SBドライブ 佐治社長「必需品としての自動運転を目指す」

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SBドライブの佐治友基社長
  • SBドライブの佐治友基社長
  • 左から、スズキの鈴木俊宏社長、浜松市の鈴木康友市長、SBドライブの佐治友基社長、遠州鉄道の斉藤薫社長
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ソフトバンクの子会社であるSBドライブと浜松市、スズキ、遠州鉄道の4者は9月5日、浜松市役所にて「浜松自動運転やらまいかプロジェクトに関する連携協定」の締結式を行った。

同プロジェクトは浜松市において、自動運転技術を使ったスマートモビリティサービスの事業化を目指したもの。締結式に出席したSBドライブの佐治友基(さじ ゆうき)社長の主なコメントは以下の通り。

「新しい産業やアイディアが生まれる創発の地、浜松で協定を結べたことをたいへん嬉しく思っています。そしてわくわくしています。ソフトバンクは『情報革命で人々を幸せに』という大きな理念を掲げていて、それは最新のテクノロジーを分かりやすい形で、使いやすい形で、しかし値段は安く、お手頃に皆さんの手に届ける、世の中に根付かせる、ということを、『技術のプロデューサー』として、これまでやってきました」

「自動運転も最新技術の塊であり、これをいかに安全に、誰にでも分かりやすく、使いやすくプロデュースするかというところで、この4月に自動運転の産業に参入するためにSBドライブという子会社を立ち上げました。自動運転というのは『動くIOT』だと思っています。クルマや技術が発達すればするほど安全に走れるようになりますが、今後はそれを誰かが見守っている、そういう時代になる。その時には通信技術やインターネットの力が必ず必要になる。そういった思いで事業を立ち上げました」

「浜松市は徳川家康の時代から交通の要衝だったと聞いております。また、浜松市は遠州鉄道さまが日本で初めて交通系のICカードを導入されたり、全国で初のオムニバスタウン指定都市(バスの利用促進のための総合対策事業が国や自治体によって行われる)になったりと、現代でも交通の要衝だと思っています。そのような地で協定を結ぶにあたり、最初に鈴木康友市長のところにご相談にうかがった際に、やはり感じたのはその『やらまいか精神』でした。そして大企業であるスズキさまと遠州鉄道さまも巻き込んでいただき、こうして4者で、まったく新しい事業に関して話しあっていく機会をいただきました」

「我々は自動運転というのは、高級車の付加価値として特定の人に供給されるものではなく、どんな人でも使いやすい必要な機能として広められるものと考えています。つまり『必需品としての自動運転』を目指したいと思っておりまして、これは『必要なクルマを作る』というスズキさまの哲学に非常に合うのではないかと思っています。そして自動運転車が安全に運行管理されるために、これまで何十年もかけて培ってきた安全運行管理のノウハウを遠州鉄道さまにも教えていただきながら、自動運転の新しい基準やモデルを浜松で生み出していけたらと思っています。そしてその先で、浜松市が抱える交通の課題や問題点の解決に少しでも貢献できるようにと思っています」

「今、自動運転というものは、開発競争が激化しているとは言え、実用化については、地方での調査や検証がまだ始まったばかりです。これを推し進めるには、まず自治体の熱烈な支援や協力が必ず必要になります。SBドライブ単体では、いくら進めようとしても進まない。そして浜松市には、やらまいか精神というものがあり、また世界を代表するスズキさまと、日本を牽引してきた遠州鉄道さま、つまりクルマの技術と、安全運行管理のノウハウという、両輪が揃っています。そういった可能性を非常に秘めた自治体ということで、また関係者の皆様の協力もあり、非常にスムーズに協定までの準備が進みました」

「この浜松市で今後行うことについては、これから具体的に決めてからでないとお話できませんが、あくまでSBドライブとしては、まず自動運転車の研究開発と、それを利用するサービスの研究開発を2016年、17年と進めていきます。2018年度の後半には、公道において決められたルートを安全に走るという安全走行実証の実験を行います。それを経て19年以降には、できれば交通事業者の方が運行する形で、自動運転サービスが本当に使いやすいものになっているかどうかのサービス検証を行っていきたい。その上で21年から量産化、実用化を進めたいと、これはあくまでSBドライブが国のITSロードマップに沿った形で引いた計画ですが、持っています。ただし重要なのは、この浜松市において本当に役立つモデルを作ることであり、それがおそらく他の自治体のお手本になると思っています。ロードマップを守るのが最優先ではなくて、急がば回れではないですけど、しっかりと役立つ形を探す、これを重視していきたい」

「これは浜松市に限らないかもしれませんが、特にバスというのは非常に公共性が高く、利用があまりない地域でも簡単に撤退することができません。しかもドライバーの労働時間もあり、24時間走らせることもできない。自動運転になれば、そういった壁を越えていけるかもしれません。今までは不採算地域で、いわゆる空白地域と言われるところでも、無人運転バスがシャトル型で行ったり来たりする世界になると、人が住みやすく、また人が出かけるようになり、そのまわりの街も賑わう。そういった新しい交通網による賑わいのある街を作りたいと。我々は一人乗りでも決まったルートを定時で行ったり来たりするものを常に『バス型』と呼んでいます。要するに、どこでも行ける完全自動運転とは違うのですが、クルマの大きさに依らず、まさに地域に合わせた最適な大きさというものもこれから探していきたいと思っています」

「自動運転は、先ほどもお話した通り、まだ畑を耕している状態で、市場すらできていない。その中で誰がどのパートナーと手を組むかを決めてしまうのは非常に時期尚早なことだと思っておりまして、今はまず何ができるのかということを、この浜松という、考えやすい、トライしやすい土壌でやっていくということを非常に重視しています」

「他の世界的なメーカーがすでに発表している自動運転については、どういったレベルの自動運転なのか、レベル3なのかレベル4なのか、といった詳細が発表されていません。また、どういったユーザー向けに、どういった自動運転車を発売するかも明確になっていません。また、単純に技術だけ見ても、アメリカで走行できる自動運転車がそのまま国内でも走行できるということは、実はありません。障害物の認知など、いろいろな問題があるからです。さらに交通という特殊な条件は、国によっても違います。また、人々の感じ方も違います。日本というのは、ある意味高齢化も進んでいて、ドライバーなどの人不足も進んでいて、公共交通の維持が困難になっていくという意味では、アメリカとも違うし、アジアとも違う、特別な地域と思っています。ですので、世界のプレーヤーとの競争は念頭に置きつつも、あくまで日本で何が役立つかどうかということをしっかり見極めていく。これが必要と考えています」

「今の段階では(収益に結び付く)確実なビジネスモデルは、残念ながら持ち合わせておりません。ただし確実に、自動運転技術というものが実現できた時、解決できる課題があり、その課題は大きいだろうと考えています。具体的には、これから運転免許証を返納する高齢者の方だったり、クルマを運転できない世代の方であっても、クルマに乗って自由に移動ができる、さらに物も自由に運べる、ということが当たり前のようにできるようになると、今までのクルマ社会とは少し違った、新しい市場ができてくる。そこでどう儲けていくかは、これから試行錯誤で決めていくことだと思います。おそらく我々以外にも様々なプレーヤーが参加することで、より大きな市場になっていくと考えています」

《丹羽圭@DAYS》

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