デザインコンセプトは「クラウチングビースト」。今にも獲物に襲いかかろうとする野獣イメージしたという、アグレッシブなフォルムが印象的だ。
コンパクトに引き締まった車体は、1000ccクラスとは思えないほど軽く、駐車場などでの取り回しも楽だ。低めに構えたワイドバーと高めのステップにより、ライポジはやや前傾したストリートファイタータイプとなるが、絞り込まれたシートのおかげで足着き性も良い。
エンジンは05~08年型『GSX-R1000』をベースとしているが、これはロングストロークによる低中速域トルクの旨味を生かすためだ。とはいえ、そこはスーパースポーツ由来のエンジン。基本的には回すほどにパワーが盛り上がる特性で、回転上昇とともに響き渡る野獣の雄叫びのようなサウンドにしびれる。
ハンドリングはスーパースポーツ並みに軽快だが、GSX-Rより低めに設定された重心位置のためか、倒し込みに穏やかさがあり、ビギナーでも馴染みやすいハンドリングとなっている。一方で高速域ではフレーム剛性の高さを感じさせる安定感があり、サーキットのようなハイスピードコーナーにも安心して飛び込んでいける。また、ブレンボ製のフロントブレーキも強力かつコントローラブルで、さらにABS付きなので万が一のときにも安心だ。
感心したのはトラクションコントロール。3段階に切り替え可能で、走行条件やライダーの好みにより手元のボタンで簡単に切り替えることができる。特に気に入ったのはウエット路面用のモード3。雨天での不用意なスライドを防いでくれるだけでなく、ドライ路面でも非常に有効。たとえば、コーナーでスロットルを開けすぎたときなど、すぐにトラコンが介入して自然な挙動でパワーを抑制してくれる。
スペック的に欧州仕様と同じ145psというのも魅力だが、これら電子デバイスによってそのパワーを使いこなせることも大きなメリットだ。これだけの性能と装備で111万円という価格は、まさにバーゲンプライスと言っていいだろう。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
快適度:★★★
タンデム:★★★
オススメ度:★★★★★
佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。