「カーナビタイム for Smartphone」のルート検索では、5ルート同時検索が可能となっている。これができるカーナビアプリは少ないが、非常に利便性の高い機能だ。ルートの内訳は「推奨ルート」、「高速優先ルート」、「無料優先ルート」と、ここまでが一般的なもので、残り2つが「ECOルート」と「景観優先ルート」というユニークなルートとなっている。
高速道路網が整備されてきた現代では、どこかに行く時に高速道路を使うべきかどうか迷うことが多い。日常的には、「高速優先ルート」と「無料優先ルート」のどちらかを使うことが多いだろう。休日のドライブなら「景観優先モード」が活躍しそうだ。ただし、この5ルート検索は常に5本のルート全部が検索されるわけではなく、ECOルートと景観優先ルートはとくに近場の目的地を指定した際は検索されない傾向にある。
ルート検索に関連してもう一つ特筆すべき機能が、「いつもの道優先」機能だ。この機能を有効にしておくと、ルート検索時に走行頻度の高い道を優先的に選ぶ。筆者の場合、自宅から南方向に行くときは必ず通る裏道があるのだが、カーナビは絶対にそのルートを選んでくれない。そのため、南方向に出かけるときは必ずカーナビがリルートを繰り返すことになる。ずっと煩わしい思いをしてきたのだが、この機能のお陰で開放されそうだ。
ルートを選んでからのガイド機能はごく一般的なものと言っていいだろう。便利と感じるのはガソリンスタンドの価格が常に表示されること。文字の大きさやスポットアイコンの種類を自由に設定できるもの親切で非常にいい。逆に少しだけ残念だったのは、高速道路の料金所のレーン案内が出ないことだ。無料や低価格なアプリなら文句はないが、本アプリにこの機能がないのはちょっと寂しい。
嬉しい驚きだったのは、オービス警告機能が備わっていたことだ。App Storeにもナビタイムのwebサイトにも一言も書いてなかったのでまったく予想していなかったが、オービスに近づくと音声で警告してくれる。人によってはこの機能があるかどうかがカーナビ選びの一番重要な判断基準になるのだから、App Storeの紹介文には書いておくべくだと思うが、やはりあまり大っぴらに宣伝したくないのだろうか。
◆実際にちゃんと使えるボイスコントロール、カーナビの操作方法が劇的に変わる
紹介するのが遅くなってしまったが、本アプリの最大の特徴とも言えるのがボイスコントロール機能だ。この機能、かつてのカーナビ専用機では目玉機能として宣伝している機種が多かったが、最近ではあまり話題にならなくなってしまった。今でも搭載しているカーナビ専用機はあるが、こんな機能もありますといった感じで影が薄い。
なぜそうなってしまったかといえば、やはり誤認識が多い、使いものにならないといった評価が多いからだろう。しかし、音声認識技術はスマートフォンでの活用という新たなニーズを得て、ここ1~2年で劇的に進化した。それを思えば本アプリのボイスコントロールへの期待も高まるというものだ。
実際に使ってみた。そしてその評価は、想像以上の完成度。いい意味で、普通に使える機能といえるレベルになっている。まず認識率についてだが、停車中ならほぼ完璧で、意識的に滑舌をハッキリさせなくてもズバズバと認識する。多分に主観的な評価だが、その認識率は、アップルの「siri」以上、Googleの音声検索と同程度と感じた。
もちろんこの機能は走行中に使え無くては意味が無いのでいろいろな条件で試してみたが、やはり十分に実用的といえるレベルだ。窓を開けて風切り音が聞こえるようにしても、町中を普通に走る速度なら十分に認識する。あるいはカーオーディオで音楽を流していても、少し小さめの音量であれば問題なく認識してくれる。もちろんオーディオのスピーカーとiPhoneの位置関係なども関係するだろうが、少なくとも筆者が試した環境では、ボイスコントロールを使うたびにカーオーディオの音量を調整するといった必要はなかった。なお、iPhoneで音楽を再生している場合は当然ながら、ボイスコントロールの起動と同時にミュートされる。
嬉しいのは、ボイスコントロールだけである程度複雑な操作まで可能になっていることだ。例えば走行中に「近くのコンビニ」とコマンドを与えると「周辺に○○軒のコンビニを検索しました。○○メートル先にローソン○○店があります」と一番近い店を提案する。そこで「次」と言うと次に近い店を提案し、「目的地にする」あるいは「経由地にする」と言うとそのようにルート設定してくれる。アプリと会話が成立しているようで面白い。
ただし、残念ながら苦言を呈さなければならない部分もある。それはボイスコントロールの起動操作についてだ。アイディアを効かせてiPhoneの近接センサーを活用する仕様となっており、iPhoneの上部あたりに手をかざすとボイスコントロールが起動する。たしかに便利なのだが、まず困ったのがiPhoneを横向きに固定していると近接センサーが働かず、ボイスコントロールを使えないことだ。本アプリはUIとしてはランドスケープモードに対応しているし、その完成度は非常に高いが、ボイスコントロールが使えないのでは意味がない。
それと、ボイスコントロールを起動させると、同時に画面のバックライトが消えてしまうことが何度かあった。こうなるとiPhoneをいったんロックしないと復帰しないようで、その操作は走行中には難しい、と言うよりするべきではないので、かなり困る。ボイスコントロールそのものの完成度は非常に高いだけに、この起動方法の問題は早急に解決して欲しいところだ。
◆Googleマップナビとの棲み分けは可能
今、カーナビ専用機にとってもカーナビアプリにとっても、最大最強のライバルはGoogleマップだろう。無料アプリのまま音声ガイドまで搭載してきたGoogleの底力には恐れ入る。ただし、Googleマップは詳細で見やすい地図と目的地検索の柔軟さといった強みはあるものの、ルートの選び方などカーナビとして見た場合はまだまだ弱い。
道に迷った時の緊急用といった用途ならGoogleマップは心強い味方だが、カーナビとして日常的に使うには無理がある。今後アップデートがあっても、無料アプリである限りそれは変わらないだろう。その意味では、カーナビアプリとGoogleマップとの棲み分けは可能なはず。ならば、Googleマップとは対極となるような本格仕様のカーナビアプリのほうが、棲み分けはしやすい。
カーナビタイムはライバルを研究した後出しジャンケンだと冒頭に書いたが、単に機能面のことだけでなく、カーナビアプリとしてどうあるべきかという、他のアプリとの相対的な立ち位置までも研究しているようにみえる。Googleマップだけでなく他社の有料ナビアプリと比較しても非常に多機能で、カーナビ専用機に最も近い操作感を実現。それによってカーナビタイムだけの魅力を際だたせることに成功した。ただ、その代償としてやや高価になってしまったのが気になるところ。アプリとしての完成度をさらに高めるとともに、今後はこの面も改善を望みたい。
●アプリ情報
【Android版】 月額525円/年額5700円
【iOS版】 30日チケット500円/180日チケット2900円/365日チケット5700円