清水和夫×吉田由美が第45回東京モーターショー2017を斬る…“コネクト”その先にあるもの

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清水和夫×吉田由美が第45回東京モーターショー2017を斬る…“コネクト”その先にあるもの
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第45回東京モーターショー2017が、来たる10月27日に開幕する。今回のテーマは「世界を、ここから動かそう。BEYOND THE MOTOR」と題し、従来の“自動車展示会”という枠にとらわれない様々な取り組みが予定されているという。新たな舵を切り出した東京モーターショーの見方、楽しみ方を、モータージャーナリストの清水和夫氏と、カーライフ・エッセイストの吉田由美氏が語り合った。

◆車はでっかいスマホ

清水和夫氏(以下敬称略):今の若い世代は、シェアハウスもシェアカーも当たり前で、車は移動の手段のひとつになってきている。移動しながら、車と人間との関係の中に価値があると喜ぶかもしれないね。

吉田由美氏(以下敬称略):その“価値”って、何でしょうか。

清水:ひとつは“コネクト”だと思います。

吉田:なるほど、何年か前にスマホはありませんでしたが、今では主流になっていますし、もしかしたら私たちの想像のつかないものが“コネクト”することで出てくるかもしれませんね!
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清水:スマホが“AIの目”と言われるけど、車はAIの目どころじゃありませんよ。もっとすごいセンサーやCPUを持っているので、“車はでっかいスマホ“。200万円のiPhoneですよ。前から車は”走るメディア“と呼ばれたりしていますが、”コネクト“することによって、その本質が見えてくるはず。

◆人はコミュニティを求めている

清水:今、東京大学の社会人学生や大学院生たちと一緒に勉強会をやっているんです。(東大のある)駒場は高級住宅地で、老夫婦が多いのですが、普段は別荘住まいしているので、空いている家を学生たちにシェアハウスで貸しているんですね。そこに皆が集まって、自由に勉強会やディスカッションがされていて、良いコミュニティの場になっています。今回の東京モーターショーで、そんなコミュニティの場があったら、ショーとして一歩前進するんじゃないかな。

吉田:車のコミケですね。

清水:そう。知らない者同士が集まって、つながっていく。心地良いソファがあったりして、みんなで会話を楽しめるような、そんな場があると良いよね。結局、人が一番耐えられないのは孤独じゃないですか。

吉田:適度な孤独までなら耐えられますけど…。

清水:一人で車を運転しているのが楽しいと言う人もいるけど、ある意味それは車との対話だから、コミュニケーションと言える。あるいは、イタリアの街に行くと必ず広場があって、何気なく人々が集まっていますよね。人はみんなコミュニティを求めていて、それはやっぱりつながること、“コネクト”なんだよ。
清水和夫氏
吉田:SNSがこれだけ普及しているのもそうですよね。美味しいものを食べたりしたら、シェアしたくなりますもんね。

清水:全く同じ。SNSはバーチャルだけど、根底は「人が人に会いたくなる」ということ。会いたくなるから移動する、と考えれば、移動の目的はコミュニティなんですよ。東京モーターショーのコンセプトに“コネクテッド”がありますが、コネクトした先に何があるかと言えば、コミュニティです。人は人と触れ合う場がほしいと思っている。そして、人が人と集まるときには、同じ属性同士じゃなくで、いろんな国の人がいて、老若男女がいて、といった多様性が楽しい。ダイバーシティ(多様性)が大事なんだよ。

吉田:クルマ愛がコミュニティになることもありますよね。けど、私もこの業界にいてすごく感じるのは、クルマ好き同志の会話って、詳しくないと仲間に入れてもらえない雰囲気があるんですよね…。

清水:そういう排他的なのはダメだし、型にはまるのも良くない。男はこうじゃなきゃ。女は大和なでしこ。日本人はこうあるべき。タトゥーはダメ。ピアスはダメ…では多様性が失われちゃう。もちろんそういうコミュニティがあるのも多様性のひとつだけど、見方はひとつではないということ。

吉田:東京モーターショーも“幕の内弁当”のように、いろんな人たちが、それぞれの形で楽しめるといいですね。

清水:リアルなコミュニケーションの場を提供できるというのが東京モーターショーの役割なのかなと思います。

◆車は世の中を見るセンサー
吉田由美氏
吉田:そういう意味では、主催者テーマ展示の「TOKYO CONNECTED LAB 2017」は面白そうですよ!VRやインタラクティブ展示、トークイベントもありますね。若い世代に良いんじゃないですか?

清水:自動運転やEVの話にとどまらず、その先にあるものを今年の東京モーターショーから見せていこう、ということだよね。それが2017年のショーテーマ「世界を、ここから動かそう。BEYOND THE MOTOR」につながるし、コネクテッドの世界で車同士がつながる、社会とつながることで、もっとその先にあるものが見えてくると思いますよ。

吉田:「世界を、ここから動かそう。」といっても…簡単ではないですよね?

