ボルボの大型3列シートのフラッグシップSUV『XC90』(全車AWD)にPHVモデル、T8が加わった。今後、ボルボのエンジンはDRIVE-E戦略に基づき直4に統一されるというが、このXC90 T8のパワーパッケージも2リットル直4ガソリンターボ&スーパーチャージャー+8ATユニットにリヤモーターを付加したもの。スペックはエンジンが320ps、リヤモーターが67psと強力だ。XC90の価格はT5で774万円だが、T8は1009万円と、ボルボとしてはかつての『780クーペ』以来の1000万円越え高額車である。それでも日本市場においてXC90の約16%もの販売比率なのだから、時代を伺わせる。まずはPHVと聞いて気になる燃費性能、実燃費、充電時間、実EV走行距離、バッテリーの搭載位置について。JC08モード燃費は15.3km/リットル、実燃費は今回の一般道30%、高速道路70%の試乗で10km/リットル前後。充電時間は200Vで2.5~3時間。モーターだけで走れる公称EV走行距離は33.7kmだが、メーカーによれば実際には20km程度だという。ちなみにフロントにもモーターを備えるが、こちらはエンジンスターター、バッテリーの発電の役割が主で、厳密に言えば駆動モーターではない。ツインモーター4WDの三菱『アウトランダーPHEV』とは異なる。リチウムイオンバッテリーは縦型(Tの字を逆さまにしたイメージ)で、センタートンネル内に配置。これは重量バランス、衝突安全性に効果があるはずだ。結果、T8は他のXC90にくらべセンタートンネル部分、リヤフロア、フロントコンソールボックスの底がやや高まっているものの、実用的にはほとんどデメリットとはならない。PHV化によって約200kgの重量増となったT8だが、ドアを開け、乗り込み、ドアをバスッと閉めればそこは外界と完全に遮断されたかのような静謐かつスカンジナビアデザインに囲まれた極上の居住空間だ。T8のインテリアのハイライトのひとつがシフターだ。まるで宝石のようにきらめく、スウェーデン・オレフィス社のクリスタルガラス製(生産車初)で、ひとつに15人の職人がかかわる手作りの工芸品。T8のオーナーはシフターを操作するたびにそのひんやりとした最高級の感触にうっとりできるかもしれない。そのインテリアの大きな特徴が、まず身長180cmの人でも座れるという3列目席。ボクの身長は172cmだが、2列目席に身長180cmのスタッフに座ってもらい、ひざ回りに10cmほどの余裕を持たせた状態でも、ボクの座ったフラットフロアの3列目席ひざ回り空間に11cmの余裕があったのだから大したものである。また、ボルボではおなじみのBピラーのエアコン吹き出し口に加え、リヤエアコンコントロール、3列目席~荷室対応のCピラーのエアコン吹き出し口まで装備されているのも注目点。後席の空調環境がここまで充実していると、全列の乗員はもちろん、3列目席、3列目席を床下格納した拡大ラゲッジフロアに乗った愛犬も一年中、快適にドライブを楽しめるに違いない。ちなみにボルボ直営ディーラーの多くはショールームに愛犬を同伴できるそうだ(訪問時は要確認)。しかもボルボ製の水飲み皿まで用意され、犬に気遣いミネラルウォーターまたは水道水の選択もできるというのだからドッグフレンドリー。愛犬家にボルボオーナーが多いのも頷けるというものだ。■5つ星評価パッケージング:★★★★インテリア/居住性:★★★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★★オススメ度:★★★ペットフレンドリー度:★★★★青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ムック本「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)好評発売中。
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