西のクルーズ・トレイン『瑞風』、東の『四季島』との違いは?

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ついに姿を現したJR西日本のクルーズ・トレイン『瑞風』の87系寝台気動車。JR東日本の『四季島』と同じ10両編成だが、デザインだけでなく動力方式も『四季島』とは大きく異なる。
  • ついに姿を現したJR西日本のクルーズ・トレイン『瑞風』の87系寝台気動車。JR東日本の『四季島』と同じ10両編成だが、デザインだけでなく動力方式も『四季島』とは大きく異なる。
  • 87系の主要諸元。
  • 87系編成(先頭は10号車)。走行中に先頭となる展望車の展望デッキは閉鎖される。
  • 87系編成(先頭は1号車)。走行中、列車の後方(赤いテールライトが点灯している状態)になる展望車は、写真のようにデッキに出ることができる。
  • エンジンは防音カバーが取り付けられている。
  • 10号車先頭部の側面。
  • 動揺制御装置を収めた箱。
  • 1号車:キイテ87-2(MFC2):エンジン・発電機・モーターを搭載した展望車。先頭部に運転室と開放式の展望デッキを備え、後方に展望室とサービスクルー用の寝室が続く。写真はキサイネ86の客室側。
JR西日本は6月17日から、豪華寝台列車(クルーズ・トレイン)『TWILIGHT EXPRESS 瑞風』を運行する。これに先立つ5月1日からは、JR東日本も『TRAIN SUITE 四季島』という名のクルーズ・トレインを運行するが、車両の報道公開は『瑞風』が先行(2月23日)した。

『瑞風』で運用される車両は、10両編成1本のみ製造された87系寝台気動車。車体はアルミダブルスキン構体を採用しており、各車両ごとに片開きのドアを片側1カ所に設けている。編成両端の展望車(1・10号車)とラウンジ車(5号車)、食堂車(6号車)の計4両はエンジンや発電装置、モーターを搭載した動力車で、残る寝台車6両(2~4・7~9号車)には動力装置が搭載されていない。

『四季島』の専用車両として製造されたJR東日本のE001形も10両編成で、寝台車のほかに展望車や食堂車などを連結している。しかし、E001形は動力装置に「EDC方式」を採用。電化区間は架線から採り入れた電気によってモーターを動かす電車として走り、非電化区間はディーゼル発電機で発電した電気でモーターを回す電気式気動車として走る。

これに対し、JR西日本の87系は電気式気動車としての機能しかない。非電化区間はもちろんのこと、電化区間でも、ディーゼル発電機で発電した電気をモーターに送って走る。これが87系とE001形の大きな違いだ。

JR西日本車両設計室の則直久室長は、報道公開時の記者会見で「『瑞風』の運行ルートは電化区間と非電化区間がほぼ半々。両方を全部満たそうとすると、ディーゼルになる。(EDC方式のように)電車としての機能も入れると技術的にしんどいところがある」などと話した。実際、EDC方式は車両が重くなり、線路の規格が低い路線に乗り入れるのは難しい。E001形で最も重い車両が64.1tなのに対し、87系で最も重い車両は58.3t。約6tの差がある。

ただ、報道公開時に車内を回った際、ラウンジ車と食堂車のエンジンが作動しており、床からエンジンの音と振動が響いてきたのが気になった。則直久室長は「(エンジンなどの)周囲を防音カバーで囲うということをやった。車内もさらに静かにできるよう努力していきたい」などと話した。

エンジンと発電装置は動力車1両につき各2台搭載。モーターは全閉式かご形三相誘導電動機を採用した。台車はヨーダンパ付きの軽量ボルスタレス台車。フルアクティブの左右動揺防止装置とセミアクティブの上下動揺防止装置も搭載している。主回路制御は2レベル電圧形PWMインバーターを採用した。最高運転速度は110km/hだ。

各車両の特徴は以下の通り。

●1・10号車(展望車)

形式は「キイテ87」で、車両番号は1号車が「キイテ87-2(MFC2)」、10号車が「キイテ87-1(MFC1)」。「キ」は気動車、「テ」は展望車、そして「イ」は旧国鉄の旅客車が三等級制だった頃の、一等車を意味する記号だ。

