【ATTT13 直前企画】カーナビゲーション 明日のトレンドを見極める

自動車 テクノロジー カーナビ/カーオーディオ新製品
覆面(イメージ)
  • 覆面(イメージ)
  • 「MirrorLink」対応ディスプレイオーディオとスマートフォン「ELUGA V」接続時
  • カーナビの国内出荷台数推移
  • MONET
  • カーウイングス
  • カロッツェリア
  • カロッツェリア AVIC-D909
  • WiLL サイファ
3月13日に開催された第4回国際自動車通信技術展(ATTT)。本企画では車載機=カーナビのトレンドを追うことで、明日の車載機と自動車通信の関係を見極めようと試みる。

過去15年近くにわたり自動車通信の核となり、ITとクルマを繋ぐ存在として君臨してきたカーナビ市場が近年大きく変化してきている。低価格化はどこまで進むのか? スマートフォンはカーナビを脅かすのか? PNDは終焉を迎えたのか? ディスプレイオーディオは爆発的に普及するのか? そして、カーナビは明日の自動車通信を担うことができるのだろうか?

【登場人物 】
・自動車web媒体の編集者:「編」
・自動車メーカーの元IT部門担当者:「自」
・カーナビメーカーの元企画担当者:「ナ」
・カーナビ業界を長年ウォッチしてきた事情通:「事」

※今回の座談は、特定のメーカー・サービスの利害関係から離れてナビ業界全般にわたり広範な議論をおこないましたので、出席者は匿名とさせていただきました。


◆CDからDVDへのメディア刷新でカーナビ市場急拡大

編:まずはテレマティクスが登場したあたりから現在までの歴史を振り返りましょう。

自:統計を見ますと、メーカーオプション・ディーラーオプション全てを合わせた新車のナビ装着率は、1997年は20%にすぎなかったものが、10年後の2007年にはおよそ70%にまでなりました。出荷台数ベースですと、2000年には170万台に満たなかった市場が2007年には450万台に迫る規模にまで成長しています。特に伸びているのは、99年から2004年にかけてですね。

事:98年から99年と言えば、車載機やモバイル機器まわりでエポックメイキングな話題がたくさんあった年だ。トヨタ「MONET(モネ)」、日産「コンパスリンク」、ホンダ「インターナビ」がそれぞれサービスインしたのは98年、ドコモがi-modeを発表したのは99年。このころ、パイオニアも通信用データアダプター内蔵のDVDナビを出していた。

編:日本のテレマティクスのスタートポイントはこのころですね。ちなみに、レスポンスの前身であるオートアスキーが立ち上がったのも99年、クルマとITの関係が加速度的に深まってゆくという雰囲気に押されて生み出された媒体です。ところで、この時期はナビ市場が急速に立ち上がっていますが、その要因はやはりDVDナビの登場でしょうか?

ナ:カロッツェリアがDVDナビを発売したのは97年(「AVIC-D909/AVIC-D707」)でしたが、20万円台という消費者にとって魅力ある価格と機能まで降りてきたのは99年です。DVDによって詳細地図も含めて1枚のディスクで完結できたことが大きいですね。CD-ROMの時は地域別にディスクを差し替えたりする不便もありましたし。DVDになったときに1枚で収録できたので売りになりました。

事:それとニーズがここまで伸びたのは、ユーザーがナビ機能を欲していただけでなくて、DVDの映像が楽しめるようになったから。DVDナビの登場で本格的な車載オーディオ・ビジュアルの世界がやってきた。いままでは単純に地図を表示するだけのものが、いよいよこれから伸びていくんだな、という実感はあったね。


