ヤマハ 4台のコンセプトモデルが問いかける、新しい機能と新しい価値

モーターサイクル 企業動向
ヤマハ √(ルート)
  • ヤマハ √(ルート)
  • ヤマハ √(ルート)
  • ヤマハ √(ルート)
  • ヤマハ √(ルート)
  • ヤマハ √(ルート)
  • ヤマハ √(ルート)
  • ヤマハ √(ルート)
  • ヤマハ √(ルート)

六本木ヒルズで7月3~5日に開催された、ヤマハとヤマハ発動機の合同デザインイベント「Two Yamahas, One Passion ~デザイン展2015~」。ここに展示された「project AH A MAY(プロジェクト・アーメイ)」のコンセプトモデルは日本初公開となった。

このプロジェクトは両社のデザイナーがお互いの業務領域を交換して、それぞれの考え方や作法でデザインを提案するというもの。つまり打楽器はヤマハ発動機のデザイナーが、2台の2輪車はヤマハのデザイナーが手がけている。同じヤマハブランドを使用する相手を鏡像に見立て、相互に刺激し合うと同時に、共通した「ヤマハらしさ」を見出すことが目的だ。

いずれの作品にも共通しているのは、従来製品の基本的な機能を踏襲しつつ、既成概念を打ち破ろうとするアドバンス提案であること。現在の使用環境に必ずしも適しているわけではなく、将来のヤマハ製品の個性と可能性を模索する習作という位置づけだ。

2台の「乗り物」のデザインには、人と楽器の関係性が当てはめられていると ヤマハデザイン研究所の川田学所長は説明する。「楽器というのはロングライフで、演奏者といっしょに成長するものです。演奏前にはチューニングする必要がありますし、手入れもこまめにしなければなりません」

「しかしこうした関係を続けることで、その人だけの楽器になってゆきます。こうした濃密な関係を、モーターサイクルや自転車でも楽しみや喜びにできないかなと考えました」とのこと。

『√(ルート)』は馬の背をモチーフにした流麗なシートが目を引く一方、ライダーの目前からは計器類を排除した。これは視線の先が風景と一体になるよう意図したものだという。「人と自然と乗り物の一体感」を目指したデザインだ。回転計と距離計は腕時計型になっている。

シートはグランドピアノの製造時におこなう曲げ加工と同じ手法で一枚板を加工し、そこにレザーを張っている。装飾を兼ねたステッチを入れるアイデアもあったというが、「撫でたくなるような曲面を実現するために一枚にしました。馬をブラッシングするように、触れて手をかけることが楽しみに繋がります」と川田所長。

電動アシスト自転車の『0±0(ゼロプラスマイナスゼロ)』は、隣に飾られたサイレントギターと調子を合わせた、シックな装いにまとめられている。これはバッテリーの電力を走行で消費するだけでなく「ペダルを漕いで充電し、その電力を楽器やその他の機器に使う」というアイデアを表現したもの。

バッテリーはトップチューブにぶら下がる革袋に収容される。配線はフレーム内にあるという想定。フレームや部品の一部が銅メッキされているのは、クラシカルな雰囲気と同時に「(玩具の)モーターのコイルを自分で巻く楽しさ」を連想させるためでもあるという。

いっぽうドラムの『RAIJIN』とマリンバの『FUJIN』について、川田所長は「楽器でも、エンジニアとして理想を追求すると、どんどんコンパクトなものになってゆく。するとステージ上で演奏者が何をやっているのか、見てもわからなくなってしまうんです」と説明する。それを打破しようとする提案が、この2台の打楽器というわけだ。

球形あるいは円形のシルエットからは、名前が示す通り俵屋宗達の「風神雷神図屏風」を想起させる。どちらも演奏者が中心にいるのは「理にかなっているレイアウト」(川田所長)で、RAIJINではケージの中で暴れ回り、FUJINは音板を回して旋風を巻き起こす。視覚効果も重要な機能というわけだ。

《古庄 速人》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集