そぼ降る雨の中での試乗……。だからという訳ではないが、プジョー『208XY』の大人びた持ち味は、クルマに乗り込んだ瞬間から伝わってきた。
もちろんイチバンに味わうべきは、特別仕立ての内外装だ。とくに内装では、さり気なくこだわったシート表皮がいい。レザー/アルカンタラ/ファブリックを組み合わせ、色遣いも触感もしっとりと落ち着きがある。随所に用いられた、パープル&グレーの2色の糸のステッチもお洒落だ。年代、メーカーは違うけれど、かつてのルノー『5 バカラ』(同車も当初はMT車のみだった)の雰囲気が、一瞬頭を過る。
「パープル・ナイト」の専用色(ほかに「ダーク・ブルー」があるのだそう)、メッキの格子グリル、専用デザインの17インチアルミホイールなども『XY』専用。ようはシックな佇まいだが、こういったコンセプトは国産コンパクトカーではなかなかお目にかかれないから、貴重な存在である。ガラスルーフも、室内側の雰囲気を変えて楽しめる嬉しい装備のひとつだ。
走りも大人びていた。搭載エンジンはGTiと同じ1.6リットルターボ+6速MTながら、チューンが異なり、156ps/240Nmのスペック。なので乗り較べてみると、『XY』のほうが、より実用に振った設定なのがわかった。とくに4速/2000rpmからでもスムースな加速が可能だったりと、MTながらフレキシブルな特性が、気持ちに余裕を持ったドライブも可能にしてくれる。乗り味、ハンドリングはGTiとほぼ共通のイメージで、素直で小気味よい走りっぷり。アルミのシフトノブの感触、質量感もいい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。