“スポーツ・カー”とBMW自身も明言する『M235iクーペ』。新しい『2シリーズ』の上位に位置づけられるこのモデルは、BMW M Performance Automobilesの手により仕立てられた走りにこだわりをもつ1台だ。
搭載エンジンは3リットルの直列6気筒ツインパワー・ターボ。326ps/45.9kg-mの性能をモノにしている。0-100km/h加速5秒(8速ATは4.8秒)という。サスペンション、ブレーキ、ステアリングも当然、専用のチューンが施されている。
短時間の試乗ながら、走りは“自然体でダイナミック”な印象。思い出したのはE30時代の『M3』で、『M235i』は最新モデルながら、今ほど各種電子デバイスを搭載していない頃の高性能車のピュアで極めた高性能ぶりを味わわせてくれる。マニュアルのシフト感覚もあの頃の……そして以降のBMWの高性能車の感覚そのまま。懸命にコーナリングをこなしてみても、後輪が路面に食い付いて離さず、ステアリングも切った分だけ効き、走りの奥が深い。エンジンも使い方次第で、どこまでも性能を出し続け、エンジン回転に伴う振動とやや野太い排気音も含め、正統派スポーツカーらしい手応えを味わわせてくれる。
タイヤ&ホイールこそ前後異サイズ。けれどフェリック・グレーのドアミラーを始め、専用の外観はベースの2シリーズの文脈から大きく離れたものではなく、むしろ控えめ。日常レベルでの乗り心地も決してハード一辺倒ではない。だからこそ大人でもさり気なく乗りこなせ、走りの醍醐味を堪能していられる高性能車だ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。