【マツダ CX-3 試乗】デビュー僅か10か月で早くも改良、その真価は…中村孝仁

試乗記 国産車
マツダ CX-3 改良新型。外観には手が加えられていない
  • マツダ CX-3 改良新型。外観には手が加えられていない
  • マツダ CX-3 改良新型
  • マツダ CX-3 改良新型
  • 新しい黒革のインテリア
  • スェードとのコンビである。
  • 細かいが新たにサイドミラー折りたたみ専用のスイッチがドアに追加されている。
  • マツダ CX-3 改良新型
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マツダ『CX-3』が、市場デビューから僅か10か月で早くも改良を受けた。これまでの常識から行くと非常に早いタイミングでの改良と言えよう。

考えようによっては、買うタイミングを躊躇するともいえるが、マツダとしては常にたゆまぬ進化を市場に提供することで商品力をアップし、進化をユーザーに実感してもらうのが狙い。そもそも、CX-3は『デミオ』をベースとしたクロスオーバーモデルで、ベースを考えればBセグメントだが、価格的にはCセグメントに匹敵するモデル。ディーゼルモデルの購入を考えればVW『ゴルフ』などが視野に入る高額車だ。しかも一般的に考えられるサイズ的ヒエラルキーから言えば、室内は狭く、ラゲッジスペースだって満足のいくものではない。

そんなCX-3、当初は上級に位置する『CX-5』と市場を食い合うのではないかと言われていたが、少なくともこの10か月を見る限り、見事なほどきれいに棲み分けできている。

で、今回の改良がどこにあるか。これまでのリサーチで、ユーザーの声は低回転時にもたつき感がある(ディーゼル)。登り坂等での追い越し加速が物足りない。ステアリングの細かい修正が必要、乗り心地のしなやかさに欠ける。価格設定が高い。黒革のインテリアが欲しい。等々であった。それらの声に一気に答えてしまおうというのが、今回の改良である。

具体的に何をやったか。低速時のもたつき感についてはエンジン制御を見直し、アクセル操作に対する加速度を高め、出足を改善した。次にこれまではセットオプションだった、ディーゼルのノック音を打ち消すナチュラルサウンドスムーザーを標準装備化した。ステアリングに付いてはESPの制御見直しをしている。そして乗り心地はサスペンションセッティングを見直し、敢えてフロントのスタビライザー径を小径化している。さらにユーザーから要望のあった黒革のインテリアを追加設定するなど、とことんユーザーの要望に応える改良が施されていた。

違いを実感するために敢えて新旧のCX-3が試乗できる環境下で、まずは旧型。その直後に新型に乗るという試乗スケジュールで街中と首都高を中心とする試乗コースに出る。因みに試乗車はXDツーリングLパッケージである。デビュー直後の試乗で感じたナチュラルサウンドスムーザーの効果はかなり限定的だと思っていた。ところが今回試乗してみると、その効果はかなり鮮明で、フル加速した時の音質は旧型とはまるで違う。

マツダのディーゼルは、圧縮比が低いから確かにアイドル時の車外音は小さいが、加速して行った時やパーシャルからの加速時はやはりディーゼル特有の音が出る。一方、BMW、メルセデス。ボルボといったヨーロッパ製ディーゼルは、アイドル時の車外音こそ大きいものの、加速が始まるとそれがディーゼルであるかガソリンであるか俄かには判別しにくいほど、うまい具合に音のチューニングがなされているのだ。果たしてどのような方策が施されているかは定かではないが、今回ナチュラルサウンドスムーザーが、その効果をより鮮明にしたことで、少しはヨーロッパ製ディーゼルに、音という部分で近づいた気がした。勿論あくまでも個人の印象レベルではあるが。

因みに静粛性を高める方策としてもう一つ、フロントドアガラスの厚みを従来の3.5mmから4mmへと引き上げている。

次に低速域の加速感向上に関して。 冒頭に述べたような方策を加えた結果、横軸に時間、縦軸に加速度を示すグラフで見る限り、アクセルを踏み込んだ時の加速度Gの立ち上がりは今回のエンジンの方が顕著で鋭いのだが、実際体感的にそれほど鋭くなったかというと、実はそれほど顕著には感じられなかった。とはいえ、そのトルク感はおよそ1.5リットルというエンジンキャパシティーからは想像もできないほど強烈だから、ディーゼルの良さは十分に実感できると思う。しかもマツダは一切のデバイスを使わずに、法規をクリアするだけのクリーンな排ガスを保っていることを付け加えておこう。

電動パワーステアリングの変化も顕著だった。転舵した時のしっとりとした感触は、実に見事である。ただ、必ずしも手放しで喜べない部分もある。それは旧型のステアフィールは切り初めに明確な重さを感じさせ、直進安定性の良さを感じさせてくれたが、新しいモデルは操舵感こそ非常に優れているものの、センターフィールが若干だが希薄で、ナチュラルなのだがセンターを感じにくくしている。両方を満足させてくれれば最高だったのだが…。

そして新たなインテリアカラーの黒の本革は、シックなイメージを醸し出し、実際本革使用を購入した人の8割以上がこの黒を選んでいるから、まさに狙い通りの数字が出ているといったところである。高額だという声に対しては、これだけの方策を施してお値段据え置きという回答で応えた。マツダは今後も常に新しい技術やアイデアを導入し、クルマを進化させていくというから、買うタイミングは出たらすぐ、が正しいのかもしれない。

■5つ星評価
パッケージング ★★★
インテリア居住性 ★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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