータースポーツの人事的交流が重要

----:ルノーのモータースポーツ部門を司るルノー・スポール社はどういった機能を持っているのでしょうか。

ルノー・スポールカーズジェネラルマネージャーのパトリス・ラティ氏(以下敬称略):ルノー・スポールは1976年に設立された会社で、目的は2つありました。どちらもモータースポーツなのですが、ひとつはルマンに勝つことで、これは1978年に達成しました。もうひとつはF1に参戦すること。これは1977年に実現しました。従って今年はF1参戦40周年であり、来年はルマン優勝40周年ということにもなります。

その後ルノー・スポールの名前でロードカーにも関与するようになり、現在はルノー・スポールの名前のもとに、モータースポーツ活動を行うルノー・スポールレーシングと、ロードカーを扱うルノー・スポールカーズの2部門となっています。

この2つの部門が一緒に仕事をすることによって、モータースポーツとロードカーの間の技術交流が生まれるのです。私が責任者を務めるルノー・スポールカーズのエンジニアの多くもモータースポーツ出身のエンジニアがいますので、お互いに交流をしています。

◇コーナリングの速さと楽しさが重要

----:ラティさんはもともとエンジニアだと聞いていますが、専門はどういった分野だったのでしょう。

ラティ:そもそも機械工学を専攻したエンジニアで、仕事を始めた当初はF1関係のシャシー担当でした。その後様々なプロジェクトのマネージメントや営業、マーケティング、いくつかの国の担当も経験し、現在ルノー・スポールカーズにいます。

----:では、ルノー・スポールのクルマにラティさんのエンジニアなりのこだわりは入っていますか。

ラティ:私の経験がどう反映されているかという意味でお答えします。スポーツカーには2つの基準があると考えています。ひとつはいかにサーキットで速く走れるか。もうひとつはいかに楽しく走れるかです。そして、我々はその両方を実現しようとしています。

そこでまた2つの考え方があります。ひとつは非常にパワフルで、4WDなどを使い直線で速いクルマです。しかし、そういうクルマはコーナリング時にかなり厳しくなるものです。それに対しもうひとつは軽くて効率良くコーナーを回ることが出来るクルマです。

私の経験からこだわっているのは、より楽しいクルマというのはコーナリングの効率が良く、俊敏なクルマだということです。自分がクルマをコントロールしていることが実感できるクルマ。ただ直線で速いだけではない、そういうクルマが自分のこだわりなのです。

ルノー・スポールの強さというのは、モータースポーツ出身の人間がたくさんいることです。モータースポーツで難しいのは、コーナリングやブレーキングで、コーナーにどのように侵入するのか、加速やトラクションなどをどのように最適化させるかです。そこが我々の強みになっています。

----:ではルノー・スポールにとって最も重要なことは何でしょう。

ラティ:やはりコーナリングです。直線で速いクルマではなく、コーナーできれいに速く走れるクルマで、これは先代の『メガーヌRS』でもこだわっていた部分です。つまり、コーナーで速かったからこそニュルブルクリンクでの記録も打ち立てることが出来たのです。

当初、250psぐらいでしたが、徐々にパワーアップし、いま、マーケットのトレンドはより馬力が高く、二酸化炭素の排出量は低く、となってきています。当然我々もそれに従っていきますが、我々が狙っているものはコーナリングが良く、かつ楽しく走れるクルマだということに変わりはありません。

----:軽量化についてはどうですか。

ラティ:軽いということはモータースポーツでは常に優位になります。軽ければ軽いほど良いのはもちろんですが、安全性などの関係で限界もあります。しかし、できるだけ軽くしていきます。この軽量化という問題もあるので、我々は4WDをあまり採用しないのです。

◇新型メガーヌRSは2種類のトランスミッションを導入予定

----:日本においてルノー・スポールはとても人気がありますが、その理由をどうお考えになりますか。

ラティ:それは日本の人たちがクルマの知識を多く持っており、その違いがわかるからでしょう。例えばコーナリングの良さなどが評価できるマーケットがあるからだと思います。単にスピードの制限がなく、スピードを上げていけばいいという国ではなく、山道も多く、カーブも多いのでコーナリングの良さを評価してもらえる国だからだと思います。

もうひとつはルノー・ジャポンがイベント等含め我々のブランドを高める活動を行い、上手く盛り上げてくれた結果でもあります。

----:その日本市場の特徴はあると思いますか。

ラティ:日本のマーケットは、ほとんどがオートマティックだという特徴があります。そこで、『ルーテシアRS』ではEDCを投入し非常に成功しています。また、ルノー・スポールのモデルの中にはマニュアルも選べますので、そちらも人気があります。そこで、新型メガーヌRSはマニュアルも選べるように2種類用意する予定です。

メガーヌに搭載するEDCは、これまでのメガーヌRSではマニュアルトランスミッションのみでしたので、敬遠していたお客様にも上手く乗ってもらえるでしょう。

----:ルノー・スポールの走りに対するこだわりはとてもよくわかりました。その一方で、スポーツカーに対する安全性やラグジュアリー、インフォテイメントなども要求されてきつつありますが、その点についてどうお考えになりますか。

ラティ:我々が大事にしているのは楽しく走るということです。同時に、クルマの環境も重要だと考えています。そこで力を入れているのがシート、ステアリング、そしてインフォテイメントとしてはRSモニターです。このモニターのグラフィックスも今回の新型メガーヌRSではかなり良くなっています。メガーヌ全て設計し直すことは出来ませんから、特にステアリングやシート、RSモニターにこだわって、高く評価される新しいフィーチャーを搭載していきます。

我々はモータースポーツとラグジュアリー方向とでは、モータースポーツ方向で様々なトライをしていきます。ラグジュアリー方向に走ることはありません。

----:ルノー・スポール独自のクルマは作らないのでしょうか。

ラティ:今のところはやはりルノーの中のスポーツカーという位置付けですから、アルピーヌとは全く違う方向で、戦略的には当面は変わりません。ただし過去にはルノー『スポールスピダー』という、ルノー・スポールのエンブレムをつけクルマがありました。その戦略とはいまは違っており、それ以降はルノーの中での位置付けとなっています。ただ将来はどうなるかはわかりませんけどね。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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