◆メディアとエンタメ機能は“対”になってこそニーズが芽生える

事:2003年あたりになると、いよいよHDDナビが普及期に入ってきた。パナソニックはこの年に「ストラーダ」ブランドをスタートさせている。

編:2002年から2003年にかけては、テレマティクスが転機を迎えた年でした。日産の「コンパスリンク」が「カーウイングス」に、ホンダの「インターナビプレミアムクラブ」が登場したのは2002年。カロッツェリアの初代「エアーナビ」や、「G-BOOK」搭載のトヨタ『WiLL サイファ』が発売されたのもこの年。

自:初期のテレマはDVDだったけれど、そこからHDDに変わったことでメーカーが本腰を入れるきっかけになりました。

編:読み出し(CD/DVD-ROM)だけでなく、書き込みができるメディア(HDD)を持ったことがテレマでできる可能性がぐんと広がった、と。

自:HDDは流体軸受が普及して、DVDよりもはるかに速く信頼性が高いメディアになりました。当時としては車載にうってつけのメディアでしたね。

編:ホンダが2003年にいわゆるプローブの「インターナビ・フローティングカーシステム」を発表すると、3G/PHS網や車載向けのHDDが普及したことで、DVDでは難しかったデータの書き換えや蓄積を利用したサービスが次々に登場しました。プローブはトヨタや日産も追随し、リアルタイムの渋滞情報・VICSの統計情報を加味したインテリジェントなルートが可能になりました。

自:あと、当時はCDのリッピングも購入動機として大きかったのです。DVDでも映像再生機能がナビのニーズ拡大の後押しをしたように、HDDでリッピングというエンタメの要素が付加されることで、一気に市場が大きくなりました。

事:そして次の流れは、パナソニックが先導したVGA化と地デジだ。それまで7インチのQVGAやEGA程度だった液晶モニターの解像度が、2004年に登場した「Fクラス」(「CN-HDS950MD」「CN-HDS900D」)で他メーカーに先駆けてVGA化した。さらに2006年には、同じくFクラスでワンセグ/12セグチューナーを標準搭載している(「CN-HDS960」「CN-HDS940」「CN-HDS910」)。パナソニックは家電メーカーらしく、この時期にAV機能を上手く訴求してストラーダブランドを育て、カロッツェリアと並ぶ2大陣営を作りあげることができた。

ナ:地デジの需要期だった2007年から2008年にかけては、パイオニアを脅かすほどにシェアを伸ばしたと聞いています。

編:なるほど。こう見ると、AV一体型ナビの歴史は、ナビ機能の進化とAVの進化がシンクロして市場が成長してきたことが分かります。


◆HDDリッピングからiPodへ

編:さて、ここでは時計の針を少しばかり戻して、周辺デバイスに目を向けてみましょう。車内で音楽を楽しむ場合、以前はカセットテープやCDを車内にストックして聴く、と言うのが一般的でしたが、HDDが登場してからは手持ちのCDをHDDにリッピングする、というのが主流になりました。

事:そういえば、自分も2004年から2005年くらいにかけては音楽CDを片っからからHDDに入れていたな。全部入りきらず「もっと容量があればいいのに」と思っていたっけ。

ナ:20GBから40GBに、さらには60・80GBと、HDDの大容量化を後押ししたのもそういう需要に応えてのことでした。

編:そのスタイルを一変させたのがアップル「iPod」の登場です。iPodが本格的に普及したのは2004年に出た『iPod mini』。米国では249ドル、日本では2万6800円で発売されて、ドカンと売れはじめました。この250ドルから300ドルの価格近辺は、それまでなかなか売れる気配を見せなかったガジェットが急速に売れ出す「マジックプライス」だと言われます。

事:iPodは2007年ころまでにはiPodはすっかり車載プレイヤーの業界標準の地位を得たね。アルパインなどは特に熱心にiPodコントロール機能を備えて先行需要を獲得していた。


◆マジックプライスでブレイクしたPND

自:先ほど、300ドルが爆発的に普及する分水嶺になると言っていましたが、欧米でその価格帯に落ちてきたことで急速に普及したのがPND(パーソナル・ナビゲーション・デバイス)です。

編:日本では2005年から2006年にかけて、エディア(「PONTUS」)やマイタック(「Mio」)といったブランドが日本でPNDを発売しましたが、欧米ではそれ以前からブレイクしていたのでしょうか?

