【WEC 第7戦富士】3万2700人が酔いしれた激闘…トヨタ優勝に大貢献の可夢偉「ミスなく仕事ができた」

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WEC富士戦を制した#6 トヨタの小林可夢偉。
  • WEC富士戦を制した#6 トヨタの小林可夢偉。
  • 逃げ切った可夢偉を出迎える僚友ドライバーたち。
  • 優勝した#6 トヨタTS050。
  • 優勝は#6 トヨタ。2位に#8 アウディ、3位に#1 ポルシェと、3大メーカーがトップ3を分け合う結果となった。
  • 独ケルンを本拠とするトヨタGAZOOレーシングのチームスタッフたちも、トヨタの母国戦を必勝の思いで戦った。
  • 決勝後のトップ3会見。前列が優勝の#6 トヨタ、後列左が2位 #8 アウディ、右が3位 #1 ポルシェの各クルー。
  • 中嶋一貴組の#5 トヨタは今回決勝4位。
  • 富士6時間レース、歓喜の表彰式。

16日決勝の世界耐久選手権(WEC)第7戦富士は、最後の最後までトヨタ、アウディ、ポルシェによる死闘が展開され、3万2700人の観衆が大きな満足を得た末にトヨタの小林可夢偉組が勝利するという、最高の内容で幕を閉じた。

#6 トヨタTS050の可夢偉は、最後の2スティントに向けてマシンに乗り込む際、おそらく「2スティントとも同じタイヤで行くことになるだろうと思っていた」と振り返る。

そして最後の給油ピットインを前にしたチームとの無線交信では、実際に「勝つためにタイヤ無交換が必要なら、そう言って、と伝えたら、『タイヤかえたらダメ』ということだったんで」とのやり取りになった。

「乗る前からそれしかないとも考えていた」可夢偉は、当然「タイヤのことは(最終ピットイン前のスティントから)ケアしたかった」。ところが、「ポルシェ(#1)とのバトルになったんで、それも充分にはできませんでした」。

そのため、最終盤に#8 アウディのL.デュバルに追われた際には「苦しかったのはトラフィック(周回遅れの処理)。タイヤのこともあってブレーキも突っ込めないから、苦労しました。1分26秒台のラップタイムで走り続けることを意識していましたが、時々27秒台に落ちることもありました」。追う#8 アウディは最終ピットインでタイヤを交換しており、25秒台のタイムも出すなどしていた時期のことである。

それでも最後まで凌ぎ切って、可夢偉は勝利を手中に収めた。「自分なりのベストは尽くせたと思いますし、チームが頑張ってくれて、『ここは勝つぞ』の気持ちがみんなにあったから勝てました。今週、僕は全体的に調子よくて、ミスもなく仕事ができたと思います。そして誰もが(大きな)ミスなく戦えました」。

そして可夢偉はこの勝利、トヨタにとって約2年ぶりとなるWECでの勝利の意味をこう続けた。「勝負は来年ですから、来年にかけていい気持ちで挑めるのはいいと思います」。来年、というのは、来年6月のルマン24時間レースのことだろう。今年、僚友の中嶋一貴組が寸前まで迫ったトヨタのルマン初制覇が残り数分で散華したのは周知の通り。その雪辱を晴らせる舞台は、やはりルマンしかない。そこに皆でフォーカスしていく構えだ。

その一方、今季がLMP1-H初参戦の可夢偉ではあるが、今回の初優勝で可夢偉 & S. サラザン & M. コンウェイの6号車トリオはドライバーズランク2位に浮上した。トップの#2 ポルシェ(R. デュマ & N. ジャニ & M. リーブ)とは23点差。これには「なんだかんだ、凄いですね。向こうに何かあって(0点で)、こっちが優勝(25点)したら逆転?」と本人も驚く。

残りは2戦。決して小さい点差ではなく、5.5点後方には#8 アウディ(L. ディ・グラッシ & L. デュバル & O. ジャービス)もいる状況ではあるが、残る上海とバーレーンのコースへのマシン相性は「ここ(富士)ほどは良くないでしょうけど、前の3つ(第4~6戦)ほどわるくもないはずですね」と可夢偉は語る。

コース相性については、トヨタのマシン開発を統べる村田久武エンジニアも予選後の時点で「ここ(富士)から3つは合う方だと思います」との旨を話していた。他力も必要とはするが、可夢偉組大逆転王座の可能性もないことはなさそうだ。

なお、マニュファクチャラーズタイトル争いは今季7戦5勝のポルシェが263点でトップ、アウディが204点、トヨタは174点という状況で、こちらはドライバーズ以上にポルシェの戴冠(連覇)濃厚となってきている(手元計算だが、トヨタの可能性は消滅)。

金土日の総計で5万3200人の観衆が訪れた、今年のWEC富士6時間。やはりトヨタを応援する人が多かったと思うが、今季終盤のドライバーズタイトル戦線の興味を増すとともに、2017年のルマンへの期待感を大いに煽る内容、結果ともなった。来年の6月は、一層大きな声援が日本からフランスに届くことだろう。

《遠藤俊幸》

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