スズキの『スイフト』がマイナーチェンジし、JC08モードで26.4km/リットルの燃費データを実現。1.2リットル以上のガソリンエンジン車としてトップの燃費性能となった。
今回のマイナーチェンジではエンジンの圧縮比を向上(12.0)するとともに、燃料噴射用のインジェクターを2本装着するなどして燃費の向上を図った(スズキでは「デュアルジェット・エンジン」と呼ぶ)。圧縮比を向上するとエンジンの出力はアップするが、今度はノッキングが起きやすくなる。そこでインジェクターをできるだけ燃焼室に近い位置に配置することで燃焼室の温度低下をうながし、ノッキングを防止する、というわけだ。同様にEGR(排出ガス再循環システム)は排ガスを冷却することでさらに冷却効果を向上させている。
試乗は東京都下のサッカースタジアムをベースとしたもので、市街地走行がメイン。高速道路を走ることもなかった。まず、最初に書いておくべきは、じつに普通に走るクルマであるということ。このクラスではそうした性能こそがもっとも求められる性能であり、スイフトはそれを見事に達成している。飛び道具的に突出した性能こそないが、地道なことをしっかりと積み重ねていかないと出ない性能がそこにはある。
ミッションはCVTで副変速機が組み合わされるタイプ。発進時のしっかりした力強さとともに、巡航時のハイギヤード化による燃費と静粛性の向上を実現。副変速機の切り替えはクルマ側が自動で行い、ドライバーの意志は反映されない。よほど気にしていないと切り替わったことには気づかない。
今回のスイフトは燃費向上のためもあり軽量化が推し進められている。そうしたなかで、足まわりに関しても軽量化が施されハンドリングやステアリングインフォメーションの正確さが上がっている印象。ただし、その影響によって、省燃費タイヤならではのトレッドの硬いような印象を感じてしまう一面もある。
アイドリングストップは完全に停止する前、13km/h以下から作動する。赤信号に向かって減速していくと確かに停止前にアイドリングがストップする。そしてアイドリングストップ中も、エアコン風を蓄冷材で冷やす「エコクール」の効果で、かなり冷たい風が出てくるので、真夏の渋滞路も辛くはない。
ひとつ気になったのは、完全停止時のショックを軽減するためにブレーキペダルを踏む力を弱めると、再びエンジンは始動してしまうこと。停止してからブレーキペダルを強く踏み込むと再度アイドリングストップするはずだが、今回は条件が揃わなかったためか、2度目のアイドリングストップは経験できなかった。
最上級のXSの場合、新エンジンと旧エンジンの価格差は11万7600円。しかし、新エンジンはエコカー減税が100%(免税)、旧エンジンは50%だ。支払い総額では6万円程度にまで差は圧縮される。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。