『タントカスタム』は存在感を表現した堂々たる外観デザインを採用する。タントのほのぼの感のあるデザインと好対照だ。大型のバンパーやフロントグリルが存在感を強調し、夜間にはグリルの下部と左右のヘッドライトを結ぶLEDイルミネーションが際立つ感じになる。
新型タントではこれまでのバンパー部分に加え、フェンダーやボンネットフード、バックドアなどにも樹脂製のパネルを使うようになったので、軽量化と同時にデザイン的な自由度が高まった。その分だけ標準系とカスタムとの違いが明確になったといえる。ただ、今度のカスタムは相当に『N BOXカスタム』と似ているように思える。
インテリアも明るい色を採用する標準系と違ってブラックを基調としたカラーリングでスポーティさを表現する。左側にミラクルオープンドア、右側も(電動)スライドドアという設定は標準車でもカスタムでも変わらず、乗降性の良さや居住性の高さは正にタントだ。
試乗したRS“SA”に搭載されるターボ仕様のエンジンは基本的にキャリーオーバーで、47kW/92N・mのパワー&トルクは余裕十分といった感じ。軽量化を進める一方で、右側リヤドアのスライド化などによって960kgになった車両重量に見合った性能である。
ちょっとアクセルを踏み込めば低回転域からターボが効いて力強い加速が得られるのが良い。このトルク感が余裕の走りにつながる。
タントのタイヤは基本的に14インチだが、ターボ車のRSだけは15インチになる。むやみにタイヤを大きくするのは必ずしも良いとはいえない。でも15インチタイヤに加え、しっかりした味付けのシャシーによって、優れた操縦安定性が実現されているので、15インチは十分にありだ。
新型タントでは、ターボ車も4WD車も、4WDのターボ車も全部含めてエコカー減税の免税が適用されるようになった。
タントなど超ハイト系のカスタムには、登録車から下りてくるダウンサイザーも多いという。タントカスタムRSは、そうしたユーザーを満足させられるだけの走りの性能を持つ。価格は軽自動車としては相当に高めながら、性能や仕様を考えたら納得モノといえる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。