プジョー『5008』は前から2・3・2名7人乗り3列シートモデルのミニバンだ。全長4530mm、全幅1840mm、全高1645mmというボディサイズは短くて広い。なにしろ長さはストリームより短く、幅はアルファードと同じなのだ。日本では全幅でクルマの大小を判断したがる傾向が強いが、ヨーロッパは幅よりも長さを重視する。つまり短ければコンパクトって考えることが多い。だからこれほど幅広でも、コンパクトな3列シート車というくくられ方となる。搭載されるエンジンは1.6リットルの直4直噴ターボで156馬力を発生。ミッションは6速のATが組み合わされる。プラットフォームはシトロエン『C4ピカソ』などと同じもので、サスはフロントがストラット、リヤがトーションビームとなる。走り出しはなかなかトルクフル。『RCZ』にも採用されている1.6リットルの直噴ターボは低速からしっかりとしたトルクがあり、なおかつ回転上昇のレスポンスもいい。1.5トンを超えるボディをグイグイ引っ張って加速してくれる。ハンドリングは素直で乗りやすい特性。だが、ちょっとばかりクセがある。ステアリングをゆっくり切っているときは、ノーズの動きとリヤタイヤの動きがシンクロしているのだが、ステアリングをスパッと切ったときはリヤタイヤの反応が遅れる。とくに16インチタイヤを履くプレミアムはこの傾向が強く、17インチのシエロは弱め。5008は乗り心地を稼ぐために、リヤサスペンション取り付け部に液体封入タイプのブッシュを使用しているのだが、このブッシュの動きがリヤタイヤの反応を遅らせている原因だろう。まあ、このリヤタイヤの反応遅れがなにか大きなマイナス要素になるわけでもないので、気にする必要はあまりないだろう。5008はセカンドシートの3席がそれぞれ独立してスライド&リクライニングや格納ができる仕様となっている。セカンド中央席を前に出すと、肩の干渉がなくなるので圧迫感なく3人掛けが可能となる。サードシートは意外と広めで、長距離でなければ大人でも乗れる。サードシートも左右独立して収納が可能となっている。また、助手席も前倒しが可能なので、シートアレンジのバリエーションはかなりの豊富さを誇ることになる。よく動く足まわりはワインディングでも気持ちよく走れるが、ゆったりとした乗り心地とトルクフルなエンジンは、長距離ドライブを楽にしてくれる設定。7名乗るよりは4、5名乗りで荷物を積んで、遠出したくなるようなクルマ。ただ、幅広なボディは都会や狭い道でのすれ違い時にちょっと不便さを感じるだろう。■5つ星評価パッケージング:★★★インテリア/居住性:★★★★パワーソース:★★★★フットワーク:★★★★オススメ度:★★★諸星陽一|モータージャーナリスト自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。