「ITS世界会議 東京2013」では試乗体験できるショーケースが数多く用意されている。その中で、既に一部エリアで運用されているDSSSの進化させた『次世代DSSS ~路車間通信による安全運転支援システムの体験~』のトヨタ車によるデモ走行に試乗した。
DSSS(Driving Safety Support System)は、ドライバーの認知・判断の遅れが原因で発生する交通事故を未然に防止することを目的に開発された安全運転支援システム。路側に設置されたセンサーで車両や歩行者を検知して警察庁が主体となり、すでに都内西部や神奈川県、愛知県など一部エリアで、VICSでも使われる光ビーコンを使ったサービスとして運用中だ。一部車種では、対応可能なシステムを搭載できる。
『次世代DSSS』では、光ビーコンに加えて電波による路車間通信を活用することで、より安全でスムーズな走行を可能にする安全運転支援システムを目標にしている。具体的には、ドライバーの不注意によって起こる交差点付近での事故の防止(右折時衝突防止や左折時二輪車衝突防止など)を図るセンサ情報を用いた安全運転支援システムと、信号情報提供による安全でスムーズな交差点の通過、さらにCO2排出量の削減を目指した信号情報活用運転支援システムで構成される。
デモ走行は、東京ビッグサイト西駐車場を起点に、国際展示場駅~新木場を経由して戻る約40分のコース。実際には時間調整などで約60分ほどとなったが、この間、全部で6パターンのデモが体験できた。車両はトヨタ『プリウスPHV』で、車両には光ビーコンと760MHz通信に対応した無線機を搭載。光ビーコンは専用IDを付与しているため、VICS用光ビーコンでは受信はできない。760MHzの電波は地デジ受信で使われるようなフィルムアンテナとなっていた。
1つめのデモは「一時停止規制見落とし防止支援システム」。優先道路に合流する手前で一時停止の規制を見落とさないよう、760MHz帯路側無線装置から情報が発せられ、車内ディスプレイ上にそれを表示させる。2つめは『出会い頭衝突防止支援システム』で、同じ場所でカメラを使って認識した歩行者や車両の存在を760MHz帯路側無線装置によって車内ディスプレイ上に表示。無理にスタートしようとすると音と表示によって警告も行う。見通しの悪い交差点で有効性が高いように思えた。
3つめは『左折時二輪車衝突防止支援システム』で、路側に設置されたカメラで捉えた二輪車の存在を760MHz帯路側無線装置によって車内ディスプレイと警告音で知らせる。デモ車が交差点で左折しようとすると、車内では警告音が鳴り響き、ドライバーは二輪車の存在に気付かされる。その瞬間、二輪車は左側をすり抜けるように走り去った。このまま走れば二輪車との接触は免れないタイミングだったのは確かだ。
4つめは『信号情報を活用運転支援システム』。系統コントロールされた信号機と連携して、信号の切り替えのタイミングを上手に把握しつつ、なるべく停止することなくスムーズな走行を可能にする。ディスプレイ上には信号のタイミングを上手に捉えられるよう、アクセルのコントロールまでも表示。速度の増減・維持の他、アクセルオフを知らせる表示も行う。情報は760MHz帯路側無線装置によって提供される。
デモで走行するとこれがけっこう難しい。テスト走行ということもあり、加減速は元々ゆっくり行われるため、周囲のクルマにしてみればどうしても追い越しする対象になってしまう。そのため、自車だけがタイミングを図りながら走行しようとしても、突然割り込まれたりしてスムーズな走行は思うようにできない。自車だけがタイミング走行を図りながら走ろうとしても、それを意識しないドライバーも数多いわけで、この辺りは一つの課題になろうかと思う。
5つめは『出会い頭衝突防止支援システム』。優先道路走行時、脇道から合流しようとする車両をカメラによって検知し、路側に設置された光ビーコンによって車両に知らせる。カメラを利用することでどんな車両でも検出が可能で、見通しの悪い交差点に設置することで有効となるシステムだ。すでに現在のDSSSで利用されているもので、VICSで利用する光ビーコンを流用できるのがメリットだ。
6つめが『右折時衝突防止支援システム&歩行者横断見落とし防止支援システム』。交差点に設置されたカメラによって、見通しの悪い対向車線の車両や、横断歩道を渡ろうとする歩行者も捕捉。その情報は760MHzの路側無線によって交差点内で待機する車両へ送信される。車両や歩行者が存在するのに車両が走行すると表示とアラームでそれを警告すので、見落としを未然に防止できるというわけだ。デモ走行ではバスに続いて交差点に入る格好となってしまったが、その時点でも対向車や歩行者の存在をディスプレイ上に表示。効果を確認することができた。