8月29日から9月7日までロシアで開催されたモスクワモーターショー14。日産は新型『パスファインダー』と『セントラ』をヨーロッパプレミアした。
現地メーカー アフトワズへの出資発表から2年。ロシア市場における実情と戦略について、日産インターナショナル ロシアマーケティング担当役員のバスティアン・シュップ氏に聞いた。
◆多彩なラインナップでニーズに応える
今回ブースには、SUVからセダン、スポーツモデルなど多様なモデルが並んだ。販売を牽引するのは小型セダンの『アルメーラ』だが、シュップ氏は「キーになるのはやはり四駆。ロシアは国土も広く、雪道の走破性も重視される。商品ラインナップは幅広く持っていますが、今回は展示に関してもSUVを多く揃えました」と話す。
EU市場との違いについては「EU仕向けと共通のモデルもありますが、より大きくてパワフルな車が求められており、その点では中東やアメリカに近い部分があると言えるでしょう」という。5.6リットルV型8気筒ガソリンエンジンを搭載するフラッグシップSUV『パトロール』や、1986年より北米で販売されているパスファインダーを導入していることからもその市場傾向がうかがえる。
一方で、『ジューク NISMO』や『GT-R NISMO』などの展示に関しては「日産のスローガンである“INNOVATION THAT EXCITES”を象徴するモデルも用意しました。ロシアの郊外は悪路の地域も多いのですが、近年ではモータースポーツへの関心が増加傾向にある。そういう方たちに対して、日産のイメージを伝えるという意味では非常に適しているのです」と理由を語った。
◆市場への大きな期待
ロシアは日産にとって世界で5番目の市場(中国、米国、日本、メキシコに次ぐ)であり、2013年の実績は販売台数15万4996台、シェア5.6%。5年連続で過去最高の販売台数を記録している。しかしウクライナ情勢やそれに経済制裁の影響で、2014年の全体市場は250万台(2013年は277万台)に落ち込むという予測もある。
「経済的・政治的問題により市場は難しい状況にあるのは事実です。ただし長期的に安定した市場だと判断しており、これからも投資は続けていきます。自動車所有台数も欧米に比べると少ない。我々は2016年までにインフィニティ、ダットサンと合わせ、シェアを10%に拡大する目標を掲げていますが、達成出来ると考えています」とシュップ氏。
世界統計局の発表によれば、ロシアの1000人あたりの自動車所有台数は271台。アメリカ797台、ドイツ572台、フランス598台に比べてまだ伸びしろがある。また「ロシアへは年内に9車種を投入するため、販売促進をはかることが可能」だという。
◆ロシア独自の生産体制
現在日産は、モスクワ、サンクトペテルブルク、トリアッティ、イジェフスクの4拠点にアフトワズとの合弁工場を設けている。昨年秋には、ルノー日産アライアンスとしてアフトワズとの共同購買会社も設立。パワートレイン関連パーツや、工場の生産設備の調達において、コスト削減をはかった。
トリアッティ工場ではプラットフォーム共有プログラムによって、ラーダ『ラルグス』と日産アルメーラを生産しているが、今回サンクトペテルブルクで生産するモデルに3.5リットルV6ガソリンエンジンと2.5リットル直4ハイブリッドエンジンのパスファインダーを追加すると発表している。
シュップ氏は「これは、ロシアにおいて初めて作られるハイブリッドモデルです。アフトワズとの協業体制は確実に進歩しており、お互いのノウハウを持ち寄って、現地生産率を上げていく。もう一つの目標である“2016年までに90%”という比率へ着実に近づいています」と自信を見せた。