自:欧米でPNDが普及し始めたのは2004年のホリデーシーズンあたり。大陸は道路が単純なのでターン・バイ・ターンでのナビゲーションで事足ります。また一部の大都市を除いては高層ビル群や高架のような電波遮蔽物もほとんどないから、(自律センサーのない)GPSだけの測位で実用上は十分です。

編:汎用のOSとCPUに小さい画面で作れるPNDが低価格で手に入るようになると爆発的に売れ始めたというわけですね。

自:とくに2005年から2006年にかけてはホリデーシーズンのプレゼント用にPNDは大受けしたと聞いています。PNDの世界出荷台数は2008年には5500万台にまで達しました。

ナ:一方、日本では思ったよりもPNDの低価格化は進みませんでした。私のいたナビメーカーでも、PNDがAV一体機の脅威という印象はありませんでしたし。

事:日本には2006年から2009年あたりまでにかけて、5~6万円台の高機能PNDというカテゴリーが存在した。とくにPNDでトップシェアを獲得したサンヨー(当時)は、2006年に発売した初代の「ミニゴリラ」(「SD10DT」)からワンセグチューナーを標準搭載して、地デジ対応のポータブルTVとしての需要も上手く取り込んだ。

編:ストラーダと同様、ゴリラも地デジのブームに乗っかってブレイクできたわけですね。それにしても、こういう市場を見るにつけ、つくづく日本は特殊なマーケットだなあ…と(笑)。

事:自律センサーで高精度を謳ったソニー「nav-u」や、通信機能を持たせたパイオニア「エアーナビ」、さらにはフルセグと大容量のメモリを搭載したゴリラまで、各社商品価格を維持するための特長を出そうと一生懸命だったね。そしてそうした施策は一定の功を奏して価格維持に成功した、といえるだろう。


◆そして国内AV一体機は10万円アンダーの戦いへ

編:その高機能PNDですが、ここ1、2年で急速に徐々に存在感を失ってしまった感があります。

事:市場に大きなインパクトを与えたのは、AV一体機の低価格化。具体的には富士通テンが2008年に発表した『AVN Lite』の登場だ。メモリーの容量を4GBに抑え、市街地図やDVD再生などの機能を思い切って省くなどして、実売8万円台という低価格路線を実現した。

メ:このころになると、カーナビのニーズが一巡して、「機能が多くて使いこなせない」というユーザーが増えきたのは確かです。

事:「とりあえず分かりやすいユーザーインタフェースで、目的地に取り着くことができればいい。音楽はCDが聞ければ良い」と考えていた層が予想以上に多かったということだ。

編:このAVN Liteに引っ張られるように、一気にAV一体機の低価格化が進んだ印象です。

事:AVN Liteはレンタカーの需要ともうまいことはまって数が出たので、脅威に感じた業界ナンバー1のカロッツェリアは「楽ナビ Lite」で真正面から戦いを挑み、低価格路線を主導した。こうして10万円を大きく割り込むビルトインナビの市場が形成されてきた。


◆HDDの弱点を解消したメモリーナビ

編:AVN Liteはナビ用のストレージにスピンドルを持たない、いわゆる「メモリーナビ」の先鞭を付けた存在でした。

メ:ディスクスロットはありましたがCD再生用と割り切っていましたね。

自:それまで主流を占めていたのはHDDだが、振動に強くて高速なHDDにも課題があって、その最たるものは地図更新の煩雑さでした。自動車メーカーにもユーザーからクレームが来たほどです。

編:特に全更新の際には、ディーラーに丸1日クルマを預けて書き換えなくてはならない場合があったり、DVD-ROM差分データで更新する場合も何時間たっても完了しなかったりと、非常に手間と時間がかかる印象だったのを覚えています。

