【スズキ アルト 試乗】久しぶりに出現した、オトナが自信を持って乗れる軽…吉田匠

試乗記 国産車

スズキ アルト X
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初代のデビューから36年目に登場した8代目スズキ『アルト』は、気合の入ったクルマだ。プラットフォームから新開発し、パワートレーンにも様々な改良と最新技術を投入した結果、37.0km/リットルというガソリン車としては最高の燃費を達成した、というのがウリのひとつで、それはそれで大したものだが、実は新型アルトの魅力はそれだけにとどまらない。

新型アルト、まずボディスタイリングがいい。今どきの軽自動車というと、天地方向の室内スペースを確保するためにルーフを高くした、トールワゴン系が主流になっているといえる。その先鞭をつけたのは1970年代前半のホンダの『ステップバン』だったが、その形式を一気にポピュラーなものにしたのは、他ならぬスズキの初代『ワゴンR』だった。

それらトールワゴン系に押されて近年は目立たぬ存在だったアルトだが、新型は違う。昔のクルマでは初代フィアット『パンダ』、最近のモデルではVW『up!』 あたりを連想させる、ヨーロッパのアイコン的な小型ハッチバックの雰囲気を持つ、シンプルで力強いデザインのボディを与えられて登場したのだ。一説にはこのエクステリア、かつてヨーロッパのメーカーにいた某日本人デザイナーの作品とされるが、真偽のほどは不明だ。

しかも新型アルト、刷新されたのはスタイリングだけではない。クルマの土台となるプラットフォームも新開発され、ねじり剛性を30%向上させつつ軽量化を徹底、ボディパネルの一部を樹脂化するなどの結果、車重は先代より60kgも軽い。それに加えて、ホイールベースの延長や、新設計サスペンションの採用など、乗り味の向上にも意を注いだらしい。

試乗車は37.0km/リットル の燃費を誇るCVT+FFの上級モデル「X」だったが、適度な高さの座り心地のいい運転席に収まって走り出す。まず感じるのは動力性能が実用上充分なことで、52psのNA3気筒658ccエンジンは、650kgという軽い車重を想像するよりずっと元気に加速させる。しかも高速道路では追い越し車線の流れに乗って無理なく走れるし、試乗車が上級モデルだったため遮音がいいのか、クルージング中の音も気にならなかった。

逆に気になった点は3つ。ひとつは路面の荒れた部分を走ると、「X」に標準の15インチタイヤがバタつく感じがすること。もうひとつは、ステアリングのセンター付近の落ち着きがイマイチよくないことで、結果として真っ直ぐに走っている感覚、つまり直進性が希薄に感じられることがある。さらにエネチャージの影響もあるのか、ブレーキングにも少しだけ不自然な感触があった。試乗の舞台にワインディングがなかったのでコーナーを攻めることはできなかったが、「X」仕様の場合、コーナリング感覚は自然なものに思えた。

試乗車はノーマル系の最上級モデルのため、ESP、レーダーブレーキサポート、フルオートエアコンなどを標準装備しているが、それで113.4万円(消費税込)のプライスは高くないと思った。同じパワートレーンでも装備を削った「L」なら、90万円弱からある。

この8代目、初代以来の存在感あるアルトが帰ってきた、という印象のクルマだ。走りも上々だが、パッケージングも素晴らしく、リアシートのレッグルームなど勿体ないほど広い。それに、なんといってもシンプルで骨太なスタイリングが魅力で、大人の男(と大人なオンナ)が自信を持って乗れる軽が久しぶりに出現した、と宣言したい気分である!

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★☆
オススメ度:★★★★★


吉田匠│モータージャーナリスト
1971年、青山学院大学卒業と同時に自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の編集記者としてニ玄社に入社。1985年、同社を円満退社、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。1989年以来、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。『僕の恋人がカニ目になってから』(ニ玄社)、『男は黙ってスポーツカー』『ポルシェ911全仕事』『男は笑ってスポーツセダン』(双葉社)など、著書多数。
《吉田匠》

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