【土井正己のMove the World】トランプ大統領誕生と「自由貿易の騎手」日本への期待

自動車 ビジネス 企業動向
デトロイトモーターショー2017で新型カムリを発表したトヨタ豊田章男社長
  • デトロイトモーターショー2017で新型カムリを発表したトヨタ豊田章男社長
  • TPP離脱の大統領令に署名したトランプ大統領。 (c) Getty Images
1月20日に米国の第45代大統領にドナルド・トランプ氏が就任した。トランプ氏は、同日にTPPからの離脱など、早速、複数の保護主義政策をホワイトハウスのホームページに列挙した。保護主義が、米国民の雇用を確保するということだが、その理論は20世紀初頭に大恐慌となって世界を大戦に引き込んだものだ。


◆グローバル経済と世界平和の危機

大戦以降、米国が中心となり、世界に自由貿易の枠組みを創り上げた。そうして生まれたグローバル経済と各国経済の相互依存が抑止力となり、世界の平和に大きく貢献してきたことは、誰もが認めるところである。今、こうした世界平和の枠組みが音を立てて崩れようとしている。2017年は世界の枠組みが大きく変化し、不安定化へと向かう年となるであろう。その中で、日本はどういう役回りを担うべきであろうか。

昨年12月7日のフィナンシャルタイムス紙の社説では、「今後、自由貿易には大きな推進力が必要となるが、それができるのは日本しかない」と断言している。一週間後にはウォールストリートジャーナルも同様の社説を掲載している。世界が日本にかける期待はこれまでになく大きい。


◆日本への期待とトヨタ

本年年初、トランプ氏が、トヨタのメキシコ工場建設をツイッター攻撃したというニュースが世界を駆け巡った。直前には、フォードがメキシコ進出の取り消しの発表をしていたし、また空調機器メーカーのキャリアもトランプ氏の口先介入で、メキシコへの工場移設を取りやめている。トヨタにも同様の圧力をかけて、就任式の自慢ばなしに花を添えたかったのだろう。

しかし、豊田社長のコメントは「我々はメキシコにも雇用と地域社会への責任がある」というものだった。また、豊田章男社長は、数日後のデトロイトモーターショーの会場にて、「米国に今後5年間で100億ドルの投資計画がある」と述べた。世界の企業市民であると同時に、米国の企業市民としての責任は果たしていくというメッセージであった。自分たちの立ち位置を見失わず、自由経済の騎手としてポリシーを貫いている。

1月17日には、英国のメイ首相が強硬的なEUからの離脱を表明した。フランスでは、本年の大統領選を控え、極右政党が躍進している。世界の趨勢は、確実に自国主義の方向に向かっている。この方向は経済だけでなく、安全保障の問題として国民の生活を不安定にするものである。保護主義というのは、自国の競争力低下を他国のせいとして門戸を閉じ、解決を図るものであるからである。また、経済の相互依存がなくなれば、世界が不安定となるのは当然である。


◆自由貿易の騎手としての「日本」

豊田社長のコメントにも見られたように、日本は自由貿易、自由経済を主張し続けることが必要だ。これは、過去、輸入自由化や超円高が起きた時でも、他国のせいにするのではなく、自国のモノづくりの競争力を強化することで切り抜けてきた日本でなければ言えないことである。日本は、世界平和のためにも、自由貿易の騎手として、その重要性を積極的に世界に発信していくべきだ。


<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサルティング・ファームである「クレアブ」代表取締役社長。山形大学特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年までチェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。
《土井 正己》

編集部おすすめのニュース

特集