ナ:その点、SDカードのようなカード媒体であれば、ネットから更新地図をダウンロードして差し替えるだけで最新の地図がすぐに使えるようになるから便利この上ないですね。いまやAV一体型も含めて、現行販売機種の多くはメモリー(内蔵/SD)タイプ。iPodの普及でナビ側に何十GBものストレージを抱える必要がなくなったこともメモリー移行をたやすいものにしました。

編:地図更新と言えば、メーカー純正テレマには、「スマート地図更新サービス」(ホンダ)や「マップオンデマンド」(トヨタ)といった通信による差分更新サービスも出ています。

事:メーカー純正テレマでDCM(Data Communication Module)のような定額の通信契約を結ぶユーザーは限られていたし、かといってケータイのBluetooth DUN(プロファイル)を介しての通信もパケット代が高く付くのでユーザーは利用しなかった。ようやくキャリアがDUNの通信を定額に抑えるオプションプランを導入したと思ったら、こんどはDUN非対応のスマートフォンが主流になってしまった。ただ、これらのメーカー純正テレマが地図更新を一定期間無料にしたことや、ナビタイムなどのケータイナビの出現が、“最新地図へのニーズ”を呼び覚ますことにつながった。



◆2万円以下PNDが伸長

編:5~6万円台の高機能PNDの市場は、低価格のAV一体機やスマートフォンナビに吸収されたとのことですが、PND需要はこのまま縮小してしまうのでしょうか。

事:電子機器類の業界団体であるJEITA(電子情報技術産業協会)に加盟している企業の出荷統計を見ると、たしかに2012年からPNDは縮小している。

自:2012年にはソニーもついに車載機からの撤退を発表しました。

事:しかし、JEITA非加盟メーカーの出荷台数はむしろ増えているんだ。具体的に言えば、ユピテル、トライウイン、そしてGARMIN。これらのメーカー製PNDは2010年以降、2万円を下回る価格で市場に出ており、エントリー層や代替需要に応えている。

ナ:あと1つのポイントは、カー用品店以外の販路が出てきたことです。とくにテレビ通販。カーナビを買う意志がなかった人が買うようになってきました。カー用品店以外の流通が利用できるようになったことで中小メーカーが参入する障壁が小さくなりました。

編:なぜテレビ通販でPNDが売れるのですか?

ナ:テレビ通販にも、マジックプライスというものがあります。9800円・1万9800円・2万9800万円がその価格帯。多少値段がズレても、いろいろつけてその価格にしてしまう。

編:なるほど。

ナ:ですが、大手のテレビ通販番組でゴリラが露出し始めた時、価格は3万9800円でした。しかし、番組中で製品名と機能を連呼して、通販で買わなくてもお店へ足を運んで見るとゴリラが置いてあるから興味を持って買ってしまうという流れを作りました。3万9800円のころは宣伝効果プラスα、という感じだったでしたが、2万9800円になるとPNDも通販で購入されるようになりましたね。



◆スマートフォンナビの興隆

編:「PNDの機能で十分というユーザーの存在」、「通販という新しいチャネル」、そして「いっそうの低価格化」という3点がPNDの台数増を後押しする、という理屈はたしかに理解できます。では、スマートフォンの登場はどう見ればいいのでしょう? PNDの需要はスマホナビに食われ、さらにはスマホとつなぐディスプレイオーディオの登場によって、低価格AV一体機の市場すら侵食すると言われています。

自:iPhone向けでは、アップルが2009年6月の「WWDC」でiPhone OS 3.0を発表すると共に、カーナビアプリを解禁して以来、TomTomやNavigonといったPNDメーカーがスマートフォン向けのアプリを続々リリースし着実に利用者を増やしてきました。ソーシャルメディアやインターネットラジオとの組み合わせ、あるいは渋滞情報の提供など通信が使える利点を活かしたこともナビ普及の原動力になったことは確かです。