先頭部は上方に運転台、下方に開放式の展望デッキを設けている。ただし、運行時は安全確保のため、編成前方の展望デッキを閉鎖。編成後方の展望デッキのみ出ることができる。とはいえ、走行時に外気に触れることができるのは確かで、これは密閉式の展望室を採用したE001形と大きく異なる点だ。

運転台の後方には高床タイプの展望室が設けられており、天井まで拡大した大型ガラスで眺望性を高めている。展望室の後方は、飲物を提供するためのミニ・キッチンとサービスクルーの寝室が設けられている。標記上の定員は8人だが、これはサービスクルーの寝室定員になる。

●2・3・8・9号車(ロイヤルツイン)

形式は「キサイネ86」。「サ」は動力装置を搭載していていない付随車、「イネ」は一等寝台車を意味している。車両番号は各車両ごとに番台区分されており、2号車が「キサイネ86-101(TNF1)」、3号車が「キサイネ86-301(TNF3)」、8号車が「キサイネ86-201(TNF2)」、9号車が「キサイネ86-1(TNF)」になる。

2人用個室寝台「ロイヤルツイン」が3室設けられており、定員は6人。各室に収納式ベッドが二つ並べて設けられており、昼は座席、夜は線路方向に伸びるベッドに変わる。これにより昼間のリビングスペースを確保した。窓側には収納式テーブルと机が並び、座席・ベッドの反対側にはトイレ・洗面台・シャワールームのスペースが設けられている。

このほか、共用トイレ(2・9号車)や共用シャワー(3・8号車)、サービスクルー室も設けられている。

●4号車(ロイヤルシングル・ロイヤルツイン)

形式は2・3・8・9号車と同じ「キサイネ86」で、車両番号は「キサイネ86-401(TNF4)」。ロイヤルツイン1室のと1人用個室寝台「ロイヤルシングル」2室、車掌室が設けられている。ロイヤルシングルは、エキストラベッドを使用することにより2人で利用することも可能だ。これにより最大定員は6人となっている。

ロイヤルシングルは、枕木方向に伸びる固定式ベッドと机を設置。固定式ベッドの上に収納式のエキストラベッドが設置されており、これを使用すると2段ベッドになる。トイレ・洗面台・シャワールームが設けられているのは、ロイヤルツインと同じだ。

4号車のロイヤルツインは2・3・8・9号車と異なり、車椅子での利用にも対応したユニバーサル仕様に。とくにトイレ・洗面台・シャワールームのスペースが広く取られている。トイレはオストメイトに対応した。

●5号車(ラウンジカー)

形式は「キラ86」で、車両番号は「キラ86-1(ML)」。「ラ」はラウンジカーを意味している。ラウンジはバーカウンターや立札(椅子に腰掛けて行う茶道の手順形式)の茶の卓、ブティック・スペースを設けている。木を多用することで落ち着いた空間を演出したという。ブティック・スペースでは車内販売を行う予定だ。このほか、喫煙室や共用トイレなども設置している。

●6号車(食堂車)

形式は「キシ86」で、車両番号は「キシ86-1(MD)」。「シ」は食堂車を意味する記号だ。1号車方に食事スペースがあり、2人用テーブル6卓と4人用テーブル2卓を配置。テーブルは鍋料理に対応している。最大で20人が同時に食事できる計算になるが、サービスクルーを除いた編成定員(最大34人)より少なく、食事は交代制にする方向で検討中。10号車方にはオープンキッチンを設け、「車内調理のライブ感」も堪能できるようにしたという。

●7号車(ザ・スイート)

形式は他の寝台車と同じ「キサイネ86」だが、車両番号は「キサイネ86-501(TNWF)」。車体は2階建て構造を採用しており、1階の片側に通り抜け用の通路を設置。それ以外のスペースの大半は、1両1室の最上級2人用個室寝台「ザ・スイート」で占められている。

枕木方向の2人用ベッドを設けた寝室とリビング、ダイニング、エントランス、プライベートバルコニー、線路方向のバスタブが付いたバスルーム、トイレで構成されている。トイレはバスルームに設置されているものとは別に、エントランス側にも設置されている。これは「車内の別のお客様を招待する場面」を想定しているという。

リビングのソファはエキストラベッド(2人分)として利用でき、定員は寝室ベッド・エキストラベッドをあわせて4人となる。
《草町義和》

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