『レンジローバー』の最新モデルはSUVとして初のオールアルミ製のモノコックボディを採用し、400kgに及ぶ大幅な軽量化を実現した。といってもスーパーチャージャー仕様エンジンを搭載したモデルは2500kgを超えているので、超重量級のクルマであるのは変わらない。
軽量化する一方で、ボディはひと回り大きくなり、全長が5mを超え、全幅は2mに近く、全高だけはやや低くなったものの、とても大きなボディを持つ。その大きさは存在感があるというか威圧感さえ感じるほどだ。
新型車は変化ではなく進化を目指して開発され、基本的にキープコンセプトで作られている。見るからに堂々とした感じの四角い外観デザインは、いかにもレンジローバーらしいものだ。
本格派のオフロード4WDなので床面や運転席の座面高はけっこう高い。そのままだと乗り降りするのが大変だが、車高調整装置を備えるので、乗降時に車高を下げれば小柄な女性でもスムーズに乗り降りできる高さになる。
運転席に乗り込むと、高めの着座位置と低いベルトラインによって開けた視界が確保されている。また見やすく分かりやすい配置で操作性に優れたスイッチ類なども従来のモデルから継承されている。
インテリア回りの雰囲気は正に高級車のものだ。自然素材など厳選された素材によってラグジュアリーな空間が演出されている。
搭載エンジンはV型8気筒5.0リッターの自然吸気仕様とスーパーチャージャー仕様の2機種で従来と変わらない。ただ、トランスミッションが8速ATに変わって滑らかさと燃費を向上させている。
スーパーチャージャー仕様エンジンの搭載車に乗ってラフにアクセルを開くと、背中を押されるようなというか、蹴飛ばされるくらいの猛烈な加速感がある。軽量化されたアルミボディがこの加速につながっている。
別の機会に自然吸気エンジンを搭載した「ヴォーグ」にも試乗した。スーパーチャージャー仕様ほど強烈なものではないものの、こちらも十分な動力性能を備えるのは言うまでもない。
日常的な走りはとても静かで力強いものだ。市街地走行だけでなく、高速クルージングでの風切り音やロードノイズも良く抑えられているので、丸で高級車に乗ったときのような静粛性を感じる。静かなだけでなく乗り心地も快適なので、無骨なオフロード4WDを走らせている気分ではない。
新型レンジローバーの発表会では『Sクラス』や『7シリーズ』とも競合するクルマという説明があったが、走りは正にそうしたものだった。ジャガー『XJ』も含めたラグジュアリーセダンにするか、レンジローバーにするかで、本気で迷いそうなクルマである。
レンジローバーはベースグレードでも1230万円からという高額車なので簡単に手の届くクルマではないが、本国ではV型6気筒3.0リッターのスーパーチャージャー仕様エンジンを搭載したモデルも発表されている。そう遠くない時期に、もう少し手に入れやすいクルマになりそうだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。