【池原照雄の単眼複眼】日産、利益率8%へのカギを握るルノーとの大統合

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日産 ゴーン社長(参考画像)
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事業規模は拡大しているのに収益は足踏み

日産自動車と仏ルノーは4月から両社間の主要機能をより深く統合し、収益力の強化につなげていく。1999年3月の資本提携から丸15年が経過したものの、近年の日産は事業規模が拡大しているのに収益は足踏み状態となっている。推進中の中期計画「日産パワー88」(2011~16年度)で掲げる収益力指標(売上高営業利益率8%)への到達も危うく、今回の「統合深化」によるシナジー創出の成否が達成のカギを握る。

統合を推進するのは「研究・開発」「生産技術・物流」「購買」「人事」の4機能。研究・開発と生産技術・物流は日産から、また購買、人事はルノーから担当副社長を任命し、それぞれ統括する。同時に「アライアンス・マネジメント・コミッティ」を新設して、両社のCEOであるカルロス・ゴーン氏が議長として監督していく。

研究・開発では昨年発売の『エクストレイル』シリーズから導入が始まっている新しい設計思想「CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」の展開を軸に、電気自動車(EV)を含むパワートレーンの開発などを推進。実験施設や実験機能の統合も図る。生産技術・物流では生産拠点の相互活用による生産戦略や生産技術、生産管理などを対象に取り組む方針だ。

別なのは「金庫」だけという統合を推進

こうした4機能は、自動車会社の中核機能を網羅しており、これ以外で独自管理を保つ主要機能はマーケティングと経理・財務部門のみとなる。ただし、マーケティングは開発に直結するので、両社の連携も必要となる。結局、クルマを造ったり、部品を買ったりは共同で行うが、「金庫の管理だけは別だよ」という形になるのだろう。販売台数がともに世界で上位10社に入る大手2社が、これだけ踏み込んで事業運営を統合するのは前例がない。

日産は中計の「パワー88」で営業利益率8%をコンスタントに確保できる体質をめざしている。同社はゴーン氏の采配によって2000年以降、めざましい経営再建を果たした。03年3月期からは3期連続で、営業利益率が10%を超えるという高収益体質となっていた。00年度からの再建計画では村山工場(武蔵村山市)など国内の3組立工場(子会社分含む)を閉鎖、グループで約2万1000人の従業員を削減するなどの大リストラを敢行した。

現状より6割増のシナジー創出を狙う

その後の高収益は、そうした筋肉質体質がもたらしたものといえる。だが、リーマン・ショック後の営業利益率は4~6%台の低空飛行となっており、今期(14年3月期)は4.8%の予想だ。今期からの会計方式変更も影響しているが、トヨタ自動車の9.4%、ホンダの6.2%に比べると見劣りする。日産の世界販売は今期517万台の計画で、2ケタの利益率をあげていた05年3月期当時から約200万台も増加する。ここ数年は「グローバルな投資が集中」(ゴーンCEO)という一時的要因があるものの、規模の成長に収益力が追いついていない。時期尚早だったEVへの投資にも足を引っ張られた。

日産とルノーは、今回の4機能統合で16年までに年43億ユーロ(約6000億円)の効果創出を目標に掲げた。両社の事業協力によるシナジー効果は、直近の公表データである12年分で26億9000万ユーロ(約3800億円)。16年には現状の6割増を狙うもので「大きなスケールメリットを実現する」(ゴーン氏)構えだ。6か年計画の「パワー88」は、14年度から後半戦に入る。その目標実現には今回打ち出した統合効果の着実な積み上げが待ったなしだ。

《池原照雄》

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