清水:車がコネクトして、自動運転になって、EVになっていったら、どういう社会イノベーションが起きて、私たちの暮らしはどうなるのか、というところまでイメージすると、答えが見えてきそうですね。例えば、車が持っている高性能なセンサー情報をコネクトして、クラウドを介してみんなで共有すると、天気予報がいらなくなります。ワイパーを動かしているクルマが集まっているエリアがあれば、そこはいま雨が降っているということ。それぞれの車が持っているセンサーのデータを集めていけば、車は世の中を見るセンサーになっていって、それがどんな風に活用されていくかということも面白いところです。車を見に来るだけではなくて、車のイノベーションが社会をどう変えるか、という観点で東京モーターショーを見ると面白いかもしれない。

吉田:どんな風にライフスタイルが変わるのか。ワクワクするようなイメージが持てればいいですね。

清水:車を見て、その向こう側に何が見えるか。その車を通して、未来のモビリティがイメージできるような、そんな展示を期待したいです。自分だったら、この車でどこに行って、誰と会って、何をしてという風に、この車に乗って何をするかを連想させるような提案がメーカー側から出てくると嬉しいね。

◆日本車は世界をリードしている事実
トヨタ豊田社長(東京モーターショー15)
清水:今回ヨーロッパで起きているディーゼル車の燃費偽装問題を考えると、日本は実は今、世界をリードしてるんじゃないかと思います。先日訪れたドイツでも、交通環境は厳しくなってきている。渋滞で止まっている車の9割がディーゼル車で、10年落ちの車も目立つ。排気ガスで空気がどんよりしていて、日本の70年代の公害が起きているようです。2000年以降、ずっとディーゼル比率を上げてきましたから。

吉田:そうなるとEVに目が行くわけですね。

清水:ヨーロッパでは、毎日アルプスの氷河が解けるのを見ているので、温暖化は深刻だという実感があり、CO2削減が重視されている。いっぽうアメリカでは、CO2にはあまり興味がなくて、カリフォルニアのマスキー法でわかるように、NOx(有害物質)対策を重視しています。では日本はというと、昭和53年の排出ガス規制でNOx問題をクリアし、オイルショックの時に、温暖化問題ではなくエネルギー問題というきっかけだったけど、燃費対策をしてCO2を削減したので、実は日本はCO2削減とNOx対策を両方やっているんですよ。つまり日米欧で見て、一番実直にモノを作り上げてきたのは、日本だということ。

吉田:そんな風に世界に誇れる車を見に行ける、というところが、東京モーターショーの一番の見どころですよね!

◆2017年は、2019年の入り口
東京モーターショー会場(資料画像)
吉田:私は、海外のモーターショーにもよく行くんですけど、毎回“宝さがしゲーム”みたいな気持ちになるんです。広い会場を自分で歩いて、何か自分に引っかかるものや、楽しいものを見つけるためにウロウロして…それで何かが見つかると幸せな気分になります。自分の生活が潤ったり、考えが変わるきっかけとか、そういうものを見つけに行くところだと思います。

清水:それはいい楽しみ方だね。

吉田:見つからなかったらごめんなさい。でも、何かしら見て楽しいと思ったら、その次もまた行こうと思うし、車の魅力を再発見するかもしれない。モーターショーはいっぱい歩くし、めちゃめちゃ疲れるんですけど、楽しいことって、現場に行って歩いてみないと見つけられないですよね。

清水:実は2019年の(東京モーターショーの)話がもう出ているんですよ。東京オリンピック・パラリンピックの直前で、東京ビッグサイトが半分しか使えないらしいから、やり方を考えなきゃいけない。

吉田:清水さんがプロデュースするなら…?

清水:例えば、迎賓館から表参道までを東京モーターショー通りにするのはどうかな。あの辺りにはホンダの青山本社があって、テスラもあるし、自動車メーカーのショールームも集まっていてちょうどいい。夕方には車両規制して、シャンゼリゼみたいに路面店のカフェを出して、いろんな食文化の店も出してなんてね。銀座線と半蔵門線もあるから、外国人にPASMOを渡せば、日本の公共交通の素晴らしさもわかってもらえますよね。

吉田:面白そう!気持ちはもう2019年ですね。まだ2017年のショーも始まっていないですけど…(笑)

清水:2017年は入り口なんだよ。今年のゲートが“コネクト”で、その次にある2019年はどんな社会になるのかということを予感させるのが大切。それを見ることができる東京モーターショーになればと思います。
清水和夫氏と吉田由美氏
◆第45回東京モーターショー2017の公式ページはこちら!

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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