事:Androidでは、ご存じのようにGoogle謹製の高性能な「マップナビ」をOSとセットで提供している。さらに最近はディスプレイオーディオ(DA)が登場し、MirrorLinkのような標準規格も登場している。自動車メーカーとしては車両の魅力につながればいい話なので、選択肢がさまざまに増えたということになる。

自:言うまでもなく、スマホナビは明らかなトレンドです。しかし、日本ではまだ車載機を脅かすようなマーケットを持つに至っていない。やはり車載機との連携がキーになるでしょう。

編:車載器メーカーはますます危ない?

事:いや、カーナビが全てスマートフォンに置き換わるということはないだろう。車両側のデータを吸い上げてナビにフィードバックする機能を持つ表示機器としてはPNDあるいはディスプレイオーディオとして存在する余地は残る。ナビ機能はあくまでもプリインストールされていると言うレベルで、後から通信で追加またはスマートフォンと接続してスマホ側のアプリを利用する、ということになると思う。

ナ:現状のディスプレイオーディオの市場価格は5万円前後です。あと1万円出せばAV一体機が買えるという条件でディスプレイオーディオをわざわざ買おうというユーザーはなかなか出てきません。

事:ディスプレイオーディオは3万円アンダーのマジックプライスを早く実現しないと。

ナ:2011年の震災とタイ洪水でナビ部品の供給が途絶えた中でクラリオンが急遽調達して販売した「AVライトナビ」こと『NX501』やその後継モデル群は、水平分業モデルの1つの成功例です。これは海外仕様筐体をベースに、Windows CEに対応したキャンバスマップルの「マップルナビ」を採用することで驚異的な開発スピードと低価格を実現し、ユーザーのニーズにもばっちりはまってヒットしました。ディスプレイオーディオを買うならナビ機能がしっかりついているAV一体機を選択した方が合理的というのは納得できる話です。


◆高価な純正装着の隙間を付いた商品投入

事:市販ナビは苦戦を強いられる一方で、ディーラーオプション(DOP)ナビは数が出ており、それなりに順調そうだ。

自:いま新車販売ランキングで上位を占めている車種の多くは、オーディオレス仕様が大部分。さらにディーラーでは新車販売の値引きの代わりにナビを使っていたりします。「補助金や減税でこれだけ引かれますから、その分ナビを付けましょう」と。DOPナビがこれら補助金の受け皿になった。もうしばらくはDOPナビのもっともっと需要は膨らんでいくと思われます。

編:市販ナビはどうでしょう。アルパイン、パナソニック、富士通テンといったDOPにも実績あるメーカーは「車種専用ナビ」を打ち出していますが。

ナ:トヨタの『アルファード』『ヴェルファイア』に上手く当ててきたのが2010年に5月に発売されたアルパインの8型AVN『BIG X』でした。

事:アルファードの場合、メーカーオプションで8型のナビを付けようとすると、フロントだけで40万円オーバー、リアのエンターテインメントシステムを加えると60万円近くする。車両本体が300万円オーバーのクルマにさらにこの出費となると躊躇するのは当然だ。

ナ:おそらく、アルパインのBIG Xならフロントとリアを組み合わせても半分の値段で付きます。これがユーザーに響いたのでしょう。2012年には画面をさらに大型化した9インチモデルがアルパインだけでなく富士通テンからも登場しています。


◆通信費無料は希望をもたらすか

編:では、メーカー純正テレマは今後どうなるでしょう。本格普及が来る来るとずっと言われ続けていましたが、いまやスマートフォンに取って代わられそうな勢いです。

自:リーマンショックのインパクトが大きかったのです。純正テレマのコストは(通信料などの一部を除いて)ハードウェア価格で吸収していますが、リーマンショックで車両そのものの出荷台数が減り、合わせてナビも出荷が激減しました。純正テレマ付きMOPナビの採算分岐点は10万台と言われましたが、2009年にはその10万台を割りました。

