トヨタ『クラウン』、いいね!…と思わせられる自分がいた。しかも“ロイヤルサルーンG”に、だ。若い頃なら考えもしなかったことである。
確かに12世代目ゼロクラウンのアスリートあたりから「AMGのような走りっぷりだ」と感じてはいた。しかし今回の新型クラウンでは、ついにロイヤルサルーンにも、気持ちが引き寄せられた。コチラが歳を重ねたことはこの際置いておき、クラウンはそれだけ熟成が進められたのだな、と考える。fb(フェイスブック)の同世代の“友達”も、乗り心地はどうですか?と関心を寄せてくるほど。その質問にこの場で回答しておくと、「とにかく一切、神経を逆撫でされない乗り味、走りっぷりです」となる。
試乗車は2.5リットルのガソリンエンジン(4GR-FSE型)搭載車だったが、6速ATでもまったく不足、不満なしのなめらかなパワーフィール。そして何といっても、硬くなく柔らか過ぎない、絶妙な頃合いの乗り心地がいい。ステアリングフィールもなめらかだし、音・振動もクラウンだから、問題があろうはずもない。
室内では、アルファードか何かのようなやや大仰なセンターパネル部に少し圧迫感を覚える。しかしちょうど助手席前あたりの木目パネルの表面クリア塗装の平滑性は、クラウンのクオリティの高さを象徴する。ハイブリッド車より容量に恵まれたトランクのオープナースイッチは、伝統的に運転席ドアのトリム下側に備わる。後席はやや低めに腰を置いた収まりのいい着座姿勢がとれる。
「側突要件や室内空間を確保しながら全幅1800mmを死守したこと」(開発エンジニア)もクラウンの大きな課題だった。歴史を絶やさないでほしい、と思った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。