『カローラ』はソツのないクルマである。100人が乗ったら99.9人が、なんの違和感も抵抗感もなく乗りやすいと感じるのではないだろうか。カローラが持つ、人になじむ腰の低さ。しかしそれは、ハイブリッドの登場で少しだけ様相が変わってくる。
エンジンをかけた瞬間に、視界に飛び込んでくるのは、インパネに仕組まれたハイブリッドならではの演出だ。クールな色使いで未来感をあおってくる。これだけで、なにか特別な、ちょっと上等なクルマに乗っている気分にさせられる。これまで庶民派をつらぬいてきたカローラが、三段くらい階段を駆け上がっちゃった感じで、運転席にいる自分もほんの少し、洗練されたように感じさせてくれる。
実はここが、開発者の狙いだったりして。いくら燃費がよくなったって、ハイブリッドの価格差をとりもどすには相当な年月&走行距離が必要になる。だったら、単純明快に、ハイブリッドを選んだことを楽しませなければ、人はついてこないだろう。そして、単純明快が大好きな私としては、あっさりとこのトリックにはまり、いや~、カローラのハイブリッド、ちょっといいじゃん?と思うのである。
とはいえ、乗り心地の親近感は健在で、特筆すべきはブレーキのタッチ感。ハイブリッドは、回生ブレーキの関係で違和感ばりばりになることが多いけれど、このクルマの場合は、違和感ほとんどなし。言われなければ気付かないくらいの、自然なタッチなのである。
フィールダーはその用途からして、ハイブリッドシステムを搭載することによるラゲッジスペースが気になるところだが、これは、ガソリンタンクを小さくすることでクリア。ノーマルエンジンと変わらない積載可能空間を確保とのこと。ワンタンクでの航続距離は、燃費が上がった分でカバーしていることになる。
なんか本当にソツがないカローラ。あまりにいい子すぎて、どこか突っ込んでやりたいのだが、突っ込めないのが、また悔しい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。