ナ:そこまで数が減ると次の投資がしにくくなりそうです。

事:そこで考え方を改めて、一種のカスタマーリレーションツールとしてテレマを使い、マーケティングコストとして考えようと言う話になった。その最たるものが2010年2月に登場したホンダの「インターナビ」を基本料・通信料無料で利用できる「リンクアップフリー」だ。これは通信コストをどう処理するかのソリューション。いっぱい使われた方が顧客単位のサーバコストを抑えることができる。

ナ:日産も、電気自動車(EV)の『リーフ』ではテレマを標準搭載でしたね。ただ、マイナーチェンジで非搭載モデルも出てしまいましたが…

編:その流れで行くと、当然トヨタは『プリウスPHV』でテレマ必須にするかと思っていたらそうではありませんでした。

事:プリウスPHVではDCMの搭載オプションも用意したけれど、CAN情報をBluetoothでスマートフォンに送り、スマホからトヨタのクラウドと通信する「CAN-BT」を出した。現状、テレマへのスタンスはトヨタ・ホンダ・日産で三者三様といえる。


◆車両開発とパラレルで進む車載機の進歩

編:ユーザーは、純正テレマに高価な費用を払うくらいなら、「もうスマホとリンクしてくれればそれでいいよ」と思っているのかもしれませんね。渋滞情報の取得機能が付いて、デンソーが提案する「NaviCon」に対応して、スマホで探した目的地をナビに遅れればそれでいい、と。

事:モバイル側で取得したPOIをカーナビに渡す連携は、NaviConが登場するずっと以前から、さまざまなメーカーがチャレンジしてきた。が、POI連携がカーナビとケータイを繋ぐ動機にならないことはこれまでのテレマティクスの歴史が証明している。連携のキーは、最新地図の活用と見ている。

ナ:モバイル通信ではLTE+テザリングが主流になってきました。

事:ケンウッドが年明けにアメリカでWi-Fi対応のAndroid 搭載ナビを出してきた。スマートフォンを通信モジュールとして使える条件が整ってきた。市販だけでなく、今年のDOPあたりはWi-Fiナビが出てくるだろう。Bluetooth以上に、Wi-Fiが標準的な機能として当たり前なものになるはずだ。

ナ:通話は低消費電力のBluetoothを利用するというのは今後も同様でしょう。Wi-Fiは電力消費が不利ですが、車内であれば電源の問題はクリアできるうえ、なんといってもハンドリングしやすいのが利点です。

自:車載機はナビやエンタメなどを受け持ち通信方式は通信モジュールやスマホアプリ、テザリングなど多様化していきます。そこではWebの標準もナビは今後取り込まれていくはずです。Webベースのネットワーク・プロトコルである「WebSocket」が今後2年ほどで実装されていきます。

編:ナビやエンタメだけでなく、カーメーカーや車載機メーカーでは安全系の運転支援装置で積極的に地図情報を活用しようという動きもあります。

自:こうした自動運転に繋がる運転補助システムは別系統のシステムが用意されるでしょう。運転補助系のシステムには正確な地図が必要ですが、ナビと共有される必要はない。高度なセンシング技術を持つ日本の車載機メーカーは、自動車メーカーのパートナーとして重要度が増す運転補助などクルマの一部を担うことになるでしょう。

事:グローバル低価格車載機と汎用アプリとしてのナビ、自動運転に繋がる高度車両制御に使われる車載機や地図。トレンドにはこの2つの流れがあるが、双方とも同時に強力に進んでいくはずだ。

編:ATTTではトヨタ、ホンダをはじめ車載機メーカーやデバイスメーカー。そしてアプリベンダーも複数出展しているしカンファレンスも豊富です。このあたりの車載機器向け通信の動向については、ATTTの出展やカンファレンスで確認したいところですね。今日はありがとうございました。
《レスポンス編集部》

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