【ダイハツ コペン ローブ 試乗】ナリは小さくとも立派なスポーツカーを感じさせる本格派…中村孝仁

試乗記 国産車
ダイハツ・コペン ローブ
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日本車にしては珍しい、開発主査の思いの丈がしっかりと感じられる一台に仕上がったモデル。それが新しいダイハツ『コペン ローブ』だった。

開発主査はダイハツの藤下修氏。かなり明確に彼の表現したかったことが、このクルマには反映されている。最たる部分としては、強固なD-Frameと名付けられたアンダーボディに、樹脂のボディ外皮をスナップオンして成り立っていること。だから極端な話、シャシーだけでも走ることができる。この手の構造を持つクルマとしては、例えばシボレー『コルベット』などがその典型として挙げられるが、実はこの構造が着せ替えできるボディの発想に繋がっているのだと思う。あえて今回の試乗車にコペン ローブと断ったのは、すでに東京モーターショーを見た人ならご存知の通り、この先でコペン「Xモデル」とさらに第3のボディスタイルを持ったモデルが登場することが確定しているからだ。因みにXについてもまだこれが正式な車名ではない。すでに公募によってその名を決めたそうだが、それは実車の発表まで公表が控えられている。

このコンセプト自体、実に楽しくこの種のスポーツカーを欲する人には愛着を持たせる大きな要因となると思うが、さらにその走りだったり、さらにはサウンドだったり、そしてデザインに対しても主査の拘りが反映されていて、個人的な印象としては他メーカーの話で恐縮ではあるが、かつて桜井眞一郎氏が育て上げた『スカイライン』を彷彿させたものだ。

冒頭、ボディ外皮をスナップオンしているという話を書いた。実はドア以外のボディはすべて樹脂でできている。それも外販はすべてポリプロピレン樹脂だ。応力のかかるボンネットやトランクリッドは裏側にSMCを貼り付けている。余談ながら燃料タンクも樹脂製で、従来品より2kgの軽量化を実現したという。おかげでがっちりとしたユニタイズド構造のシャシーは当然ながら下が重く、軽量樹脂の上屋が軽いから、安定感は抜群。ハンドリングも軽快でまさしくヒラヒラとコーナーをトレースできる。ただそうはいってもガッチリしているのはシャシーだけ。だからいわゆるスカットルシェイクは意外と大きい。

次なる拘りは音。3気筒にもかかわらず、何とマフラーは2本出しである。3in1でマフラーに入り、そこから左右に分けて2本出しとしている。そしてちゃんとサウンドチューン。少なくとも最初に乗ったCVT仕様のモデルでは、まるで3気筒であることを忘れさせる、なかなかのサウンドを奏でていた。一方でマニュアルは3気筒むき出しの音だったので、果たしてどちらがホンモノかは判断できない。

次にデザイン。初代とは打って変わってダブルスウィープシルエットなる、なかなか精悍なデザインでまとめられている。実際に見るとかなり存在感があって、初代の持っていたはんなりとしたイメージから一転、いかにもスポーツカーらしい走りを意識したスタイルに変更された。もちろんメタルリトラクタブルルーフは受け継がれている。このルーフ、その開閉は車両停車時にしか操作できず、しかもそれなりに時間がかかる。海外メーカーの同じ機構は低速時でも操作できて、万一急に雨が降り出してきても対処できるのだが、そのあたりが日本メーカーの生真面目さなのか、はたまたお上がうるさいのか、実現できないのは残念だ。因みに電動ではあるが、ウィンド上部に付くロック機構を手動で外す必要はある。

この外観に合わせるように、インテリアのデザインも細身のセンターコンソールを中心としたシンプルながらスポーティーなデザインでまとめ上げられているのだが、それを見事にぶち壊してくれるのが、後付のカーナビである。そもそもインダッシュカーナビを想定しないデザインも今時いかがなものかと思うが、とってつけたようなどデカい箱がダッシュの上に載った様は、言葉は悪いかもしれないが、正直無様としか言いようがなく、せっかくのシンプルなデザインを台無しにしている。潔くスマホに頼るかあるいはタブレットPCのナビを利用した方が遥かにスマートだ。

MTを選ぶかCVTを選ぶかは悩みどころ。というのも単にヤンチャに走ろうと思えばそれは文句なしにMTの方が面白いし走りのパンチ力が格段に高い。しかし一方で大の大人二人が乗ってドライバーがマニュアルシフトを操作しようと思うと、限られた空間では必ずといってよいほどパッセンジャーの足に操作する手がぶつかる。というわけで、カップルで出かける時などはかなり気を使ってしまうからATシフターの方がスマートになる。したがってどう使うかを考えてからミッションをチョイスすることをお勧めする。

お値段は179万8200円から。こちらがCVTで実はMTの方が高い。それに燃費もCVTの方がいいから、悩みどころ。それにしてもナビをつければ200万円の大台に届きそうな値段。敢えて高級軽自動車と呼ばせてもらえば、少なくともトランクリッド裏側の無塗装はやめてもらいたい。ルーフを開閉するたびに外部からも無塗装が丸見えになって少々恥ずかしい。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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